「文春砲」に疑惑を追及された参院選候補・青山繁晴の珍発言集! 外交の専門家なのに「タックスヘイブン」の意味を知らず…

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「青山繁晴の道すがらエッセイ」より


 参院選比例区に自民党から出馬した民間シンクタンク社長・青山繁晴氏に“文春砲”が放たれた。本日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が、「“舛添ブーメラン”自民を直撃」と称して青山氏の経費流用などの疑惑を報じているのだ。

 青山氏は共同通信社の記者を経て「独立総合研究所」というシンクタンクを設立。おもに安全保障や外交問題のコメンテーターとして『ワイド!スクランブル』や『ビートたけしのTVタックル』(ともにテレビ朝日)などの番組に出演している。とくに関西では『たかじんNOマネー』(テレビ大阪)や夕方のニュース番組『FNNスーパーニュースアンカー』(関西テレビ)にレギュラー出演していたこともあって知名度はバツグンの人物だ。しかも、反中嫌韓を隠さない青山氏は、ネトウヨからも圧倒的な支持を誇っている。

 そして、今回の参院選出馬は、青山氏曰く「安倍総理から電話があって『参院比例区に出てもらいたい』と」直接口説かれたのだという。

 そんな青山氏に浮上したのは、共同通信時代、1996年にペルーで起こった日本大使公邸人質事件の際に、4カ月の滞在期間のあいだに約1500万円の経費を使い、少なくともそのうち450万円に乗馬クラブの代金など私的流用の疑いがあるというもの。当時、社内でもこれは問題化し、青山氏は共同通信社を退社。450万円は退職金で相殺したのだという。

 他にも、「文春」は家族旅行でハイヤーを私的流用したという舛添ばりの疑惑、そして記者時代の“業績詐称疑惑”についても徹底追及している。

 青山氏は、参院選の選挙ビラで記者時代の“武勇伝”として〈「昭和天皇の吐血」など歴史的スクープ連発〉と謳っているというが、「文春」の取材に応じた当時宮内庁を取材していた記者は「陛下のご病状を巡っては、朝日新聞と日本テレビが頭一つ抜けていた」「日本テレビの第一報は、“歴史的スクープ”」と当時の報道状況を語り、「青山氏の報道は全く印象に残っていません」と証言。また、青山氏と同じく元共同通信記者のジャーナリスト・青木理氏も「共同の社内で、特ダネ記者として青山氏の名前を聞いたことがありません」と言い、件のペルー人質事件についても「社内で評価されていたのは、ゲリラと交渉し、公邸内の取材を実現させたカメラマン」と語っている。

 さらに当時の同僚記者は、ペルー人質事件のとき青山氏の記事は“独自ネタ”を飛ばしていたが、「○○筋によると」という情報源をぼかした話ばかりで、他社が追いかけても「一切ウラが取れない」ものだったという。そして、この記者は「そのため、彼についたあだ名は『文豪』(笑)」と、青山氏の当時の社内での評判を紹介している。

 調子に乗って参院選に出たばっかりに、とんだ過去を暴かれた形だが、当の青山氏は「文春」の記事を真っ向から否定しており、ブログに〈すでに法的手続きを開始した。民事のみならず刑事も含めて告発し、徹底的に戦っていく〉と記述。〈週刊文春に、嫉妬と嘘で作りあげた「情報」を提供した人物も、およその見当は付いている〉と息巻いている。

 一方、「文春」は、もっと大きな疑惑を追いかけて取材を続行しているとの情報もあり、決着はもう少し先になりそうだが、本サイトがこの記事でもうひとつ関心を引かれたのは、「文春」の直撃取材を受けた際の青山氏の珍回答ぶりだった。

 たとえば、乗馬クラブの経費を請求していた問題で、選挙ビラにも「趣味乗馬」とあることを追及されると、青山氏はなぜか「(乗馬したのは)十回いかないくらい」「趣味になってない」と言い張り、こんな自慢話を始めている。

「申し訳ないけど、僕は運動神経いいから十回に満たない時に、障害を飛び越えられましたからね」

 さらに、ペルーで現地の人間にどうやって取材していたのかを糺されると、こんな仰天回答を繰り出したのだ。

「僕は当時スペイン語をしゃべっていた。当時だけどね、今は忘れたけど。余談ですけど、中国に行ったら二日目の夜から中国語を話せますよ」

 2日でその国の言葉をしゃべれるようになるって、いったい……。実は、この青山氏に関しては、その政治的スタンスとは別に、話す中身がかなりヤバい、との評判が前々から流れていた。

