国際問題・戦争に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
ノーベル平和賞マララが意外とミーハーでかわいい!
『わたしはマララ』(学研マーケティング)
憲法9条の受賞なるかと注目されたノーベル平和賞。パキスタンの17歳の少女マララ・ユスフザイが史上最年少で受賞した。マララは11歳のころから女の子も教育を受ける権利をと訴えてきた。それが原因で2012年15歳のときスクールバスでタリバンに銃撃を受け、瀕死の重傷を負う。その後も屈することなく、すべての子どもが教育を受けられるようにと国連でスピーチするなど、ますます精力的に活動している。
しかしマララに対して「若すぎるのではないか」「将来の重荷になる」「大人が政治利用しているだけ」「背後に欧米の思惑が」「欧米の価値観をイスラム圏に広げる広告塔」など心ない批判もある。祖国パキスタンでは「MalalaDrama(マララ茶番)」という言葉が出回り、彼女の発言も襲撃事件もすべてCIAによる茶番劇だなどという中傷までされている。
『わたしはマララ』(学研パブリッシング/金原瑞人、西田佳子訳)を読むと、彼女の壮絶な体験と、それに負けない聡明さや強さに感銘を覚えるのはもちろんだが、それ以上に印象的なのは、マララの十代の少女らしい素顔の部分だ。
「わたしたち女の子にとって、それは魔法のドアだった。その向こうにあるのはわたしたちだけの特別な世界。弾むように歩きながら、頭に巻いたスカーフを取る。雲を風が吹きはらって太陽が顔を出す、そんな気分で階段を駆けあがると、中庭がある。それを取りかこむように、教室のドアが並んでいる」
タリバンが町を支配するようになってから、学校には看板も立てられず、ただ白い壁にドアがあるだけ。そのドアの向こう側の学校を、マララはこんなふうに語る。
学校には友だちだっている。親友のモニバとは「なんでも隠さず話しあえる。ジャスティン・ビーバーの歌のことも、映画『トワイライト』のことも、色が白くなるフェイスクリームのこと。」ジャスティン・ビーバーに『トワイライト』に、フェイスクリーム……日本のギャルとも大差ない、他愛もない会話を楽しんでいる。
容姿も気になるようだ。
「わたしも母みたいに、白ユリのような肌と、整った顔だちと、緑色の目を持って生まれたかった。でもわたしは父親似で、肌は浅黒い。鼻は団子鼻だし、目も茶色だ。」
「わたしはヘアスタイルを変えるのが趣味になった。バスルームにこもって鏡と向かい合い、映画でみた女優のヘアスタイルをまねていると、時間がどんどんすぎていった。」
自分の容姿に少々コンプレックスをもったり、ヘアスタイルにこだわって何時間もバスルームの鏡とにらめっこし母親に怒られる、いかにも思春期の女の子らしい日常ではないか。
ちなみにマララの母親は「とびきりの美人」で、両親はマララの社会では珍しく恋愛結婚だ。父は読書家で母に詩を書いて送ったが、母はその詩を読むことができなくて、学校に行かなかったことを後悔したという。
そんな両親の影響もあってか、マララは本が大好きな女の子だ。『アンナ・カレーニナ』、ジェイン・オースティンの小説、『アンネの日記』、『ホーキング、宇宙を語る』『ロミオとジュリエット』、『オリヴァー・ツイスト』『オズの魔法使い』……。本を読み、主人公たちの想いを想像し、ときに自分と重ね合わせる。
というと、おカタい優等生のように感じるかもしれないが、けっこうミーハーなところもある。映画や海外ドラマも好きなようで、とくにお気に入りはアメリカのテレビドラマ『アグリー・ベティ』だ。
「歯列矯正の器具をつけていて容姿はいまいちだけど、とてもやさしい女の子の話だ。すごくおもしろかった。わたしもいつかニューヨークに行って、あんなふうに雑誌の出版社で働いてみたい。」
『アグリー・ベティ』を見て、ニューヨークに行ってみたい、出版社で働いてみたい。海外ドラマや海外セレブに憧れる日本の女の子ともたいして変わらない、いたってふつうの感想だ。こういうのを欧米に毒されていると批判する人もいるのかもしれないが、マララは欧米文化をなんでも無批判に享受しているわけでもない。
