小泉今日子はなぜ「劣化」しないのか? 「変化する力」「プロデューサー目線」を育んだ母親との歪な愛のかたち

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 ただ、これは周囲の大人に「媚びる」という態度とはまったく異なる。提案されたことには全力で応えるが、それが自分に合わないと思えばそのアイデアは躊躇することなく捨ててしまう。周囲の思惑に合わせ正統派アイドル路線の聖子ちゃんカットでデビューした彼女が、自らショートカットへのイメチェンを申し出たのは有名な話だが、このエピソードなどはそれを端的に示している。彼女が常に考えていたのは、あくまで「周囲の大人」ではなく「お客さん」の目だった。助川氏はこう綴る。

〈小泉今日子の目線は、「周囲」や「みなさん」に向けられています。自分の属するチームの中で演じるべき役割を果たし、客を喜ばせる。仕事をしているときの彼女は、常にそこを意識しているようです。読売新聞の読書委員も「出来の悪い原稿だったら没にすること」を条件に引き受けたと聞いています。(中略)「文章書き」としても、「読者を喜ばせること」を常に意識しているのです〉

 彼女がそのように客観的な「お客さま目線」「プロデューサー目線」を得ることができたのは何故なのか? 助川氏はエッセイ集『原宿百景』(スイッチパブリッシング)の以下の文章を引き、三人姉妹の末っ子として生まれた彼女と母親との少しばかり歪な関係がその「目線」を彼女に与えたのではないかと考察する。

〈ユミさんは優しいお母さんだったけれど、友達のお母さん達と比べるとお母さんっぽくない人だったかもしれない。(中略)幼い日の私の写真を見ると、たいがい超ミニスカートを穿いている。これもユミさんのセンスで、「キョウコの足はキレイなカタチしているから」と、親バカ発言しながら、もともとミニスカートなのに、さらに裾あげされてパンツが見えないギリギリの丈にされていたのである。髪型もそうだ。小学生なのにパーマをかけさせられたり、モンチッチみたいな超ショートカットにされたり。私はいつも、ユミさんの動く着せ替え人形のように遊ばれていた〉

 ここまでは、まあよくある親子関係の話ではある。しかし、こうして母の要望をすべて受け入れていくうちに、いつしか二人の関係はおかしなものになっていく。

〈私が最初に憧れた女性はユミさんだったと思う。母親というより大人の女性として素敵だと思っていた。でも、いつの日からか私がユミさんのお母さんみたいになっちゃった。
 十七歳の時だったと思う。原宿のマンションにユミさんが泊まりに来ていた。キッチンで洗い物をしながら私はユミさんの愚痴を聞いていた。ユミさんは自分の感情に素直な人だから、よく泣いたり笑ったりする。私はいつも黙って聞いてあげる。そうすると「あんたは私のお母ちゃんみたいだね。お母ちゃんは割と大柄な人だったから姿は全然似てないんだけど、なにかがすごく似てるのよ」って、ユミさんが言う〉(前掲『原宿百景』)

「子どもが母親の母親になる」。母の言うことを受け入れ続けた結果、こんな歪な関係になったのだが、その結果、彼女は自伝『パンダのan・an』(マガジンハウス)でこんな言葉を綴るに至る。

〈私は、ある意味で自分の事を諦めたのだ。それまでは、宙に浮かんで、頭の上の方から客観的に自分を見ていた。幽体離脱した人が、自分の肉体を見ている様な感じ。上から見ていると周りはよく見えるけれど、自分の中身がよく見えない。心の中の痛みなんか見えないからほっぽっておいた〉

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