和田アキ子が又吉『火花』を「純文学感じられない」と酷評! 又吉『火花』は純文学か? 論争の歴史をふりかえる

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「純文学は、野にあってしかも最先端等身大の世界を描く。(略)少数者の声はその中で生き、安易な俗流世界観を相対化する」
「いわゆる文壇はもうなくとも、文学環境は必要なのだ。制度は権威だと安易に言う事は出来る。だがそんな安易な反権力ごっこのはてが、売り上げだけで本の価値を決める姿勢なのだ。短期決済にインチキ天才信仰。何もかもを金銭や票田に換算する風潮。そもそも純文学が読めない故、文芸ビッグバン等の誤った解釈に飛びつく関係者」(毎日新聞、98年2月21日付)
 
 そもそも、「純文学なんて区分は意味がないんじゃないか」「純文学は衰退した」などという議論は、ことある毎に語られてきた話である。たとえば、その昔、芥川龍之介と谷崎潤一郎はプロットのあるなしという論点で論争したが、文芸評論家の平野謙はそれが純文学vs.大衆文学論争の原型だと評している。伊藤整も、60年代はじめに「推理小説の際立った流行」「松本清張、水上勉というような花形作家」の出現によって「純文学の理想像が持っていた二つの極を前記の二人を代表とする推理小説の作風によって、あっさりと引き継がれてしまった」「純文学が単独で存在し得るという根拠が薄弱に見えて来る」(「群像」61年11月号)などと憂いているが、その後もこうした嘆きやそれに対する反発が繰り返されてきた。

 しかしながら、いま、前述した笙野の言葉を読むと、まるで現在の文学界のことが指摘されているようにも感じる。「売り上げだけで本の価値を決める」「短期決済」「インチキ天才信仰」「何もかも金銭や票田に換算」……これがさらに進行したのが現在。その帰結として又吉の芥川賞受賞がある、そんな気がしないでもないのだ。

 小説が大衆に支持をされて本が売れることは、もちろん悪いことではない。ただ、『火花』受賞がここまで盛り上がったのは、直木賞ではなく芥川賞だった、という点は大きいはずだ。お笑い芸人=低俗という意識が多くのメディアや人びとのなかにあり、低俗とは真逆の純文学で評価されたというギャップが話題を生んだ……そう言えないだろうか。

『火花』の内容をめぐっては、芥川賞にノミネートした文藝春秋社内でも「純文学とは言えないんじゃないか」と異論をもっていた編集者もいたらしい。そう考えると、和田アキ子の“純文学を感じなかった”という意見は、それはそれであり得る反応なのだろう。むしろ、「和田アキ子ごときが純文学を語るな」という雰囲気こそが気持ちが悪くて仕方がない。感じる自由がなければ、読書なんてちっとも楽しくなかろうに。
(酒井まど)

最終更新:2015.08.09 12:21

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