たとえば、ブリトニー・スピアーズやサカナクションの山口一郎など、世界中のセレブたちが愛読するパウロ・コエーリョのスピリチュアル小説『アルケミスト──夢を旅した少年』を読んだ感想。羊飼いの少年が宝物を探してピラミッドへ旅するというストーリーは気に入ったらしく、繰り返し読んだという。しかし同書の最大のメッセージである「人がなにかを手に入れたいと思ったら、宇宙全体が示し合わせて、その手伝いをしてくれる」というくだりには、
「著者のパウロ・コエーリョはタリバンに出会ったことがないんだと思う。パキスタンの役立たずの政治家たちとも縁がないんだろう。」
とツッコミを入れる。「意識さえ変えれば幸せが手に入る」というアメリカ的な自己啓発思想は、マララの目にはぬるく映るのだろう。
本書を読んでいると、マララも愛読していた『アンネの日記』のアンネ・フランクを思い出す。
ジャスティン・ビーバーがアンネの家を訪れた際に、「アンネは(今の時代に生まれていれば)きっと僕のファンだったね」とゲストブックに綴り、「不謹慎だ」「アンネはそんなコじゃない」と世界中から非難を浴びた。でも、ジャスティン・ビーバーの言う通りだ。アンネは映画スターのブロマイドを壁に貼ったり、安っぽい恋愛小説を愛読するような女の子だ。特別優等生なわけでもない、ふつうの女の子だ。聖なる少女が殺されたわけではない。ごくふつうの女の子の日常を奪ってしまったことが、ユダヤ人虐殺の恐ろしさであり、戦争の恐ろしさだ。
マララはたしかに聡明で勇敢な少女だ。でも、アンネと同じようにマララも、ジャスティン・ビーバーの歌について親友とおしゃべりするような、ふつうの女の子でもある。学校に行きたい。テストで友だちよりいい点を取りたい、新しいことを知りたい、おもしろい物語を読みたい、愛する人に詩を贈りたい。ふつうの女の子がこう願っていることに意味がある。
(酒井まど)
最終更新:2015.01.19 05:01
関連記事
新着 | 芸能・エンタメ | スキャンダル | ビジネス | 社会 | カルチャー | くらし |
公選法違反疑惑浮上の斎藤知事「SNS戦略の企画立案は依頼していない」の言い訳は通用するか? 削除されたPR会社社長の投稿を検証
斎藤知事が百条委員会欠席で「知事会出席」を理由にするも…前の知事時代には政府主催の知事会を欠席しあの時の懇話会に参加
国民民主・玉木雄一郎の不倫に“政治活動中の公私混同”疑惑が浮上! ヤバすぎる差別体質とビジネス右翼ぶりにも懸念の声
松本人志「訴訟取り下げ」でワイドショーが醜悪な忖度! 吉本御用スポーツ紙は「物証なし」だけ強調し復帰を扇動
萩生田光一ら非公認“裏金”候補に自民党から政党助成金2000万円振込み発覚も…選挙情勢では続々当選の可能性
“裏金”“統一教会”の萩生田光一を応援する極右勢力と有名テレビコメンテーター 一方、新たな裏金疑惑を検察が捜査開始の報道も
石破茂が史上最速で馬脚あらわに! 手のひら返し解散、統一教会も裏金も再調査せず、菅・麻生以外の人事も酷い
安倍首相が統一教会に選挙支援依頼の証拠を朝日がスクープ! 進次郎のバックにいる菅義偉や萩生田光一もあらためて追及せよ
高市早苗のヤバさは極右思想だけじゃない! 総務省文書問題、統一教会との関係、政治資金規正法違反をめぐる“大嘘”の数々
傀儡・小泉進次郎が改革できない“キングメーカー菅義偉”の官房機密費疑惑! 不正選挙やメディア対策にも
松本人志「訴訟取り下げ」でワイドショーが醜悪な忖度! 吉本御用スポーツ紙は「物証なし」だけ強調し復帰を扇動
『仰天ニュース』“赤木ファイル”特集で安倍政権・公文書改ざん事件の卑劣があらためて注目! 中居正広も「あってはならない」と
ジャニーズ会見で井ノ原の「ルール守って」発言賞賛と記者批判はありえない! 性加害企業が一方的に作ったルールに従うマスコミの醜悪
ジャニーズ性加害でジュリー社長辞任もテレビ局は検証放棄! 局内での行為が疑われるテレ朝とNHKの無責任な姿勢
ジャニーズ性加害問題で露わになったテレビ局の共犯性! ジュニアの練習場を提供したテレビ朝日はジュリーの謝罪後も批判なし
