リリー・フランキー、大林宣彦が語る『野火』と戦争映画…「『永遠の0』みたいな戦争賛美の映画をつくることは犯罪」

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 こういった映画界の変化をもたらした世の中の変化を塚本監督はこう語る。

「そのとき戦争を描こうと思ったのは、どうもその頃になると「時局によっては、戦争もやむなし」みたいな発言が公の場でぽつぽつ出てきたからなんですね。人間の本能として「戦争がしたい」と思う人たちがいても、そのころまでは戦争を体の痛みとしてハッキリ知ってらっしゃる戦争体験者の方たちが抑止力となっていた。ところが、その方たちがだんだんと亡くなり始めて、それを見計らって「いまなら言えるんじゃない?」みたいな雰囲気が漂い始めた」

 本稿冒頭で松江監督や大林監督が指摘している、映画における「戦争の美化」は、こういった風潮に呼応して起こった現象なのは間違いない。

 結果として『野火』は、リリー・フランキーや中村達也といった印象的な俳優で脇を固めながらも、塚本監督自身が主演を務めるかたちで製作された。当初の予定とは変わってしまったことに塚本監督は悔しい思いをしたそうだが、それでも映画の製作を急ぐことに決めた。それは、いま、『野火』のような映画をつくることが不謹慎であるかのような世の中に一石を投じなければ取り返しのつかないことになると思ったからだった。

 戦争を怖いものだと認識することすらできない状況に対し、フィクションが人々に戦争の恐怖を疑似体験させることの意味を塚本監督はこう語る。

「自分も最近、創作はドキュメンタリーよりリアルに感じることもあるんだなと実感しています。戦争体験者がだんだんいなくなって、それを今後はどう伝えていくのか? という課題でもあるのですが、体験者の話を聞くと昔話のように感じてしまうこともありますよね。でも映画でこうして生々しく表現すると、まさにこういう感じだったのかな?と思うところがあります」
「悪いトラウマは戦争へ行って感じてしまうもので、良いトラウマはこういう表現で味わうこと。僕でいうと「はだしのゲン」や、それこそ小説の「野火」が良いトラウマになってます。そのおかげで、いろいろ戦争のことを考えたり、こういう映画を作ることができました。やはり、良いトラウマを受けることが大事だと思います」

 周知の通り、「戦争のできる国」づくりに邁進する政権のもと、メディアは萎縮。戦争は恐ろしく二度と繰り返してはいけないものだと大っぴらに主張することすら、だいぶ「攻めた」表現と受け止められる世の中となりつつある。塚本監督のようにタブーを怖れない表現者がひとりでも多くあらわれることを切に願う。
(新田 樹)

最終更新:2016.08.11 05:04

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