林真理子と江原啓之が今度はシングルマザー批判!「子供を産んでなぜ離婚するのか」

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母親の責任ばかりをしつこく追及する林真理子(画像は『美女入門スペシャル 桃栗三年美女三十年』マガジンハウスより)

「母親は何をしていたのか」「無責任すぎる」

 今年2月に起こった3人の少年による川崎中1殺害事件は社会に大きな衝撃を与えた。そのため多くの識者たちもまたこの事件についての“意見”を表明したが、なかでも冒頭のような“母親責任論”を主張したのが作家・林真理子だった。

「週刊文春」(文藝春秋)3月19日号の連載コラムで「親はいったい何をしているんだ!」として母親の責任を追及したが、そのあまりにも無神経な物言いにネットでは炎上も起こった。あれから2カ月、しかし、林はまだ自説を曲げていなかったらしい。「女性セブン」(小学館/5月14日・21日合併号)でまたぞろ母親の責任を蒸し返し、前回以上に激しく追及しているのだ。

「子供の命を守るために今、母親の覚悟が問われている!」

 こんなタイトルがつけられたスピリチュアリスト・江原啓之との対談企画で、林は冒頭から母親への責任論を展開しているのだ。

「なぜもっと早く親や周りの大人たちが声をかけたり、気がついてやれなかったのか、ということに尽きます。いくら忙しいからといっても、子供が顔に大きなアザを作って帰ってきたのに、その時点で何の手も打たなかったことが、残念でならないんです」
「結果として育児放棄といわれてもおかしくない状態に陥っていたわけですからね。殺された子供の立場に立てば、私はこのお母さんにものを言わざるをえないんです」

 そして、江原もこの林の意見に全面的に同調し、母親の責任を追及する。

「私もこの事件について、親の責任をまず考えました。まだ13才の子供ですよ。親は何としてもわが子を守る責任があったと思うんです」

 今回の事件に関して、同様の批判は一部で根強く指摘されてはいる。しかし今回、林と江原は事件の母親だけでなく、子供を持つ母親、特にシングルマザーの離婚や男性関係といった問題に広げ、生き方にまでいちゃもんを付けているのだ。

江原「元はといえば、覚悟を持って離婚したのかな、ということも私は思いました」
林「5人も子供を産んで、なぜ離婚するんですか、と多くの人が思っているのではないでしょうか。(略)離婚するなら、相当の覚悟と同時に、経済的な保証、祖父母の協力も得られるのかどうか、事前の準備もいるはずです」

 まるで子供を多く持つ母親が離婚するのは罪だと言わんばかり。本サイトでも何度も紹介したが、現在の貧困、特にシングルマザーの貧困はそんな簡単なことではない。なかには貧困家庭に育ち、親からの暴力や育児放棄を受けた女性だっている。そんな女性が親から逃げるように結婚し、離婚したからといって誰が責められるのか。

 “祖父母の協力”などと言うが、そこには祖父母の経済や健康状態についての配慮も一切なし。貧困の世代間連鎖、そのためのトラブルや孤立が原因で、頼れる親族など存在しないケースは多い。また夫の暴力から子供を連れて逃げるケースだってある。実際、今回の被害者遺族である母親は夫の暴力が原因で離婚しているが、しかし2人はそうした多くの貧困女性たちの実情を考慮、いや想像することすらないようだ。

林「手に職を持って、一生懸命働くとか、努力した人、能力が高い人はそれなりの待遇を得ているんですよ。逆にいえば、努力もしない能力も磨かない、それでは貧困から抜け出せないと思う」

「努力しない奴が悪い」――。全てを個人の資質に貶め、既に社会問題となって久しい格差社会や増大する一方の非正規雇用や派遣切りの実態、はびこるブラック企業や新卒でさえ就職困難な現状、弱者切り捨ての政治政策や社会状況、そして貧困の裏に存在する様々な困難、時には知的障害さえ指摘されているのに、それらはまるで無視だ。まるで選民主義かと見まがう強者の理論でもある。

 さらに江原は幼い頃父親と死別したことで、祖母の家に預けられた経験を開陳した上で、離婚し生活基盤がないなら子供を児童養護施設に預けることを推奨する。「生活の基盤もないのに手元に起きたいというのは、ただのエゴだと思わずにはいられません」と。

 極めつけがシングルマザーに対する男性関係の苦言だ。

林「最近、子供が被害者になる事件の裏を見ると、母親が男の人を家に入れる、そのために子供の行き場がなくなって、外に出ていたという例が少なくないんですよね。かわいそうだから、もう言うのはよそうね、ということでは、同じような事件がこの先、何度でも起きてしまいますよ。(略)せめて子供が義務教育を終えるまでは我慢して自分のことは後回しにしなくちゃ」
江原「家事育児は放棄、それでいて自分は欲望のままに生きたいなんて、自分に甘すぎますよ」

 シングルマザーに対し、我慢や努力といった精神論まで振りかざしていく。言っておくが彼らが俎上に載せているのは13歳で命を奪われた被害者遺族であり貧困に喘ぐシングルマザーたちだ。

 しかも2人の根底にあるのは「子育ては母親の役目」という強固で旧態依然とした考えだ。彼らの頭の中には子供に対して大きな責任があるはずの父親の存在すらないらしい。

 そして林は母親を批判したいがためか、悪質とも思える事実の捏造さえ行っている。

「そこまで(子育て)の間が、本当につらかったら、生活保護や児童扶養手当などを貰ってもいいじゃないですか。川崎のお母さんは報道によると、もらっていなかったみたいですけど」

 いやいや林センセイ、センセイが長期連載を持つ「週刊文春」の3月5日号では生活保護についてこんな記述が存在しますよ。

「(被害者の)遼太君の母親は西ノ島で看護師の助手として働いていたが、給料は十分ではなく、結局は生活保護を受けるようになったという」

 ようは自分たちが決めつけた親子像のために、現実に起きていることなんて一切無視なのだ。さすがは心霊だの予言だの前世だのと言って人心を惑わすスピリチュアリストと、その信奉者のコンビだけある。

 もっとも、今回、林がしつこくこの問題に言及した動機は、母親問題を語りたいというより、2カ月前、自身に巻き起こった批判に腹が立ったということだろう。対談が進むにつれ、彼女はこんなことを言い出した。

「社会で起きたことを作家なりに分析したり、違うんじゃないかと言ったりすると、即座に叩かれる。(略)みんな叩かれるのが嫌なんです。私のエッセイにしたって、論争が起きたっていいはずですが、紙のメディアでは誰も言わない。私はこの仕事を30年以上やってきて、今ほど言論が抑えられている時代はないと思いますね」

 確かにそれは正論ではあるが、しかし「論争が起きたっていい」と言いながら、一方「叩かれる」と怒りを表明するのは、いかにも作家タブーで守られてきた林らしい物言いでもある。紙のメディアで誰も言わないのは、“大作家”である林への配慮だということを是非お忘れなきようお願いしたい。
(伊勢崎馨)

最終更新:2015.05.19 11:24

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