高畑勲監督の死に宮崎駿監督は…鈴木敏夫Pは「宮崎駿はただひとりの観客、高畑勲を意識して映画を作っている」と

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 こうした宮崎の過剰な“高畑ラブ”の様子は、2013年に公開されたスタジオジブリのドキュメント映画『夢と狂気の王国』でも存分に映し出されている。あるときは高畑を賞賛し、あるときは「パクさん(高畑のニックネーム)は性格破綻者」と罵る。──監督のナレーションによれば「宮崎さんは一日に一度は必ずパクさんの話を口にし続けていた」というほどだ。実際、宮崎はあるインタビューで「宮崎さんは夢を見るんですか?」という問いに、「見ますよ。でもぼくの夢はひとつしかない、いつも登場人物は高畑さんです」と答えていたことを鈴木は著書で披露している。一途というよりも愛のかたちが強迫的すぎて、そろそろ恐ろしくなってくる話だ。

 そもそも、ふたりの出会いはいまから約50年前、宮崎が1963年に東映動画に入社したことに始まる。59年に入社していた先輩の高畑は宮崎の才能に着目し、『太陽の王子 ホルスの大冒険』(68年公開)を皮切りに、東映動画退社後もタッグを組んで『パンダコパンダ』や『ルパン三世』『アルプスの少女ハイジ』『母をたずねて三千里』といった名作アニメ映画・テレビシリーズを手がけていく。だが、演出・高畑、作画・宮崎というコンビ関係が長く続いたことが、宮崎の監督としての才能を遅れ咲きにさせたのではないか、という見方もある。宮崎が本格的に演出を手がけたのは『未来少年コナン』だが、このときすでに宮崎は37歳だったからだ。

 しかし、宮崎はこうした意見に、真っ向から反論している。

「ある人に言われたことがあるんですよ。高畑さんに会わなければ、宮崎さんはもっといろんな仕事をされたんでしょうねって。「え?」って言ったんだけどその意味がわからなかった。でもずっとあとになって意味がわかりましたけど、何をばかなこと言ってるんだってやっぱり思いますね。だって僕自身もアニメーターであることに全然不満がなかったですから。そういう形での自我の発露とか、自己顕示欲とか、個性の発揮とか、そういうレベルで仕事を考えてたら、もっとつまんないものしかできなかったと思うんですね」(キネマ旬報「宮崎駿、高畑勲とスタジオジブリのアニメーションたち」より引用)

 宮崎はよく『アルプスの少女ハイジ』のすばらしさを語るが、たしかに『ハイジ』には高畑、宮崎作品の基本となるものが詰まっている。演出を手がけた高畑との共同作業のなかで、宮崎がその後の宮崎アニメの土台となる大事なものを吸収し、高畑との相乗効果で才能を発揮させていった。若い日々の強烈な体験は歳を経ても色あせないというが、だからこそ宮崎にとって高畑は、永遠の先輩であり、ライバルであり、全青春を捧げた愛する人なのだろう。そして、それは宮崎の片想いではない。高畑は宮崎の著書『出発点 1979〜1996』(スタジオジブリ)に、こんなメッセージを寄せている。

〈宮崎駿はすごい働き者である。彼によれば、わたしは「大ナマケモノの子孫」らしい。枝にしがみつきたがるわたしの三ツ指を、よってたかってひきはがしてくれたありがたい仲間は多いけれど、なかでも宮さんは特別である。第一に彼自身の猛烈な労働と惜しみない才能の提供によって。第二にそれが生み出すおそるべき緊張感と迫力によって。わたしの怠け心を叱咤し、うしろめたさをかき立て、仕事に追い込み、乏しい能力以上のなにかを絞り出せたのは、宮崎駿という存在だった。とくに若いころの彼の献身的で無私の仕事振りに日々接することがなかったならば、わたしはもっと中途半端で妥協的な仕事しかしなかったにちがいない〉(「エロスの火花」96年)

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルマンガ・アニメビジネス社会カルチャーくらし教養

高畑勲監督の死に宮崎駿監督は…鈴木敏夫Pは「宮崎駿はただひとりの観客、高畑勲を意識して映画を作っている」とのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。スタジオジブリ大方 草宮崎駿火垂るの墓鈴木敏夫高畑勲の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 大坂なおみの母親が日本で受けた結婚めぐる人種差別
2 BTSと秋元康のコラボ中止で浮き彫りになった日本のガラパゴスぶり
3 加藤浩次が五輪批判に「外野がウダウダ言うな」
4 神社本庁の田中総長が辞意、原因は不動産不正取引疑惑
5 3選安倍首相の秋葉原街宣で参加者に謎の茶封筒が…
6 八代弁護士とせいじが消費税で「たかだか2%」の暴論
7 『女が嫌いな女』アンケートの噓を暴く
8 安倍首相が秋葉原街宣で動員以外の一般市民を排除
9 “がん放置”近藤誠医師が宗教化?
10 あの香川も!サッカー選手のヘア処理
11 安倍首相が圧力問題で自分の嘘をバラし犯人を示唆
12 沖縄県知事選で佐喜真陣営が予算をエサに建設業者を動員
13 炎上!「ViVi」“プロ彼女”特集 
14 モテたいオヤジのドン引き言動集
15 男尊女卑・女性差別事件総まくり
16 高齢処女が抱える「モテない理由」
17 街角に立って客をとる女性たちの貴重な記録
18 有働由美子を勇気づけた山口智子の言葉
19 セクハラ告発者叩きを生む男尊女卑
20 女流官能小説家が業界の偏見を暴露
1安倍首相が秋葉原街宣で動員以外の一般市民を排除
23選安倍首相の秋葉原街宣で参加者に謎の茶封筒が…
3大坂なおみの母親が日本で受けた結婚めぐる人種差別
4「新潮45」でLGBT攻撃!小川榮太郎と安倍の関係
5沖縄県知事選で佐喜真陣営が予算をエサに建設業者を動員
6 「新潮45」杉田水脈擁護に安倍応援団揃い踏み
7 八代弁護士とせいじが消費税で「たかだか2%」の暴論
8安倍チル議員から圧力受けた『ちびまる子ちゃん』映画
9 BTSと秋元康のコラボ中止で浮き彫りになった日本のガラパゴスぶり
10 秋元康のガールズバンド計画が大炎上
11神社本庁の田中総長が辞意、原因は不動産不正取引疑惑
12安倍首相が圧力問題で自分の嘘をバラし犯人を示唆
13加藤浩次が五輪批判に「外野がウダウダ言うな」
14樹木希林が辺野古に現れた日
15安倍首が総裁選討論会で嘘と逆ギレ連発
16安倍首相が総裁選でトンデモ発言継続中
17沖縄知事選で安倍自民党の佐喜真淳候補
18安室奈美恵のラストライブをめぐり自民党が
19沖縄県知事選で創価学会幹部が暗躍
20安倍政権が「賃金データ」を恣意的操作

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