地上波初放送 映画『Fukushima50』の事実歪曲とミスリード 門田隆将の原作よりひどい事故責任スリカエ、東電批判の甘さの理由

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

「菅直人が海水注入中断」デマを拡散したのは安倍首相、裁判所も事実ではないと認定

 いかがだろうか。こうして両者を比べてみると、冒頭で「菅の原発事故対応のほうがはるかにまともだった」と指摘した理由がわかってもらえたはずだ。事故発生当初から不眠不休で動き、必死さゆえに混乱を招きながらも、一応は最悪の東日本壊滅という事態を回避した菅直人、一方、危機意識のないまままともな対策をやらず会食ざんまい、感染を広げたあげく、いきなり政治目的で効果が疑問視される場当たり対応を連発し、いまだ正確な感染者数すら把握できない状況を放置している安倍晋三。コロナ感染拡大のほうはまだこれからどうなるかわからないが、現時点でも、差は歴然だろう。

 だが、国民の評価は残念ながら、この差をまったく反映していない。菅直人の原発事故対応については、当時はもちろん、いまも「悪夢」と批判し、「原発事故があそこまでひどくなったのは菅直人が元凶」などと考えている国民は少なくない。一方、コロナ対応がこんなに不誠実で失態続きでも、安倍内閣の支持率はたいして低下していない。

 それは、安倍首相が菅直人になかった能力をひとつだけもっているからだろう。その能力とはメディアコントロールと情報操作の巧みさだ。

 安倍首相がコロナ問題で2回しか会見を開いていないことを前述したが、これは確信犯的な作戦でもある。安倍首相はこれまでも、台風や洪水などの自然災害や、政権にマイナスな国際情勢、事件が起きると、とたんに国民の前に姿を見せなくなるということを繰り返してきた。そして、華やかな外交や自分の得点になる政策発表のときだけ、自分がしゃしゃり出て会見を開き、国民にアピールする。こういう狡猾なやり口で、安倍政権は支持低下を最大限におさえ、自分の失態を隠してきたのだ。

 しかも、安倍首相は問題や不正が発覚すると、平気で問題をすり替え、責任を転嫁し、フェイクをふりまく。とくに得意なのが、野党や民主党政権、批判報道に責任転嫁するやり口だ。

 実は、菅直人の原発事故対応が実体以上に激しい批判にさらされているのも、安倍首相が野党時代、安倍応援団メディアとともに撒き散らした責任転嫁のためのフェイクニュースの影響が大きい。

 もともと原発事故は自民党政権の原発政策が最大の要因であり、なかでも、安倍首相は第一次政権で、福島第一原発の冷却機能喪失の危険性や予備電源の不備を指摘されながら、それを無視していた(記事リンクhttps://lite-ra.com/2020/03/post-5303.html)。

 ところが、安倍首相はそうした責任論を封じ込めるために、原発事故後の5月20日、メルマガで「菅首相が3月12日、海水注入を中止するよう命令したため、作業が遅れ、被害が拡大した」と嘘の情報をメルマガに書き込んだ。そして、翌21日の読売新聞と産経新聞がこれを後追い。大々的に報道したのである。

 しかし、菅は同日19時55分に逆に海水注入を指示しており「海水注入中断」は東電本店で指揮に当たっていた武黒一郎フェローが勝手に現場に伝えたものだった(また現場では19時4分にはすでに海水注入を開始しており、吉田所長の判断で本店からの中断指示を無視し注入を継続していた)。菅はこの安倍のメルマガが名誉毀損だとして損害賠償請求に民事訴訟を起こしている。判決では「野党の政権批判だから名誉毀損に当たらない」と損害賠償は認められなかったが、事実関係については、安倍の間違いだったことが認められ、安倍は裁判の途中で該当記事を削除している。

 しかし、こうした裁判の認定を知っている国民はほとんどおらず、安倍のフェイクによって、菅直人こそ、原発事故の元凶だというイメージが完全に定着してしまった。そして、歴代自民党政権の原発政策の問題や第一次政権での安倍の直接責任はどこかへかき消されてしまったのである。