坂本龍一が最後まで中止を訴えた「神宮外苑森林伐採・再開発」の元凶は森喜朗! 萩生田光一も暗躍、五輪利権にもつながる疑惑
れいわから出馬 水道橋博士が主張する「反スラップ訴訟法」の重要性! 維新・松井だけでなく自民党も批判封じ込めで訴訟乱発
自公維新が提出「国民投票法改正案」にネットで批判の声広がる! 小泉今日子も〈#国民投票法改正案に反対します〉と投稿
三浦瑠麗が「医者はワイドショー見てコロナ怖がりすぎ」と医療従事者を嘲笑! 専門家から反論されると半笑いで「私、医者じゃないんで」
Netflix版『新聞記者』の踏み込みがすごい! 綾野剛が森友問題キーマン官僚に、安倍御用ジャーナリストはあの人が…
公選法違反疑惑浮上の斎藤知事「SNS戦略の企画立案は依頼していない」の言い訳は通用するか? 削除されたPR会社社長の投稿を検証
国民民主・玉木雄一郎の不倫に“政治活動中の公私混同”疑惑が浮上! ヤバすぎる差別体質とビジネス右翼ぶりにも懸念の声
“裏金”“統一教会”の萩生田光一を応援する極右勢力と有名テレビコメンテーター 一方、新たな裏金疑惑を検察が捜査開始の報道も
窮地の岸田首相が一番頼りにしているのはあの「Dappi」“仕掛人”説の自民党・元宿仁事務総長!「日本の黒幕」特集本が暴いた新事実
兵庫・斎藤知事の「パワハラ告発職員」追いつめに維新県議が協力していた! 職員は吉村知事肝いり「阪神優勝パレード」めぐる疑惑も告発
“既成政党に与しない”石丸伸二の選対本部長は「自民党政経塾」塾長代行! 応援団筆頭に統一教会系番組キャスターの元自民党職員も
小池百合子が都幹部だけでなく“最側近”を天下りさせていた!「大日本帝国憲法復活」「国民主権を放棄せよ」の請願に関与の元特別秘書
大阪万博建設現場のメタンガスが急増し1日2tも発生! 3月の爆発事故では「通報遅れ」「天井破損」を隠蔽していたことが発覚
萩生田光一が裏金問題で提出した「領収書の嘘」が発覚! 安倍元首相が「官房機密費100 万円を参院候補者に手渡し」報道も
吉村知事はガス爆発でも開き直り「他区域ではガスが出ない」と大嘘! 地下鉄工事でメタンガス確認、大阪市も発生可能性認めたのに
維新ゴリ押し 万博&カジノにかかる金はインフラ整備を含めると8000億円以上だった! 大半が国と大阪市の負担、巨額の税金も投入
防衛費増額の財源で「法人税」を削除し「国民全体の負担」だけにした政府有識者会議は読売社長、日経元会長、朝日元主筆がメンバー
菅首相の追加経済対策の内訳に唖然! 医療支援や感染対策おざなりでGoToに追加1兆円以上、マイナンバー普及に1300億円
菅首相のコロナ経済支援打ち切りの狙いは中小企業の淘汰! ブレーンの「中小は消えてもらうしかない」発言を現実化
菅首相の追加経済対策が“自助”丸出し! コロナ感染対策は10分の1以下、大半が新自由主義経済政策に…坂上忍も「バランスおかしい」
悪評「マイナポイント」事業の広報費は54億円、1カ月で半分を浪費! 事務局事業も電通がトンネル法人通じて140億円
三浦瑠麗のアマプラCMは削除されたが…amazonもうひとつの気になるCM! 物流センター潜入取材ルポが暴いた実態とは大違い
安倍首相“健康不安”説に乗じて側近と応援団が「147日休んでない」「首相は働きすぎ」…ならば「147日」の中身を検証、これが働きすぎか
正気か? 安倍首相の諮問機関「政府税調」がコロナ対策の財源確保と称し「消費税増税」を検討! 世界各国は減税に舵を切っているのに
東京女子医大がボーナスゼロで400人の看護師が退職希望! コロナで病院経営悪化も安倍政権は対策打たず加藤厚労相は “融資でしのげ”
斎藤知事が百条委員会欠席で「知事会出席」を理由にするも…前の知事時代には政府主催の知事会を欠席しあの時の懇話会に参加
萩生田光一ら非公認“裏金”候補に自民党から政党助成金2000万円振込み発覚も…選挙情勢では続々当選の可能性
安倍首相が統一教会に選挙支援依頼の証拠を朝日がスクープ! 進次郎のバックにいる菅義偉や萩生田光一もあらためて追及せよ
