一見、普通の人なのに……性犯罪者の頭の中はどうなっているのか!?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
seihanzai_140914.jpg
『性犯罪者の頭の中』(鈴木伸元/幻冬舎新書)

 公園で女性に向かって陰茎を露出する輩に、電車内で何食わぬ顔をして女性の尻を触る輩、はたまたすれ違い様に胸を揉むような者もいれば、夜道、強姦に及ぶ者もいる。性犯罪者は様々なシーンで女性(ときに男性)を脅かす存在だ。警察庁が公開している「平成24年の犯罪情勢」によれば、一昨年の強姦の認知件数は1,240件と前年よりも55件増えており、強制わいせつの認知件数は7,263件と前年よりもなんと393件も増えている。強姦は平成23年まで減少傾向にあったが平成24年には増加、強制わいせつは平成22年から増加傾向にある。

 そんな性犯罪者は、やることも気持ち悪ければ「外見も気持ち悪い人」と思われがちだが、実はそうではない。『性犯罪者の頭の中』(鈴木伸元/幻冬舎新書)に登場する「少女などに対して10件以上の性犯罪を繰り返していた」A受刑者、「強姦とのぞきで4年の懲役刑に服した」B元受刑者は、「いずれも結婚し、社会的にそれなりの地位となる職業についていた」という。A受刑者は「関東地方の中高一貫の某有名私立高校の出身」で首都圏の大学へ現役合格を果たしたのち、外資系企業で働いていた。B元受刑者は「地方で小さな会社を経営して」いる。

 彼らはいずれも一般的な社会生活を送りながら、日々犯行に及んでいた。端から見れば、満ち足りていて犯罪など犯す必要は全くなさそうなのに、である。一体彼らはなぜ性犯罪を犯し続けてきたのか? A受刑者は作者への手紙の中でこう記していた。

「自分の身体と頭脳をフルに活用して犯行を計画していく過程は、ゲームに通ずる感覚かもしれません。あらゆる手掛かりを探り、様々なケースを推察・想定したり、環境を十分に把握してシミュレーションしたりして、自分の能力を使って犯行の絵を描いていくわけです」

 抑えられない性衝動を抱えて突発的に犯行を犯すのではなく、綿密な計画を立て、実行に移していくのである。A受刑者の犯罪は「相手は、小学生、中学生、高校生、成人と幅広い。ときには、狙いをつけた女性を何か月もつけ回して犯行の機会をうかがったり、狙った女児の家のポストを物色して生活パターンを探ったり、犯行の様子をビデオに収めて被害者に対して『映像をばらすぞ』と言って脅したり」と、卑劣きわまりない。犯行への計画性が垣間見えるのは、先にA受刑者が記したように十分なシミュレーションを行ってきたためだろう。A受刑者はまた、綿密な計画を立てて実行していくプロセスを、手紙にこう書いている。

「ロールプレイングゲームにおいて情報収集をし、フラグを立てて、目的を攻略していく過程に似ているように思います。犯行がエスカレートしていくにつれて“経験値”が増え、自分が“レベルアップ”していく感覚がありました」

 犯行を犯すたびに自らに自信を持ち、さらなる難関に挑戦していくさまはまさにゲーム感覚。A受刑者が最初に実行に移したのは、のぞきだった。そこから性犯罪の“経験値”を上げていき“スキルアップ”し、最終的には連続強姦を犯す“性犯罪者”になってしまったのだ。

 他方、B元受刑者は、強姦を犯した理由を作者にこう語る。

「今振り返れば、自分は強い男なんだと確認したかったのだと思います。被害者の方には大変申し訳ないですが、他の人をコントロールしたい、支配したい、そういう気持ちから犯行に及んだと、自分では分析しています」

 会社をコントロールする立場でありながらなお「他人を支配したいという願望は、普段の生活からB受刑者の中にあった」のだという。家庭では「妻に対し常に高圧的に振る舞うなど亭主関白」で、会社の中では「経営者として、営業成績が思わしくない部下を叱りつけ、ときには顧客とも激しく言い合いをしていた」B元受刑者は、酒に酔って夜道を歩いているとき、ふと、のぞきをしてみようと思ったのが全ての始まりだった。

「なぜ他人を支配することが、のぞきにつながるのか、わかりにくいでしょうね。私がのぞいていることに、相手の女性は全く気づいていません。それでいて、見られたくないものを私に見られているわけです。つまり私は、その女性を完全に自分のコントロール下においていることになります」(B元受刑者)

 こうした気持ちからのぞきを重ねるたびに「自分は強い男だ、何でもできる男だ」という思いが強くなってきて、最終的に強姦をやってみようと考えるようになったのだという。

 両者は最初の性犯罪に手を染めるまでの日常生活での“満たされなさ”も共通している。A受刑者は大学卒業後に就職した会社で激務に追われ、それゆえに自分の時間が取れず彼女もできない、といった状況で「犯行に至る直前は、自殺を考えるような精神状態でした。仕事で挫折し、プライベートもうまくいかない閉塞感にさいなまれていて、もうどうでもいい、死んでしまいたいと思った時期があった」ため「やがて、どうせ死ぬならなんでもやってやる、という気持ちになりました」という。