 たとえば、青山氏は前述の発言のように、ことあるごとに語学堪能であることを自慢し、海外の政府高官や世界のインテリジェンスから情報を得ていることを強調してきた。

 テレビやラジオ番組でも何かとネイティブ風味な巻き舌英語を披露しつつ、「◯◯国の政府要人から聞いた」「日米の政府高官によると」を連発する。青山氏を崇拝するネトウヨたちはこれを聞いて、「やっぱり青山さんは頭脳明晰」「さすが世界のインテリジェンスとパイプがあるだけある」などとうっとりしている、という按配だ。

 だが、そんな語学堪能で、世界の政府関係者やインテリジェンスと太いパイプをもっているはずの青山氏が、今年4月7日に放送されたネトウヨ御用達のCSチャンネル「DHCシアター」でのレギュラー番組『真相深入り!虎ノ門ニュース』で、こんなありえない発言を行っていた。

「英語では『税金天国』、タックスヘーブンと言ってて、日本では難しく『租税回避地』って言ってますけれども」

 あの、タックスヘイブンって、「heaven=天国」じゃなくて「haven=避難所」なんですけど……。これには同席していたケント・ギルバート氏がすかさず「あれねぇ、“天国”じゃないですよ。あれ“逃げ場”」と訂正したが、青山氏は「ああ、はいはい、はいはい、はい」とだけ返事し、何事もなかったかのように「逃げ場としての天国みたいな場所」と苦しすぎる解釈で話を押し切ってしまった。

「タックスヘイブン」も知らない語学力、いや、語学力以前にそんな国際経済の知識でいったいどうやって、世界のインテリジェンスと渡り合っているのだろうか。

 実際、世界の政府高官やインテリジェンスからもたらされているという情報の中身もすごい。

 青山氏は北朝鮮事情にも通じているようで、メディアでよく言及しているのだが、そのなかでこんな話をしている。

「北朝鮮の工作員っていまどれくらいいるのか、はっきりわかりませんが、僕はかつて当局者の方から、だいたいいまでも2万人前後いると考えてますと言われたことあります」(チャンネル桜『青山繁晴が答えて、答えて、答える!』2010年4月16日)

 北朝鮮の工作員はいるだろうが、日本国内に2万人って! それだけいたら、何か大きな事件が起こっていてもよさそうなものだが、驚くのはまだ早い。青山氏は関西のニュース番組『スーパーニュースアンカー』14年7月9日の放送で韓国の元米軍慰安婦たちが集団提訴した問題を取り上げると、「そもそも日本の慰安婦問題は北朝鮮の工作員が操っている」と持論を展開。いわく「工作員は韓国の青瓦台や大学やメディアなどあらゆるところに入り込み、今回は朴政権に打撃を与えるために動いている」のだという。このとき青山氏は、いつものパターンで「日米の情報当局に僕、最終確認したから」と念押ししている。

 慰安婦問題は北朝鮮の工作員が操っている……って、このヒトはいったい何を得意げに語っているのだろう。青山氏は従軍慰安婦問題運動を展開している韓国の市民団体「韓国挺身隊問題対策協議会」が親北朝鮮の姿勢をとっていることを番組内で指摘していたが、挺対協は運動団体のひとつにすぎない。しかも、韓国政府は操られているどころか、かなり前から、この挺対協を従北団体だとして排除する方向で動いている。1993年には挺対協の代表の夫を北朝鮮スパイの疑いで逮捕したし、2012年に挺対協が北朝鮮の慰安婦追及団体と共同声明を出した時は、罰金刑を課した。現在は韓国社会でもほとんど影響力を失っている。

 それを、いまごろになって「政府要人から聞いた」「日米の政府高官によると」などと持ち出し、慰安婦問題自体が北朝鮮に操られているかのような陰謀論を展開するというのは、とても慰安婦問題の経緯を理解しているとは思えない。

 青山氏のスゴイ話はまだまだある。福島原発事故後の11年6月3日にニコニコ生放送で行われた「緊急特番 これが福島原発の現場だ!」という番組では、当時の菅政権の「官邸の人間」に、青山氏は「あんた現場に行かないからだ、さっさと行けよ!」と激しく詰め寄ったと述べたが、つづけて、こんなことを言い出した。

「そのさっさと行けよと言われた側はね、菅政権側は何をしようとしたかと言うとね、僕を逮捕しようとしたんです!」
「政権側から『青山繁晴を逮捕しろ』、ないしは『してくれ』と言われたんです、と(官邸に)言われた捜査当局の側から僕に電話があって、『青山さん、政権はあなたを逮捕しようとしてますよ』って」

 じゃあ、なぜ逮捕されてないのか不思議だが、さらに青山氏は、ニコニコ生放送における自身の番組『青山繁晴の地獄の果てまで生ニコニコ』11年11月8日放送で、『ぼくらの祖国』という著書の執筆中に起こった“奇妙な事件”について、このような告白を行っている。

