売春に走る”最貧困シングルマザー”たちはなぜ生活保護を受けないのか!?

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『最貧困シングルマザー』(朝日文庫)

 昨年本サイトで紹介した『最貧困女子』(鈴木大介/幻冬舎新書)は大きな反響を呼んだ。同書は、これまでタブーとされてきた女性の貧困のもっとも深刻な問題に踏み込み、貧困女性たちが行政に頼れずセックスワークに搾取されている背景に、精神障害や知的障害があることを明らかにした。

 そんな『最貧困女子』の著者がシングルマザーをテーマにした『最貧困シングルマザー』(朝日文庫)を刊行した。これは2010年に単行本として出版したものを加筆訂正したものだが、ここに描かれるシングルマザーたちの姿もまた衝撃的なものだ。

 それまで未成年者や少女の貧困をテーマにしてきた著者にとって、子どもに暴力を振るい育児放棄する母親という存在は「敵」ですらあった。しかし出会い系サイトで売春をするシングルマザーを取材することで著者は言葉を失っていく。

「自己選択でシングルマザーとなったのだろうという大上段からの主張は、彼女らの実態を知れば空しく失速する」

 例えば出会い系サイトで男たちからお金をもらうようになって2年弱という中井沙耶子さん(32歳)は、小学2年の娘を持つシングルマザーだ。「毎日募集をかけるが相手を見つけられるのは運がよくて3日に1回ほどだ」という。

 シングルマザーの家庭に育った中井さんは看護師資格を取り、23歳で結婚、娘を出産した。しかし夫の借金や女癖が原因で離婚。そのゴタゴタが一息ついた頃、体調がおかしくなった。

「不眠と同時に、朝起きられなくなった。看護師として「睡眠障害」は致命的な病気だ。勤務中の居眠りを理由に、たちまち病院内で孤立するようになった」

 うつ病だった。辞表を提出し無職になったが、支えてくれた母もその後病に倒れてしまう。病院を辞めて半年後には家賃も払えなくなり、催促の内容証明が届いた。早く病気を治して復帰したい。そう思えば思うほど焦り、体も動かなくなる。容姿も以前とは変わってしまった。

「膨れてしまった顔は、精神科から処方されている薬の副作用だ。リストカットならぬ『ネックカット』の痕跡か、首筋に大きな縫合痕がふたつ。やはり薬の副作用なのかまぶたがよく開かないと言い、話していても眠っているような表情だ」

 そんな彼女がうつの病床で、携帯をいじってたどり着いたのが大手出会い系サイトだった。

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