地上波初放送 映画『Fukushima50』の事実歪曲とミスリード 門田隆将の原作よりひどい事故責任スリカエ、東電批判の甘さの理由

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菅直人は必死だっただけじゃない、東京電力に乗り込み、「撤退」を阻止した功績

 そういう意味では、「菅に必死さがあった」と言ったのはたんに真摯だった、必死で頑張ったというエモーショナルな評価の話だけではない。菅の行動は、原発事故の最悪の事態阻止という「結果」にも一定程度、寄与していた。『Fukushima50』ではなぜか歪曲されている「東電本社乗り込み、撤退阻止」もその事例だ。

 1号機に続いて3号機も爆発、事態がいよいよ逼迫してきた4日目の3月14日午前3時ごろ。官邸のソファで仮眠をとっていた菅氏は秘書官に起こされる。海江田経産相をはじめ、枝野官房長官、福山哲郎官房副長官、細野豪志首相補佐官、寺田学首相補佐官、斑目委員長ら主だったメンバーが集まっており、海江田が「東電が原発事故現場からの撤退を申し入れてきています。どうしましょうか。原発は非常に厳しい状況です」と切り出した。言外に撤退やむなしとの考えをにじませていた。海江田、枝野、福山らに対して東電側から再三にわたる電話要請が繰り返されていた。だが、海江田の言葉に菅は即座にブチ切れた。

「おまえら何を考えているんだ。撤退などありえないだろう。撤退したら、どうなるかわかってるのか。全部やられるぞ。燃料プールだってあるんだ。福島、東北だけじゃない。東日本全体がやられるんだ。わかってるのか」。そして、「いまから俺が東電に行く」と言い放った。

 菅はまず清水正孝東電社長を官邸に呼びつけ、「撤退はありえない」と宣告した。次いで、東電社内に自らを本部長とする統合対策本部を設置し、1時間後、菅は自ら東電本社に乗り込んだ。寺田補佐官の手記によれば、そのとき菅は別の官邸スタッフに「もし、東電の職員が逃げ出し、原子炉が最悪の事態になったら、俺がもう一度現地に行く。ヘリの準備を頼む」と命じていたという。

 東電の対策本部に着いた菅は、居並ぶ幹部社員を前にぶちまけた。「撤退したら日本はどうなる。東日本は終わりだ」「自国の原発事故を自ら放棄したら、日本は国として成り立たない。そんな国は他国に侵略されるぞ」「カネはいくらかかってもかまわない。社長も会長も覚悟を決めてくれ」「60歳を超える職員はみんな現地へ行けばいい。俺も行く」「撤退したら、東電は必ずつぶれる。逃げられないんだ」……。自らの著書では落ち着いた口調で語ったように書かれているが、寺田補佐官の手記によれば、激昂し、ほとんど怒鳴るように話したという。

 周知のように、福島原発事故が最終的に、吉田所長が覚悟した“東日本壊滅”という事態にならなかったのは、4号機の建屋が爆発したことで2号機のどこかに穴が空き、圧力が低下するという「幸運」によるものが大きい。しかし、それ以前に、もし東電本店が撤退を決めて、吉田所長もその撤退命令に従っていたとしたら、いくら幸運が重なったとしても、原子炉は制御不能に陥り、東日本壊滅は避けられなかった。

 そう考えると、菅が必死で東電の撤退を怒鳴り上げて阻止したことが、最悪の事態を止めるひとつの要因になったことは紛れもない事実なのだ。実際、菅の原発対応について、国内報道は批判一色だったが、海外のメディアのなかには、当時から評価する報道も少なくなかった。イギリスのガーディアン、ドイツのZDF、イギリスのBBCが制作した福島原発事故のドキュメンタリでも、菅の対応は一定の評価をされている。

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