『進撃の巨人』諌山創が腐女子ウケ狙いを告白!なのに実写版でリヴァイがいないのはなぜ…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
shingekinokyojin_01_150411.jpg
左・画像左側手前が人気キャラのリヴァイ(『進撃の巨人』(講談社)第5巻より)/右・その代わり(?)の映画版オリジナルキャラのシキシマ(映画『進撃の巨人』公式サイトより)


 今夏、前後編2部作で実写劇場版が公開される『進撃の巨人』(原作、諫山創/講談社)。人類が突如出現した謎の人食い巨人と戦うというストーリーで、国内だけにとどまらず、海外でも一大ブームを巻き起こしているこの作品。8月1日の前編公開に向けて映画の情報も続々と解禁され、期待も高まっているが、実写映画化に伴い、先日実写ドラマの制作も発表された。

 しかし、気になることがある。それは、主人公のエレン・イェーガーを差し置いて圧倒的な人気を誇る彼の上司・リヴァイ兵長がドラマに登場するかどうかだ。なぜなら、実写映画ではリヴァイが登場しないから。作中で人々が暮らす内地は壁に囲まれているのだが、リヴァイはその壁の外に出て巨人と戦う調査兵団の一員で、身長160cmにも関わらず、人類最強と言われる三白眼の兵士だ。「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA/メディアファクトリー)2014年10月号の人気キャラランキングで1位に選ばれるなど、もっとも人気のあるキャラでもある。

 なぜ、そのリヴァイが映画に登場しないのか。原作ファンの間では推測がとびかっている。160cmの身長やそれに反して65kgもある体重という設定、イメージに合う俳優がいないことが登場しない理由ではなどと推測されているが、本当にそれだけなのだろうか。身長や体重ぐらいの設定なら、エレンの幼馴染であるミカサ・アッカーマン演じる水原希子や調査兵団でリヴァイとともに上司のエルヴィン・スミスを支える分隊長のハンジ・ゾエを演じる石原さとみだって違う。

 実はファンの間では、単にイメージに合う人がいないというだけでなく、ある説が囁かれている。それは、「腐女子に叩かれるのが怖くて、ビビって逃げた」というもの。

 そもそも『進撃の巨人』がここまで脚光を浴びたのは、女子とりわけ腐女子からの人気によるところも大きい。講談社社長・野間省伸氏も「日経MJ」11月4日号のインタビューで「進撃の巨人は女性読者を取り込みました」と語っている。とくにリヴァイは、「an・an」(マガジンハウス)や「FRaU」(講談社)といった女性誌でも表紙を飾り、特集が組まれるほど多くのファンを持つ。リヴァイを主人公に据えた外伝「進撃の巨人 悔いなき選択プロローグ」(漫画・駿河ヒカル、企画原案・砂阿久雁(ニトロプラス)、原作・諌山創/講談社)を少女マンガ誌の「ARIA」で連載すると、掲載号が売り切れたほど。

 腐女子といえば、いわゆるBL(ボーイズラブ)を好む女子だが、『進撃の巨人』は言うまでもなくBL作品ではない。にもかかわらず、リヴァイが腐女子の心を掴んだシーンをいくつか見てみよう。

 まず、あまりにも有名なのが、審議所で拘束されているエレンをリヴァイ兵長が観衆の前で容赦なく蹴りまくる場面。そこでリヴァイはエレンにこう語る。「今お前に一番必要なのは 言葉による「教育」ではなく「教訓」だ しゃがんでるから丁度蹴りやすいしな」。そのうえ、下から睨みあげるエレンの顔面を踏みつけるのだ。この一方的な“調教シーン”に萌えた人は多い。

 しかし、腐女子はただ目つきの悪い人類最強のチビがドSっぷりを発揮していることに萌えているわけではない。実はこれ、解剖されそうになっていたエレンを救い、彼の希望通り調査兵団に入れるための芝居だったのだ。そして、無事にエレンを調査兵団として迎え入れたあと、彼に「俺を憎んでいるか?」と尋ねるリヴァイ。エレンが多少怯えながらも「い…いえ 必要な演出として理解してます」と答えると、「ならよかった」と無表情で返す。目つきも口も悪く、感情が読みにくいので一見冷徹に見えるが、実は仲間思いで不器用なだけという彼のギャップは、腐女子に妄想の余白を与える。エレンを蹴ったときに「しゃがんでるから丁度蹴りやすいしな」と、思わず本音がこぼれてしまうところも腐女子にはかわいく映るのだろう。

 これと合わせてもうひとつ印象的なのが、お掃除シーン。掃除をする際、潔癖のリヴァイは頭に三角巾、口元から鼻まできっちり布で覆い、掃除に取り掛かる。始めはリヴァイから「全然なってない すべてやり直せ」とやり直しを命じられたエレン。しかし、それからしばらく経った後、第104期訓練兵団の同期だったジャン・キルシュタインやアルミン・アルレルトといったメンバーとともに人里離れた場所で生活することになるのだが、このときエレンにはある変化が表れているのだ。それが、引っ越してきてそうそう、ジャンやアルミンに対して言ったこのセリフ。

