ドナルド・キーンは右派がもてはやす浅薄な「日本スゴイ」じゃない! 日本愛ゆえに改憲、原発、東京五輪を批判していた

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
donald_01)190225.jpg
日本の美徳(中公新書ラクレ)


 日本文学研究者のドナルド・キーン氏が24日、心不全で亡くなった。今回の訃報で多くのメディアがこぞってキーン氏の日本愛を報じている。「計り知れない日本への愛」「日本のことを考えない日はなかった」。

 キーン氏といえば、アメリカ・ニューヨークで生まれ、大学生のとき「源氏物語」に出会い日本文化に興味をもち、戦後、日本文学研究者として、谷崎潤一郎、三島由紀夫、川端康成といった作家たちとも交流をもち、古典から現代文学まで日本文学を広く世界に紹介してきたことで知られる。2008年には外国出身の学術研究家として初めて文化勲章を受けている。

 とりわけ近年キーン氏が注目されたのは、東日本大震災後に日本国籍を取得し、日本に永住すると表明したことだろう。

 原発事故をきっかけに日本を離れる外国人が多かったなか、逆に、日本に永住しようと決意するキーン氏の表明は多くのメディアに取り上げられ、アカデミックな分野に関心のない人にも彼の名は広く知られるところとなった。

とくに、右派メディアは、“日本スゴイ”の文脈に回収するかたちで、キーン氏のことを絶賛した。たとえば、「夕刊フジ」(産経新聞社)のニュースサイト「zakzak」(2015年3月17日付)は〈日本国籍を取得し、日本人を感動させた〉と。

 だが、キーン氏が発信したのは、決して右派が大はしゃぎするような“日本スゴイ”だけではなかった。むしろ真逆と言ってもいい発言もしてきた。

 瀬戸内寂聴氏との対談本『日本の美徳』(中央公論新社)のなかで、ドナルド・キーン氏は、このように語っている。

「日本の国籍を取得してからは、私は日本人としてきちんと意見を言わなくてはいけないと考えるようになったのです」
「日本人になったからには、これまで遠慮して言わなかった日本の悪口も、どしどし言うつもりです(笑)」(以下、特別な指摘がない限りすべて『日本の美徳』より引用)

 前述の通り、キーン氏は、2011年9月、東日本大震災を契機に日本国籍を取得して日本に永住すると公表。実際に2012年には日本国籍を取得している。

 2011年3月11日、キーン氏はニューヨークにいた。アメリカのテレビでも日本を襲った未曾有の災害の様子は盛んに報道されており、キーン氏も太平洋を隔てた遠い地からテレビにかじりついて情報収集していた。そのとき、キーン氏の心のなかに浮かんだ感情は「帰りたい」というものだったという。

『日本の美徳』のなかでキーン氏は「私は震災があったことで、日本国籍を取得しようと、ハッキリと心が決まりました。とにかく一日も早く、日本に「帰りたい」と思ったのです」と語る。

 キーン氏はそれまでもアメリカと日本を行き来する暮らしを送っていた。日本にも家があり、帰化についても以前から考えはあったのだが、3.11のときに抱いた感情が帰化を後押しした。

 しかし、日本国籍を取得したキーン氏の態度の置きどころは、“日本スゴイ”を喜び勇んで広める「愛国者」などではなく、前述の通り「これまで遠慮して言わなかった日本の悪口も、どしどし言うつもりです」というものだった。

 キーン氏は自分のことを「政治的な人間でもありません」と言うが、それでも原発再稼働に対する政府の動きには怒りを抱き、反対の署名運動にも参加したという。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

ドナルド・キーンは右派がもてはやす浅薄な「日本スゴイ」じゃない! 日本愛ゆえに改憲、原発、東京五輪を批判していたのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。ドナルド・キーン改憲日本スゴイ東京五輪編集部の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 吉村洋文知事「命の選別」発言は事実! “治療を高齢者から若者に”
2 『スシローと不愉快な仲間たち』12 安倍首相の寒すぎるポエム
3 安倍が宇野教授を任命拒否したのは宇野教授の父から批判された逆恨みか
4 菅首相に飛ばされた元総務官僚が語った恐怖支配!「あそこまでひどい人は…」
5 検察がつかんだ「桜」前夜祭の公選法違反証拠!費用補填800万円の明細
6 小田嶋隆・武田砂鉄対談 後編 糸井重里と松本人志をあらためて語る
7 中居がすべらない話でJのタブーに!
8 安倍政権御用ジャーナリスト5位〜大賞発表!
9 ウーマン村本がよしもと社長からの圧力を激白!
10 THE MANZAIウーマン村本のもう一つの凄さ
11 小田嶋隆・武田砂鉄対談 前編 ツイッターで安倍政権とどう向き合うか?
12 学術会議任命拒否 宇野重規教授が書評「暴君」論で菅首相批判か
13 菅首相が生出演『ニュースウオッチ9』めぐり内閣広報官がNHKに圧力
14 大阪のコロナおざなり対策が酷すぎる!重症病床使用率もごまかし
15 菅首相の遅すぎる「GoTo見直し」はキャンセル料補填しないためか!
16 『あさが来た』は籾井の機嫌取り企画
17 コロナ再拡大の最大の戦犯は菅首相!専門家の指摘無視「静かなマスク会食」
18 大阪都構想住民投票に58億円 吉村知事「イソジン会見」の裏側も発覚
19 橋下徹がコロナ対策過剰論を主張するため「熱中症ではそんな対策してない」
20 『スシローと不愉快な仲間たち』11 「ほんこんおもんない」が証明したもの
1菅首相が生出演『ニュースウオッチ9』めぐり内閣広報官がNHKに圧力
2菅首相に飛ばされた元総務官僚が語った恐怖支配!「あそこまでひどい人は…」
3 安倍晋三が調子に乗っている! 極右集団「創生日本」再始動
4菅首相の遅すぎる「GoTo見直し」はキャンセル料補填しないためか!
5大阪のコロナおざなり対策が酷すぎる!重症病床使用率もごまかし
6菅、安倍、森がバッハ来日で…コロナ隠しにGoTo続行、NHKに圧力
7コロナ再拡大の最大の戦犯は菅首相!専門家の指摘無視「静かなマスク会食」
8検察がつかんだ「桜」前夜祭の公選法違反証拠!費用補填800万円の明細
9 大統領選不正デマを拡散した日本のトランプ応援団の妄言総まくり!
10吉村洋文知事「命の選別」発言は事実! “治療を高齢者から若者に”
11安倍が宇野教授を任命拒否したのは宇野教授の父から批判された逆恨みか
12 学術会議任命拒否 宇野重規教授が書評「暴君」論で菅首相批判か
13『スシローと不愉快な仲間たち』12 安倍首相の寒すぎるポエム
14小田嶋隆・武田砂鉄対談 後編 糸井重里と松本人志をあらためて語る
15小田嶋隆・武田砂鉄対談 前編 ツイッターで安倍政権とどう向き合うか?

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