 まさに卑劣と言うしかないが、しかし、こうした状況はすでに新型コロナ対応でも起きている。安倍政権は、初動対応の遅れと検査受けたくても受けられないという批判を封じ込めるために、内閣官房や厚労省がSNSで『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)などのメディアを名指しして、報道内容を否定。裏でも、メディアに「煽るな」圧力をかけ始めた。実際は、フェイクをふりまいているのは、メディアの側ではなく、政府機関のほうだったことも明らかになったが、しかし、この1週間で風向きはガラリと変わり、「検査は不要」「政府の方針は間違っていなかった」という論調がどんどん大きくなっている。このままいけば、いつのまにか「安倍首相はよくやった」などという話にする変わる可能性さえ出てきた。

 菅直人は、震災・原発対応に一応のメドがついた2011年8月終わりに「(原発事故については)総理としての力不足、準備不足を痛感した」と振り返り、政府混乱の責任を一身に引き受けて9月はじめに退陣しているが、安倍首相のほうは東京五輪が来年に延期になってもまだ、「五輪をやり遂げるのが私の責任だ」などと言って、首相の座に座っているかもしれない。

最終更新:2021.03.12 09:31

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

地上波初放送 映画『Fukushima50』の事実歪曲とミスリード 門田隆将の原作よりひどい事故責任スリカエ、東電批判の甘さの理由のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。Fukushima50佐藤浩市安倍晋三渡辺謙福島原発事故糸井重里編集部菅直人門田隆将の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 森友再調査問われ河野、岸田が呆れた忖度発言! 高市は桜で大嘘
2 総裁選に騙されるな、政府のコロナ対策の酷さは全く変わってない! 
3 安倍晋三が「統一教会」イベントでトランプと演説!同性婚や夫婦別姓を攻撃
4 八代の共産党攻撃の根拠「公安調査庁」がまるで共産党PRの“失笑”報告書
5 葵つかさが「松潤とは終わった」と
6 山口敬之の逮捕をツブした中村格の警察庁長官就任に広がる抗議!
7 高市推薦、自民党ヒトラー本が怖すぎ
8 安倍が支援、高市早苗が「さもしい顔して貰えるもの貰う国民ばかり」
9 高市早苗にネトウヨが総結集、「天照大神の再来」とバカ騒ぎ、膳場貴子を攻撃
10 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
11 岡田斗司夫“ゲス”の秘密が著書に!
12 安倍晋三の総裁選支配に今井尚哉、北村滋の二大側近がまたぞろ暗躍か!
13 八代英輝弁護士が「共産党は党綱領に暴力的革命」とデマ、維新の政治家も丸乗り!
14 統一教会が安倍トランプ会談を仕掛けた
15 DHCテレビが敗訴判決!辛淑玉が語る「犬笛によるヘイト」と判決 
16 自民党政権が「一般病床削減」を継続、看護師5万人削減の計画も
17 堀江、竹中だけじゃない 菅首相に「がんばった」と同情論寄せる世論
18 山口敬之逮捕を握り潰した“官邸の忠犬”中村格が警察庁ナンバー2に!
19 「政治のせいで命失う」正論を口にした野々村真が炎上させた自民党応援団!
20 松尾スズキが“加トちゃん化”?
1安倍晋三が「統一教会」イベントでトランプと演説!同性婚や夫婦別姓を攻撃
2八代英輝弁護士が「共産党は党綱領に暴力的革命」とデマ、維新の政治家も丸乗り!
3八代の共産党攻撃の根拠「公安調査庁」がまるで共産党PRの“失笑”報告書
4高市早苗にネトウヨが総結集、「天照大神の再来」とバカ騒ぎ、膳場貴子を攻撃
5山口敬之の逮捕をツブした中村格の警察庁長官就任に広がる抗議!
6総裁選に騙されるな、政府のコロナ対策の酷さは全く変わってない! 
7河野太郎がワクチンを総裁選に利用!はじめしゃちょー相手にデマも
8堀江、竹中だけじゃない 菅首相に「がんばった」と同情論寄せる世論
9「政治のせいで命失う」正論を口にした野々村真が炎上させた自民党応援団!
10河野太郎が会見で露骨な安倍忖度!森友再調査の質問に答えずワクチンで大嘘
11安倍晋三の総裁選支配に今井尚哉、北村滋の二大側近がまたぞろ暗躍か!
12自民党政権が「一般病床削減」を継続、看護師5万人削減の計画も
13 森友再調査問われ河野、岸田が呆れた忖度発言! 高市は桜で大嘘
14DHCテレビが敗訴判決!辛淑玉が語る「犬笛によるヘイト」と判決 

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