「お前ら…家に入る前にちゃんと埃や泥を落として来たか?」
「……まだわかんねぇのか? そんな意識でリヴァイ兵長が満足すると思うか? 今朝だってオレがお前のベッドのシーツを直していなかったらなー」

 ……見事に調教されてしまっているではないか! もちろん、三角巾と口元を覆う布まで完璧に再現。この間に2人の間ではどんな“調教”が行われたのか妄想する腐女子が大勢表れた。そして、作中リヴァイが命懸けでエレンを救ったのは1度や2度じゃない。たしかに、リヴァイはエレンの上司であり、監視役でもあるのだが、大事な場面では「お前は間違ってない やりたきゃやれ」「好きな方を選べ」と口にするなど、信頼し、対等にも見ている。“巨人を駆逐する”ことだけを考え、突っ走ろうとするエレンを上手くコントロールしながらも「エレンには… 死に物狂いになれる環境が相応しい」と、彼のことをきちんと理解した発言もする。単なる上下関係だけでなく、この信頼関係が腐女子センサーに反応したのではないか。

 さらに、エレン以外にもリヴァイのお相手として人気のキャラがいる。それは、調査兵団の団長で、リヴァイの上司であるエルヴィン。そもそも、リヴァイを調査兵団に引き入れたのが彼なのだ。隊員からも「リヴァイ兵長があれほど信頼してるくらいだからね」と語られるほど2人の仲は深いものらしく、リヴァイもエルヴィンの指示には「お前の判断を信じよう」と素直に従う。腐女子は関係性に萌えるものだが、こういった物語に描かれないキャラクターの人生や過去、“それまでの話”に思いを馳せる生き物でもある。

 これほど妄想をかき立てるリヴァイは、「人類最強の兵士」というだけでなく、腐女子的にも魅力的で、とてもよくできたキャラクターなのだ。

 こうしたあまりの腐人気ゆえに、映画にリヴァイが登場しない理由として、「腐女子に叩かれるのが怖くて、ビビって逃げた」という説が流れているのだろう。たしかに、人気マンガを実写化した際、原作人気が高ければ高いほど、イメージとのギャップで原作ファンから総スカンを食らうことは少なくない。

 でも、いくら『進撃の巨人』が腐女子に人気だったとしても、これはBL作品でもなんでもない。腐女子の意見くらいで、重要キャラの登場をなくしたりするだろうか。リヴァイは人気ナンバーワンのキャラというだけでなく、主人公のエレンを守り、導く存在で、物語上なくてはならない存在。登場させないはずがない。

 そう思うかもしれないが、あながちこの説は間違っていないかもしれないのだ。というのも、作者である諫山自身がとある発言をしているから。

 その問題のインタビューが掲載されているのは、『進撃の巨人』特集が組まれた「BRUTUS」(マガジンハウス)12月1日号でのこと。そこで、インタビュアーからリヴァイの腐女子人気について「最初からそこを狙ったわけではありませんよね?」と聞かれた諫山は、次のように答えている。

「お姉さま方をがっかりさせてしまうかもしれませんが、自分の中にも腐女子がいるのかもしれないというか、これは腐女子にウケる気がする、というセンサーは働きました。『幽☆遊☆白書』の飛影みたいな雰囲気を狙っていて、造形ができた瞬間に「これはイケる」と確信したんです」

 そう、『進撃の巨人』はたまたま腐女子に人気になったのでなく、あらかじめ腐女子ウケを意識して描かれた作品だったのである。原作者である諌山が腐女子ウケを意識し、“自分の中にも腐女子がいる”とまで語っているのだ。腐女子を意識して映画の設定を変える、というのも十分考えられるのではないか。

『進撃の巨人』では、リヴァイ以外にもエレンの同期でライバル的存在でもあるジャンや、同じく同期のライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーという同郷コンビなど、腐女子に好かれるキャラが多い。特に、人間臭さが魅力であるジャンの人気は高く、彼を好きすぎて語尾が「じゃん」になってしまう“ジャンフルエンザ”にかかる人々まで登場し、世界中の腐女子に猛威を振るった。また、作中で女性キャラに「女の方に興味があるようには見えなかったんだが……」と言われたライナーの誕生日が8月1日(801やおい)だったり、Blu-ray & DVD第7巻のブックレットでは「BL指数は高めなだけに、ジャンやアルミンも狙われている!? 目つきが危ない……。」という紹介文をつけられたりもしている。

