東京大空襲の語られない事実…住民に逃げるなと命令、米の空襲司令官に日本が勲章授与

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『東京大空襲~昭和20年3月10日の記録~』(岩波書店)

 東京大空襲から70年ということで、先週は多くの報道を目にした。しかし、「10万人が一夜にして亡くなった」「民間人への無差別爆撃」といった悲劇が強調される一方で、あまり知られていない意外な事実もある。

 昭和17年4月18日の初空襲以来、東京区部では死者が出ているだけで56回もの空襲があった。しかし、クローズアップされるのはやはり、終戦の年である昭和20年3月10日、約10万人の死者を出した「下町大空襲」だろう。実際、後にも先にもこれだけの犠牲者を出した空襲はない。

 だが、下町大空襲は爆弾投下量などにおいて必ずしも最大規模の空爆ではなかった。それ以降にも、さらなる規模の空襲が行われていたことが、戦後のアメリカ側の資料などから明らかになっている。

 昭和20年3月10日の下町大空襲では279機のB29が来襲、1665トンの焼夷弾が現在の台東区、墨田区、江東区などを中心に投下されたという。

 だが、その約1ヶ月後の4月13日に行われた「城南大空襲」は、520機のB29で3646トンの焼夷弾が投下されるという、ほぼ倍近い規模の空襲であった。

 また、5月25日、26日の「山の手大空襲」でも、464機、3258トンという記録が残っており、この4、5月の空襲によって、東京の区部はほぼ焼け野原になった。

 にもかかわらず、これらの空襲の死者は合わせても約7300人。東京大空襲全体の犠牲者の実に9割以上は、下町大空襲に集中しているのである。

 空襲の規模に比例しない被害者の実数。これはいったいどういうことなのか。一般的には3月10日が冬型の気圧配置で強風が吹いて大火災になったことや、木造家屋の密集した下町地区、しかも川が多く避難が難しかったといった地理的な状況が被害の拡大を招いたと言われている。

 しかし、東京大空襲の記録運動の第一人者である作家・早乙女勝元氏は、『東京大空襲~昭和20年3月10日の記録~』(岩波書店)の中で、その原因として当時の警視庁の防空体制を指摘しているのだ。

〈3月10日までは、バケツリレーに火たたきなどで「備えあれば憂いなし」と息まいていたものが、その「備え」の非現実性があきらかにされ、なまじわが家を守ろうとぐずぐずしていると、かえって、そのために大量の死者を出すことになると反省したのだろう。警視庁は「防空体制」の方針をきりかえた〉

 “火たたき”とは、長い竹竿の先に縄の束を取り付けただけの道具。当時は火元をそれで叩いて火を消せば大丈夫、という何とも呑気な消火方法が指導されていた。もちろん、そんなものでは焼夷弾のナパーム剤を鎮火させることなどできない。

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