和田アキ子が又吉『火花』を「純文学感じられない」と酷評! 又吉『火花』は純文学か? 論争の歴史をふりかえる

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 それは「文藝春秋」98年3月号に掲載された「直木賞作家、芥川賞を語る」と題した林真理子、浅田次郎、出久根達郎の鼎談だ。浅田は「どんどん二つの賞の違いを説明しにくくなっていますよね」といい、「だからこの際、「純文学と大衆文学という区分けは間違いでありました。今後は時流にのっとって新人賞と中堅賞にしましょう」とか「短編賞と長編賞にしましょう」とか宣言すればいいんですよ」と提案するが、その後は芥川賞作品のこき下ろし合戦に突入。林が芥川賞受賞作の村上龍『限りなく透明に近いブルー』を「ドラッグとセックスを書くとわりと小説っぽくなる、とバカな人々に先入観を与えた最初の小説」と語れば、浅田も石原慎太郎『太陽の季節』を「高校生の時に海の民宿で、ギャグのつもりで(障子破りを)やったら、本物の不良少年たちは『太陽の季節』を誰も知らないから、あとでボコボコにされた」。そして作品だけでなく、矛先は芥川賞作家にも向けられていく。なかでも林のルサンチマンは特筆すべきものがあるので、発言を拾ってみよう。

「純文学の人って、大学の先生になっちゃったりして食べていけるひとが多いんじゃないかなあ。その知性と教養がかえって良くない」
「純文学の人ってすごくプライドが高いでしょう。私なんて中上健次さんに「お前なんかと違って俺は純文学だから」って何度も言われた」
「純文学系の人は、すべての文学年表や文学史にちゃんと載るわけですよ。でも私、エンターテインメントだというだけで全部排除されちゃうのよ」
「芥川賞の方が直木賞より上だと思っている人がそれだけ多い」
「(最近の芥川賞作品は)私のような本好きが読んでもちょっと付いていけない、「なんだこりゃ」というような作品が多い」

 林がよほど悔しい思いをしてきたことがよく伝わってくる発言だが、この鼎談のあと、今度は読売新聞紙上で文化部記者の鵜飼哲夫が純文学界を「閉塞状況」と論評。こうして巻き起こった純文学衰退論に、純文側も黙っていなかった。ぶちギレたのは、笙野頼子だ。

 笙野といえば、芥川賞に三島賞、野間文芸新人賞など純文学系新人賞を総ナメし、作風も高度な言語実験を駆使したバリバリの純文学作家。笙野は毎日新聞で「売れさえすればいいのか」「臓器から幼児ポルノまで売買される貨幣の世界で、経済効率だけ掲げるものは所詮文化ファシストでしかない」と真っ向から反論。「純文学という言葉を珍しくも、ある危機感にかられて、私は敢えて擁護したい」「守りたいと思ったのだ、文士の森を」と、純文学擁護の立場を鮮明にした。

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