 でも、こういったネタや上にあげたリヴァイとエレンの関係性もすべて諫山の計算だったとしたら、どうだろう。

 初期設定として男が好きと書かれていたり、何もない状態であからさまに関係性を描写したり、過去も含めて事細かく描きすぎると腐女子は萎えるし、妄想しようという意欲がわかない。しかし、諫山はそれをよくわかっているのか、前出の「ダ・ヴィンチ」2014年10月号のインタビューでも「キャラクターは多くを語らせないように描いています」と語った。でも、妄想のきっかけとなるタネやつなぎ合わせるための点は必要。そこで公式が上にあげたようなネタでときたま“燃料投下”してくると、さらなる盛り上がりを見せる。『進撃の巨人』にはそれらが絶妙に配置されているのだ。もし、これらの関係性や余白まで諫山が計算して意図的に作り出していたとしても、彼のなかに“腐女子がいる”のなら納得できる。

 それにしても、腐女子のツボをここまでおさえた、諌山の腐女子力は相当なものといえるだろう。彼の腐女子センサーのおかげで、『進撃の巨人』は腐女子層をゲットし、これほどの人気を得てきたのかもしれない。

 とすると、「腐女子をガッカリさせないために、あえてリヴァイ出さない」というのも、これだけ腐女子心をおさえた作品なら、あながちあり得ない話ではないし、賢明な判断かもしれない。原作に忠実すぎるあまり、マンガ的なキャラクターをそのまま生身の人間に置き換えて滑稽なことに……というのは、これまで幾多のマンガ原作の実写化が踏んできた轍だ。

 リヴァイのいない劇場版『進撃の巨人』でどれほどの集客が見込めるのか。この選択がどちらに転ぶかはわからないが、映画版にもしっかり関わっているという諌山の腐女子力とリヴァイの代わりに登場するシキシマに期待したい。
(田口いなす)

最終更新:2018.10.18 04:46

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

『進撃の巨人』諌山創が腐女子ウケ狙いを告白!なのに実写版でリヴァイがいないのはなぜ…のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。田口いなす腐女子諌山創進撃の巨人の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 「あおり運転」警察の過剰捜査とワイドショーの異常報道
2 パワハラ禁止の法整備が不十分な日本で労働者をどう守るか?
3 日韓対立で『ワシントンポスト』が日本の歴史修正主義が原因と指摘!
4 マツコ「安倍首相は馬鹿」にネトウヨが
5 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
6 葵つかさが「松潤とは終わった」と
7 N国・立花孝志のマツコ攻撃は言論弾圧!メディアは放置するな
8 ウーマン村本がよしもと社長からの圧力を激白!
9 安倍政権が天皇代替わりにかこつけ佐川元国税庁長官を恩赦に
10 マンガ『スシローと不愉快な仲間たち』第4話
11 池上彰が朝日叩きとネトウヨを大批判
12 松尾貴史「日本を壊しているのは安倍さん」
13 山本太郎と久米宏が安倍政権、原発タブー、杉田水脈を斬る!
14 秋篠宮家の料理番がブラック告発
15 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
16 山本太郎が安倍の対韓国強硬姿勢を「小学生並み」と批判した理由
17 終戦記記念日にあらためて言いたい!「慰安婦はデマ」こそデマだ!
18 報道特集が中曽根の慰安所作りを報道
19 自衛隊スパイ事件、官邸が解禁の理由
20 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
1 安倍首相と省庁幹部の面談記録が一切作成されなくなった!
2 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
3 金融庁報告書で厚労省年金局課長の驚愕無責任発言
4 産経新聞コラムが「引きこもりは自衛隊に入隊させて鍛え直せ」
5 安倍首相が「老後2000万円」追及に逆ギレ!
6 菅官房長官が望月衣塑子記者への“質問妨害”を復活
7 金融庁「年金下がるから資産運用」報告書で麻生太郎が開き直り!
8 F35捜索打ち切りと大量購入続行でNHKが「背景に政治性」と報道
9 金融庁炎上の裏で安倍政権が「年金」の“不都合な事実”を隠蔽!
10 防衛省イージス・アショア失態 、玉川徹が原因を喝破!
11 長谷川豊が部落差別発言「謝罪文は馬場幹事長が作った」
12 講談社「ViVi」の自民党広告は公選法違反か!
13 映画『主戦場』上映中止要求の右派論客に監督が徹底反論!
14 渡辺謙が語った『ゴジラ』出演と震災、原発、戦争
15 マンガ『スシローと不愉快な仲間たち』第1話
16 田崎史郎「65歳から年金もらってます」
17 川崎殺傷事件「不良品」発言こそ松本人志の本質だ!
18 香港市民はデモの力示したが、日本は…
19 松本人志が「不良品」発言問題で謝罪も説明もなし!
20 農水元次官子ども殺害正当化は、橋下徹、竹田恒泰、坂上忍も

カテゴリ別ランキング


人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