500円で身体を売る61歳の女性も…今も街角に立ち客をとる女性たちの人生とは? 消えゆく街娼の貴重な証言録

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 このような豪快な逸話は他の人のインタビューにも出てくる。広島の46歳の女性もまた「億は使うとるじゃろ」と語る。彼女が大金を使ったのは、「男」だった。ヤクザ者との恋の多かった彼女はこう語る。

「男に使わず、貯めようと思って貯めるじゃろ。でも、また男に惚れて全部使う。六番目の男は知りおうて、三日目に百万ぽんとあげた。“借金がある”って言うから、“返しんさい。ナンボあるの?”“百万じゃ”“ええよ”って。そのあともどれだけ突っ込んだか」

 まさに映画のようである。街に立つ女性たちはこんなにもたくましく豪快なのであった。

 しかし、それもかつての話。性風俗産業の変化や、風営法改正などによる繁華街の衰退、日本全体の不景気などの要因が絡み合い、つらく悲しい思いをしている街娼も多くいる。別府に立つ61歳の女性は、基本は客引きをしつつも、自分でも客もとっており、身体を売るその額がわずか500円であることから地元では「500円おばあちゃん」と呼ばれていた。彼女には家がない。客がつかなかった日は公園で寝泊まりしていると言う。そんな彼女は地元の住人からこんな扱いまで受けていた。

「たまに暴走族が来て、髪の毛を引っ張られたり、蹴られたりする。二、三カ月前にも女に木刀で殴られて、民家に逃げた。昔は置屋が金を払っているヤクザがポン引きさんを守ってくれとったですよ。ポン引きはヤクザにお金は払わん。置屋がまとめて払う。そういう人がおったら、暴走族も来ないし、来ても逃げたですよ」

 本当にひどい話である。しかしそんな思いをしてまで、なぜ彼女は街に立ち続けるのか。お金を稼がなくては生きていけないから。それはもちろんある。ただ、それだけではない。

 地域にもよるが、街娼に新規の客というのはあまりいない。ほとんどは馴染みの客である。その馴染みの客との人間関係が、彼女たちにとってある種の救いとなっている側面もあるのだ。

「楽しかった思い出と言えば、お客さんと飲みに行ってカラオケしたりな、今でも時々お酒につき合うだけでお金をくれる人もおるしな。“あんたは、今日は験がついたんか、ついてないんだったら、コーヒーでもなんでも奢ろうか”ってな」

 札幌で街娼をしている50代の女性も同じことを言っている。ここで交わされているのもまた、セックスだけのやり取りではない。

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闇の女たち: 消えゆく日本人街娼の記録 (新潮文庫)

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