 B元受刑者は、父親の存在が“他人をコントロールしたい”という願望に影響していた。「会社の創業者である父は、社員にも家族にも常に厳しかった。ときには、酒を飲んで気に入らないことがあると、妻を殴りつけることもあった。それでも父は会社の経営者として、いつも周囲から尊敬されていた。B元受刑者は、そんな父の姿に憧れた。父のようになりたいと思った」。ところが、それがB受刑者の“他人をコントロールしたい”という欲望を暴走させ、結果、性犯罪に手を染めることになったのだ。

 四六時中性的なことが頭から離れず、自分は性犯罪を犯したくないのにやめることができない、という者もいる。強制わいせつを繰り返し、懲役6年の刑に服したC元受刑者は「正直に言うと、また性犯罪を繰り返してしまうのではないか、と常に不安な気持ちで暮らしています。1日24時間のうち、8時間は働いていて、8時間は寝ている。とすると、残りの8時間はずっと性的なことを考えてしまうのです」と、苦悩していた。サラリーマン時代のわずかな蓄えを、株やFXにつぎ込み、それがうまくいかない時も、性的なことを考えてしまうのだという。

「何か自分の思い通りにいかないことが出てくると、性的なことを考えてしまう。この感情とどう付き合っていけばよいのか、日々考えています」(C元受刑者)

 中には「やめられない自分」を止めるために自殺に至るケースもある。子ども相手の性犯罪を繰り返して逮捕され、服役した30代の男Gは「性犯罪者に再びならないようにして欲しい」と、ある医療関係者のもとで、カウンセリングを受けていた。ところが、「カウンセリングを続けても、Gの性的妄想は止まらなかった。(略)自分の再犯の可能性に怯え続け、カウンセリングの最中に『何とかならないのですか』と語気を荒げることもあった」という。そして、通院から1年が経った頃、遅刻することのなかったGが初めて約束の時間に現れず、その1週間後に警察から医療関係者のもとへ連絡があり、Gの自殺を知らされた。

 親の影響、また激務など、様々な要因で日常生活に満たされなさを感じ、性犯罪へ手を染める者、また服役を経ても自身の性衝動に怯え続ける者たち。筆者はこう分析している。

「事件を起こした性犯罪者たちは、誰もが生まれながらにして『性犯罪者』だったわけではない。どこかで、普通に生活をしている人たちと違う道に入ってしまったのだ。しかも、それは、ある日突然道を間違えるのではなく、少しずつ間違いを積み重ねていき、気がついたときには大きく踏み外してしまっている」

 我々もまた、いつ道を踏み外してしまうか分からないということなのだろうか。
(高橋ユキ)

最終更新:2014.09.16 06:45

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

性犯罪者の頭の中 (幻冬舎新書)

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

一見、普通の人なのに……性犯罪者の頭の中はどうなっているのか!?のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。妄想欲望高橋ユキの記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 橋下徹が岩上安身リツイート裁判で矛盾を追及され逆ギレ!
2 萩生田光一の問題は消費税延期論でなく「ワイルド改憲」発言
3 ブラックホール会見でNHK記者“日本スゴイ”質問に世界が失笑
4 東電が福島原発の廃炉作業を外国人労働者に押しつけ
5 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
6 葵つかさが「松潤とは終わった」と
7 上野千鶴子「東大祝辞」へのワイドショーコメントが酷い!
8 安倍首相「桜を見る会」招待状が8万円で売買との報道!
9 ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける経産省メール
10 報道特集が中曽根の慰安所作りを報道
11 秋元康の東京五輪に椎名林檎が危機感
12 安倍首相と省庁幹部の面談記録ゼロ!安倍政権“公文書破壊”の実態
13 自衛隊スパイ事件、官邸が解禁の理由
14 ピエール瀧逮捕でワイドショーが石野卓球に「謝れ」攻撃の異常
15 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
16 橋下徹、松井府知事が恫喝スラップ訴訟
17 国民健康保険料が大幅値上げ、年間10万円増額も
18 池上彰が朝日叩きとネトウヨを大批判
19 マツコ「安倍首相は馬鹿」にネトウヨが
20 野党議員をデマ攻撃「政治知新」の兄・自民党県議を直撃!
1 国民健康保険料が大幅値上げ、年間10万円増額も
2 安倍首相と省庁幹部の面談記録ゼロ!安倍政権“公文書破壊”の実態
3 石野卓球がワイドショーに勝利した理由
4 忖度道路めぐり安倍の直接指示の新事実が
5 安倍首相が「桜を見る会」に『虎ノ門ニュース』一行を堂々招待
6 安倍が“忖度道路”の要望書を提出、山陰自動車道でも利益誘導
7 上野千鶴子「東大祝辞」へのワイドショーコメントが酷い!
8 塚田「忖度」発言は事実! 麻生利益誘導の疑惑
9 イチローに国民栄誉賞を断られ安倍政権が赤っ恥
10 野党議員をデマ攻撃「政治知新」の兄・自民党県議を直撃!
11 NHKで国谷裕子を降板に追い込んだ人物が専務理事に復帰
12 維新勝利で橋下徹が「反対した年配の人が死んじゃった」
13 中村文則が安倍政権批判に踏み込む理由
14 『あさイチ』の「中高生に韓国が人気」企画炎上の異常
15 安倍首相「桜を見る会」招待状が8万円で売買との報道!
16 菅官房長官「令和おじさん」人気の正体!
17 ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける経産省メール
18 「あつまれ!げんしりょくむら」以外も…原子力ムラの醜悪SNS戦略
19 衆院補選で安倍自民党が大惨敗の予想が!
20 ピエール瀧出演の『麻雀放浪記2020』に“安倍政権への皮肉”

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