本当はもっとドロドロだった!『花子とアン』花子の不倫略奪婚

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 そしてふたりは、この手紙の1ヵ月後、初めて出会ってから6ヵ月、初めて言葉を交わしてから5ヵ月で、遠野なぎこもびっくりのスピード略奪婚を果たしている。一瞬の情熱に身を任せたはいいが、その後の結婚生活は大丈夫か……?と不安になる向きもあるかもしれないが、心配ご無用。結婚十数年経ったころ出張先の花子に宛てた儆三の手紙には、「可愛い花子を抱寝する夜も日一日と近くなる。腕は一杯も抱きたく、唇は堅いキス……あとは文にするを憚る」と、イラっとするほどのアツアツぶりを見せつけてくれている。これなら浮気はもちろんセックスレスの心配もなさそうだ。

 ともあれ、ドラマで描かれたような死別に近い形でもなければ、妻のほうから離婚を切り出したわけでもない。「儆三は病める妻と別れて花子といっしょになりたい、と切望」し、花子と結婚するために離婚したのである。しかも、実際の儆三には妻との間に小さな息子までいたのだが、ふたりは結婚の喜びで「その陰にひとりの女性と小さな男の子の悲哀があることを、忘れ去ってしまうほど」だった。……もし、この展開を朝ドラで描いていれば、抗議の電話が殺到していたことだろう。

 じつは、朝ドラにおけるこうした“事実のマイルド化”は、今回が初めてではない。尾野真千子が主演した『カーネーション』(2011年下半期放送)でも、ヒロイン・糸子の不倫同棲を描いた際は賛否両論の大きな話題となったが、このときもモデルとなった小篠綾子の実際の不倫に比べれば、かなり控えめに改変。というのも、ドラマでは、不倫関係にあった綾野剛演じる周防と糸子は短い期間で別れてしまったが、現実の小篠は20年以上も男性と同棲生活を送り、娘たちからも「おっちゃん」と呼ばれ父親同然に慕われていたというのだ。──『花子とアン』しかり、やはりNHKの朝ドラで不倫を描くのは、これくらいが今のところ限界なのだろうか。

 さて、ドラマでは花子と英治の結婚も決まり、ふたりの恋は一段落だが、『花子とアン』を盛り上げるもう一つの恋愛・仲間由紀恵演じる蓮子様と龍一青年の恋もまた大きく動き出しそうな気配だ。こちらは、リアル花子も比ではない大スキャンダル“白蓮事件”がモデルだけに、果たして朝ドラがどのように描くか。まだまだ『花子とアン』から目を離せない朝が続く。
(島原らん)

最終更新:2014.08.14 07:56

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