高市早苗のヤバさは極右思想だけじゃない! 総務省文書問題、統一教会との関係、政治資金規正法違反をめぐる“大嘘”の数々
傀儡・小泉進次郎が改革できない“キングメーカー菅義偉”の官房機密費疑惑! 不正選挙やメディア対策にも
兵庫・斎藤知事問題で維新の責任を改めて検証! 局長を“自死”に追い詰めた維新県議、課長の自死は吉村肝煎り優勝パレードが原因か
自民党総裁選広告「THE MATCH」は「おじさん」どころか「腐敗ジジイの詰め合わせ」だ! 担当の平井広報本部長は親族ぐるみ税優遇
岸田首相「総裁選不出馬」にごまかされるな! 後継候補の河野太郎、高市早苗、石破茂、小泉進次郎、小林鷹之の欺瞞
都知事候補討論会ですっとぼけるも…小池百合子に清和会時代、裏金を受け取っていた可能性が浮上! 派閥上納額は安倍を超える120万円
裏金裁判で安倍派幹部たちの嘘が明らかに! 抜け穴だらけの政治資金規正法改悪で幕引き図ろうとする自民・岸田政権
瀬戸内寂聴が生前、語っていた護憲と反戦…「美しい憲法を汚した安倍政権は世界の恥」と語り、ネトウヨから攻撃も
「BTSグラミー賞逃す」報道に「韓国人のニュースいらない」「日本人の受賞を報じろ」と炎上攻撃が! 日本スゴイの精神的鎖国
ぼうごなつこ『100日で崩壊する政権』を読めば、安倍首相が病気で辞任ししたのでなく国民が声をあげ追い詰めたことがよくわかる
百田尚樹が「安倍総理にお疲れ様とメールしても返信なし、知人には返信があったのに」とすねると、2日後に「安倍総理から電話きた」
村上春樹が長編小説『騎士団長殺し』とエッセイ『猫を棄てる』に込めた歴史修正主義との対決姿勢! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
村上春樹がエッセイ『猫を棄てる』を書いたのは歴史修正主義と対決するためだった! 父親の戦中の凄惨な中国人虐殺の記憶を…
安倍首相に利用された星野源がエッセイに書いていた“音楽が政治に利用される危険性” 「X JAPANを使った小泉純一郎のように」
“宇予くん”で改憲煽動のJCと手を組んだTwitter Japanはやっぱり右が大好きだった! 代表は自民党で講演、役員はケントに“いいね”
ウィーン芸術展公認取り消しを会田誠、Chim↑Pomらが批判! あいトリ以降相次ぐ“検閲”はネトウヨ・極右政治家の共犯だ
「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈した日本の“精神的鎖国” 文化も科学もスポーツも「日本スゴイ」に回収
幸福の科学出家騒動は清水富美加個人の責任なのか? カルト宗教信者の子どもたちが抱える問題
話題の本『夫のちんぽが入らない』のタイトルに込められた深い意味…しかし一方では広告掲載拒否の動きが
福島の子ども甲状腺がん検診「縮小」にノーベル賞の益川教授らが怒りの反論! 一方、縮小派のバックには日本財団
介護殺人に追い込まれた家族の壮絶な告白! 施設に預ける費用もなく介護疲れの果てにタオルで最愛の人の首を…
宇多田ヒカル「東京はなんて子育てしにくそう」発言は正しい! 英国と日本で育児への社会的ケアはこんなに違う
今もやまぬ人工透析自己責任論の嘘を改めて指摘! 糖尿病の原因は体質遺伝、そして貧困と労働環境の悪化だった
『最貧困女子』著者が脳機能障害に! 自分が障害をもってわかった生活保護の手続もできない貧困女性の苦しみ
雨宮塔子が「子ども捨てた」バッシングに反論! 日本の異常な母性神話とフランスの自立した親子関係の差が
『NEWS23』に抜擢された雨宮塔子に「離婚した元夫に子供押しつけ」と理不尽バッシング! なぜ母親だけが責任を問われるのか
小島慶子が専業主夫の夫に「あなたは仕事してないから」と口にした過去を懺悔!“男は仕事すべき”価値観の呪縛の強さ
人気記事ランキング
カテゴリ別ランキング
社会
ビジネス
人気連載
アベを倒したい!
ブラ弁は見た!
ニッポン抑圧と腐敗の現場
メディア定点観測
ネット右翼の15年
左巻き書店の「いまこそ左翼入門」
政治からテレビを守れ!
「売れてる本」の取扱説明書
話題のキーワード