本当はもっとドロドロだった!『花子とアン』花子の不倫略奪婚

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NHK連続テレビ小説『花子とアン』NHKオンライン


 放送開始から14週連続で視聴率21%を突破するなど、相変わらず絶好調な朝ドラ『花子とアン』。勢いに乗っている一因は、なんといっても吉高由里子演じる花子が妻帯者である村岡英治(鈴木亮平)を好きになってしまうという“不倫の恋”が描かれていたことも大きいだろう。そして、本日放送分(第16週〜)では、花子の実家に英治とふたりで帰郷。明日には結婚式まで行ってしまう。そう、長い朝ドラ史上でも初の“不倫略奪婚”が進行しているのだ。

 しかし、朝ドラといえば、主婦層や年配の視聴者も多い枠。さすがに天下のNHKで不倫を肯定的に描くわけにはいかなかったのか、苦肉の策的展開も多く見られた。たとえば、花子が英治に告白してから、彼がじつはすでに結婚していることを知る……というのは“潔白”を強調するために必要な流れだったとしても、英治の妻が病気で死ぬ前に「新しい人と一緒に生きていってほしい」と言い残したというのは、さすがにテレビの前でツッコんだ視聴者も多かったはずだ。

 もちろん、現実の世界はそんなに都合よく話は進まない。『花子とアン』の原案となった『アンのゆりかご 村岡花子の生涯』(村岡恵理/新潮社)の記述を追えばわかるが、実際の花子と英治の恋愛は、朝ドラというより昼ドラといってもいいほどにドロドロだったのだ。

 そもそもドラマでは、花子は英治が妻帯者と知ってからは距離を置いていたが、本書によると、英治のモデルになった村岡儆三と花子は、なんと出会って2ヵ月弱で初キッス! さらには半年の間で約70通ものラブレターを送り合っており、距離を縮めまくっている。もちろん、このラブレターの中身は強烈で、花子から儆三宛に送った手紙には、

「あなたが私を愛して下さること、私があなたをこんなに好きなこと、それを思うと、その愛で何もかもを解決していけると信じることができます」
「私はあなたのもの」

 などと書いてあり、恋愛特有のお花畑思考が露わに。また、「愛で何もかもを解決」と、ふたりの恋愛には障害があることをうかがわせているように、実際の花子は相手が既婚者と知りながらも交際していたのだ。

 こうした“不倫節”は随所に見られる。たとえば、ある日、花子がきれいな百合の花をもらったときには、儆三にも「差し上げたい」と思うのだが、「あなたがお花を持ってお帰りになったら、周りの方々が妙にお思いになりはしないかと考えて、御遠慮して仕舞ひます」と書き綴っている。

 ……遠慮するなら相手にわざわざ手紙でいうなよ!と思うが、これこそがリアル花子の恋愛テクニック。「必ず一緒になれるからと思つて、愛したのではありません」と意地を張りつつも、「人の前ではいつでも笑って居た私は、あなたに御めに懸つてから、あなたの前で泣くことをおぼえて仕舞ひました」などと、かよわさをアッピールするのだ。これは現代でもよく見られる不倫略奪の常套手段ではないか。

 こんな手を使われた日には相手も怯んでしまうのでは……と思ってしまうが、じつは儆三、花子以上に恋愛体質だったようで、「往来を歩いている丸髷の若き人妻を見れば、我が愛する者にもこの扮装をさせる日も近き日にあるのだと思ふと足も踊らずには居りません」と、浮き足だった手紙を花子宛に送付。しかも、出会ってから4ヵ月後、「籍の事が片付いた」あとの手紙は、まさしく“ヘブン状態”だ。

「今の苦しみなどは私の傍に来れば直ぐに忘れる位に私はあなたを可愛がります」
「私の胸に抱かれて泣くのであるならばつらい涙も嬉し涙に変らせて見せると云ふ自信が私にはあります」
「あなたを見ると可愛くなってkissをせずには居られない。帰り際のkiss……」

 まるで詩人にでもなったかのような多幸感と万能感に満ちた文章。「あの、病気の奥さんは……」と声をかけるのも躊躇われるほどに、まわりが見えていないことが手に取るようにわかる。

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