「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈した日本の“精神的鎖国” 文化も科学もスポーツも「日本スゴイ」に回収

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈した日本の精神的鎖国 文化も科学もスポーツも「日本スゴイ」に回収の画像1
物議をかもしている共同通信のノーベル文学賞報道


 吉野彰氏のノーベル化学賞受賞に国内メディアは大はしゃぎしているが、ノーベル賞をめぐりなんともお粗末な騒動があった。

 10日、ノーベル文学賞の受賞者が発表され、2018年受賞者にポーランドのオルガ・トカルチュク、2019年受賞者にオーストリアのペーター・ハントケが選ばれた。昨年は選考委員のスキャンダルで発表が見送られ、今回は2年分の受賞者発表となった。

 トカルチュクは邦訳作品こそ少ないが、2018年には『逃亡派』(邦訳:小椋彩/白水社)で英国のブッカー賞を受賞するなど国際的に評価の高い小説家。ペーター・ハントケは、ヴィム・ヴェンダース『ベルリン・天使の詩』の脚本でも知られる作家だ。

 前回2017年の受賞者が村上春樹とルーツや作風の近いカズオ・イシグロだったこともあり例年ほどではなかったが、今年も国内のマスコミは「村上春樹の受賞なるか」とから騒ぎ。やっぱり受賞ならず「残念でした」という毎度の“秋の風物詩”を繰り返していた。

 だが、今回のノーベル文学賞をめぐって、SNSで最も話題になっているのは、共同通信の報道だろう。共同通信が10日20時3分、〈ノーベル文学賞は外国人に〉なるタイトルの速報記事を配信したことが波紋を広げているのだ。しかも、その短い記事本文はこうである。

〈スウェーデン・アカデミーが10日発表した2018年、19年のノーベル文学賞受賞者は、いずれも日本人ではなかった。〉

 この共同の速報記事に対し、Twitterではあきれ返る声が次々とあがった。

〈本気なのか。この見出しと記事内容〉
〈日本人ではなかったってお前…〉
〈この見出し、すげえな。日本人(外国籍含む)か外国人かの尺度しか持ってないのか。〉
〈日本スゴイ式報道が行き着いた雑すぎ見出し〉
〈どういう感覚でこのタイトルなのか。ちょっと絶句してしまった〉
〈過去最高に何も伝えてないニュース流れてきて笑っちゃった〉
〈これが速報される国…〉
〈日本スゴイの材料にならないと分かるやいなや興味なくすの露骨過ぎでしょ〉

 無理もないだろう。たしかに、共同の見出しと本文は、文字通り“受賞者は日本人か?”のみに焦点をあてたもの。まさに「日本スゴイ言説に有用かどうかだけが報道の価値基準なのか」と思われても仕方があるまい。

 念のため付記しておくと、共同通信は前述の〈ノーベル文学賞は外国人に〉なる速報記事から9分後、〈ポーランドの女性作家らにノーベル文学賞〉と題した記事を配信し、トカルチュクとハントケの受賞を伝えた。それでも、いくら速報性が重要とはいえ〈ノーベル文学賞は外国人に〉なる報じ方はあんまりだろう。端的に恥ずかしいと言わざるをえないし、国際感覚の欠如と捉えられて当然だ。

 実際、当の「外国人」の報道関係者からも失笑されている。ロイター通信日本支局長のウィリアム・マラード氏は10日、自身のTwitterで〈共同通信の年間最優秀見出し〉(Kyodo headline of the year: #NOBEL PRIZE FOR LITERATURE GOES TO FOREIGNER)と投稿。このマラード氏の皮肉に、米国の有力政治系ウェブメディア「Politico」のベン・ルフェーヴル記者がこんなリプライを送っている。

〈日本にいる外国人の何人が「受賞したの私かな?」って思ってメールの受信ボックスをチェックしてるんだろうね〉(How many foreigners in Japan are now checking their inboxes, wondering "Is it me?")

 そして、ポリティコ記者のユーモラスなからかいに対し、ロイター日本支局長が返した言葉がこうだ。

〈私が英語を教えていたとき、ある男の子からこんな質問をされたことを思い出したよ。「“ガイコク”は今何時なの?」ってね〉(Reminds me of when I was teaching English and made a kid ask me a question. He nailed it: “What time is it in Gaikoku?”)

 こうしたやりとりを紹介すると、またぞろネット右翼が血眼になって「反日の外国人記者だ!」などと絡みそうなので、念のため釘を刺しておくと、二人の会話はそうした文脈では全くない。単純に〈ノーベル文学賞は外国人に〉なる報道は「外国人」の報道関係者からも見ても失笑モノ、ということなのである。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈した日本の“精神的鎖国” 文化も科学もスポーツも「日本スゴイ」に回収のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。ノーベル賞共同通信文学日本スゴイ編集部の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 桜前夜祭で安倍事務所が有権者に大量の酒、サントリーが無償提供
2 極右ヘイトの企業経営者総まくり(後)
3 れいわから出馬 水道橋博士が主張する「反スラップ訴訟法」の重要性!
4 大阪のオミクロン死者急増も松井市長はウザ絡みに夢中、水道橋博士に訴訟恫喝
5 極右ヘイトの企業経営者総まくり(前)
6 泉ピン子“五輪聖火リレー検討委”の裏
7 葵つかさが「松潤とは終わった」と
8 不正入札、リニア新幹線はアベ友利権だ
9 維新に反省なし!女性蔑視の石井議員は開き直り、松井代表は経歴詐称を擁護
10 町山、ロマン、水道橋、春日、豪の論戦
11 吉村知事への批判がテレビでも…北村教授、日本城タクシー社長、小木博明も
12 自公維の「国民投票法改正案」に批判の声!小泉今日子も反対表明
13 古市憲寿が政府のコロナ対策を検証する「有識者会議」入りで疑問の声
14 「報道の自由度ランキング」下落報道でNHKが政権忖度し削除した文言
15 ICANノーベル賞授賞式を日本マスコミが無視
16 吉村知事肝いりの大規模入院施設の利用率が最大7%で閉鎖
17 昭和の名作裏ビデオ史
18 乃木坂46橋本奈々未が背負った貧困
19 安倍晋三「桜前夜祭」事件で秘書が「違法性を認識していた」と供述!
20 痴漢しても中島裕翔のドラマは放送開始
1桜前夜祭で安倍事務所が有権者に大量の酒、サントリーが無償提供
2自公維の「国民投票法改正案」に批判の声!小泉今日子も反対表明
3維新に反省なし!女性蔑視の石井議員は開き直り、松井代表は経歴詐称を擁護
4 れいわから出馬 水道橋博士が主張する「反スラップ訴訟法」の重要性!
マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