欲棒、肉芽、秘口、彼の分身…官能小説は「性器」をどう言い換えてきたのか。背後にあった検察の表現規制

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
kannnousyousetsu_160522.jpg
『官能小説の奥義』KADOKAWA


 ろくでなし子による女性器をかたどったアート作品騒動、大阪府堺市の一部コンビニが始めた成人雑誌の店頭閲覧制限、児童ポルノ単純所持の罰則化、春画掲載による「週刊文春」編集長休養処分──ここ最近のものをまとめただけでも、これだけ「性」と「表現」をめぐっての騒動が頻発している。

 性表現に対し日に日に締め付けが厳しくなる昨今だが、官能小説研究家の第一人者である永田守弘氏は、そういった規制によってこそ官能小説は独特の進化を遂げたのだと語っている。

〈活字による官能表現が、ほとんど解禁になるのは1980年代になってからである。それまで作家たちは、摘発の網にかからないように、しかも、どれだけ読者を淫靡な世界に引き込むかに苦心し、修練によって独特の文体や表現をつくり出してきた。
 現在は、淫猥という視点からの摘発はされないが、その修練は絶えることなく受け継がれて、作家たちは官能表現の力量を競っている。豊潤な官能表現は、皮肉に見れば、検察と作家の共同作業によって生み出されてきた、といえなくもない〉(『官能小説の奥義』KADOKAWA)

 現在、性的な表現により規制を受けるのはもっぱらコミックやアダルトビデオだが、それ以前に対象となっていたのは活字による表現であった。たとえば、48年には永井荷風の作とされる『四畳半襖の下張』が摘発され、荷風も警察から事情聴取を受けている。また、50年に伊藤整による翻訳で小山書店から出版されたD・H・ロレンス『チャタレイ夫人の恋人』は、作中に登場する性行為の描写などからわいせつ文書であるとされ裁判に。表現の自由をめぐって最高裁まで争われたが、結果は有罪であった。

 このような前例から、性器の名称を露骨に書くのではなく何かに例えるなどの、官能小説ならではとされる婉曲表現が発達した。いまとなっては、「ペニス」など性器の名称そのものを書いても何の問題もないが、敢えて違う言葉に置き換え、その言い回しによりいかに淫靡な雰囲気を演出できるかというのが、官能小説作家の腕の見せどころとなった。

 前掲『官能小説の奥義』では、どんな言い換え表現があるのか、具体的な作品を引用しつつ紹介されている。

 まずは女性器の言い換えから。多いのが、花や果実などの植物にたとえる手法だ。

〈勇造の眼前に、佐都美の女の花が咲いた。清楚な花だった。色素の薄いピンク色の花びらが、ぴったりと口を閉じている〉(草凪優『おさな妻』双葉社)
〈中指で掘りおこされた蕾は、これまた珍しいくらい大きくて、固くて、ふくらんでいた。その固く尖った蕾を中指でリズミカルに押すうち、大粒の枝豆が莢からはじけるように、実はとがってきた〉(南里征典『新宿欲望探偵』光文社)

 このような植物にたとえる表現について永田氏は〈植物派表現の特徴は、ほとんどが女性器を見る目がやさしいことだろう。きれいで可愛いものとして捉えている。ぎらぎらしたところが少ない〉と解説している。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

官能小説の奥義 (角川ソフィア文庫)

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

欲棒、肉芽、秘口、彼の分身…官能小説は「性器」をどう言い換えてきたのか。背後にあった検察の表現規制のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。田中 教の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 参院選の極右候補者をチェック「ウヨミシュラン」比例代表編
2 宮迫引退報道の一方、NEWS手越の“金塊写真”はなぜスルー?
3 山本太郎と久米宏が安倍政権、原発タブー、杉田水脈を斬る!
4 葵つかさが「松潤とは終わった」と
5 元家族会の蓮池透が「安倍は嘘つき」
6 安倍首相が「忖度発言」候補を大応援!
7 「安倍やめろ」のヤジを警察が「選挙妨害」拡大解釈で取締り!
8 秋篠宮家の料理番がブラック告発
9 グッディ!土田マジギレ真の原因
10 松尾貴史「日本を壊しているのは安倍さん」
11 『モーニングショー』「緊急事態」を特集で羽鳥が田崎をツッコミ
12 くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
13 安倍昭恵が和田政宗をトンデモ応援演説!公選法違反の呼びかけ
14 『この世界の片隅に』ドラマ版と映画版の間で軋轢か
15 吉本が芸人に強要する共同確認書にSNS制限
16 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
17 マツコ「安倍首相は馬鹿」にネトウヨが
18 東山紀之が“反ヘイト本”を出版
19 ジャニー喜多川社長の性的虐待問題を一切報じないマスコミ
20 松尾貴史が語るテレビで芸人が権力批判できない理由
1安倍首相と省庁幹部の面談記録が一切作成されなくなった!
2くりぃむ上田晋也が“政権批判NG”に敢然と反論
3金融庁報告書で厚労省年金局課長の驚愕無責任発言
4産経新聞コラムが「引きこもりは自衛隊に入隊させて鍛え直せ」
5安倍首相が「老後2000万円」追及に逆ギレ!
6菅官房長官が望月衣塑子記者への“質問妨害”を復活
7金融庁「年金下がるから資産運用」報告書で麻生太郎が開き直り!
8F35捜索打ち切りと大量購入続行でNHKが「背景に政治性」と報道
9金融庁炎上の裏で安倍政権が「年金」の“不都合な事実”を隠蔽!
10防衛省イージス・アショア失態 、玉川徹が原因を喝破!
11長谷川豊が部落差別発言「謝罪文は馬場幹事長が作った」
12講談社「ViVi」の自民党広告は公選法違反か!
13映画『主戦場』上映中止要求の右派論客に監督が徹底反論!
14渡辺謙が語った『ゴジラ』出演と震災、原発、戦争
15マンガ『スシローと不愉快な仲間たち』第1話
16田崎史郎「65歳から年金もらってます」
17川崎殺傷事件「不良品」発言こそ松本人志の本質だ!
18 香港市民はデモの力示したが、日本は…
19松本人志が「不良品」発言問題で謝罪も説明もなし!
20農水元次官子ども殺害正当化は、橋下徹、竹田恒泰、坂上忍も

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