「(原稿が)やっといったん仕上がったら、なぜか外からの、はっきり言ってウイルスで、狙ったウイルスで、この原稿が2回破壊されたということがあって。警察庁の外事情報部が関心をもったりしたこともあったんです」

 ウイルスで原稿破壊(笑)。なんだか夏休みの宿題が終わらなかった小学生が「宇宙人がやってきて記憶を奪われたんだ!」と言い張っているのを見ているようなトホホ感さえ漂ってくるが、この珍発言連発の青山氏が語った驚嘆エピソードの最たるものは、安倍首相にかんするものだ。

 青山氏によると、14年4月にオバマ大統領が来日する前、キャロライン・ケネディ駐日大使が重要な役割を担ったのだという。安倍首相は靖国神社を参拝するなど“イデオロギー先行の人”だとオバマに誤解されていたが(無論、誤解ではなく事実だが)、それをケネディ駐日大使が以下のように説得したのだそうだ。

「僕に明かしてくれる複数の人が現れて。ちょっとビックリなんですが、キャロライン大使がオバマさんに迫った。『あなたは安倍総理を誤解してる』と。で、『自分はフェイス・トゥ・フェイスで目を見てじっくり話してわかったのは、安倍さんっていうのは、ミスター安倍さんというのは、あなたに似てるよ』と。『オバマさんに似てるよ』と。何かって言うと、リアリストだと」(ニッポン放送『ザ・ボイス そこまで言うか!』14年4月24日放送)

「オバマに似てる」という話だけで笑いが堪えきれなくなるが、くわえて青山氏はこう畳みかけた。

「(インテリジェンスの人たちは)安倍さんにコロコロ付いていくんですよ。もう、大好きなのっ! 僕は正直、安倍さんのどこがそんなにいいのかわかんないんですよ。ごめんね安倍総理、聴いてたら(笑)。でも、なんか不思議にある人にとってはグワーッとこう惹き付けるところがあるんですね。で、キャロラインさんは、それにハマッたんですよ」

 何だかよくわからないが、とにかく安倍首相から発されるコロコロ付いていきたくなる不思議な魅力にケネディ駐日大使が“ハマッた”と。──これを政治解説と呼んでいいのかは甚だ疑問だが、青山氏はもうひとつ、世界がひっくり返りそうなとんでもない爆弾発言をテレビで投下している。

 それは、14年に行われた日朝合意の背景を解説しているときのこと。拉致問題の再調査にいたった真相について、青山氏はいつもの「政府高官」「基本的にインテリジェンスの側の人びと」の証言として、「金正恩第1書記は安倍首相を気に入っている」からだと言ったのだ。

「金正恩第1書記が独裁者になってからずっと安倍さんを『案外気に入ってるんだ』とか、人によっては(金正恩は安倍首相のことを)『好きなんだよね』と(語っている)」(『スーパーニュースアンカー』14年6月4日放送)

 さすがに番組キャスターも「『好き』までいきますか?」と驚きを隠さなかったが、青山氏は平然とした様子で「僕もぎょっとしました」と言いつつ、「安倍さんが強いから(北朝鮮は)気に入っている」「北朝鮮こそ日本に強いリーダーを求めている」と理解に苦しむ結論を述べた。

 一体どんなパイプを使ったら、金正恩が「安倍さん好きなんだよね」と言ったという情報が入ってくるのだろう。だいたい、そんな側近しか知り得ないような話まで掴めるのなら世界中から情報屋として引く手あまただと思うが、なぜか青山氏はCSチャンネルや関西のテレビ番組でくすぶっている。

 ただ、ひとつだけ、よーくわかったのは、本人は否定しつつも安倍首相のことが「もう、大好きなのっ!」は、青山氏だということだろう。そして、青山氏は「大好き」が高じて安倍首相からのラブコールに応える形でとうとう参院選にまで出馬してしまった。そのあげくが、“文春砲”の餌食に……。

 もっとも、参院選の最中であることに加え、安倍政権や自民党に対してはすぐに凍り付いてしまうテレビ局の体質を考えると、舛添都知事のケースとはまったく違って、この青山氏の疑惑が大きな話題になることはないだろう。

 そして、前述したように関西での抜群の知名度やネトウヨからの支持を考えると、青山氏はそのまま、当選する確率はかなり高い。

「タックスヘイブン」の意味も知らず、陰謀論めいた解説でネトウヨの熱狂的支持を得てきた“外交の専門家”が、総理の覚えめでたく国会議員に登りつめる……。どんな悪夢だよと言いたくなるが、これがいま、日本で進行している「反知性主義」の現実ということなのだろう。
(編集部)

最終更新:2016.06.30 07:40

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