「女子アナは売女!」小島慶子の女子アナ小説が生々しすぎる! 男性Pは女衒と暴露も

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 しかし、それはマツコも指摘しているように、「男性優位社会」という世界のなかの話だ。そして、小島は本作でもこの点を強調する。

 たとえば、女子アナになれず記者という道からディレクターに進む望美は〈男の領域は排他的で独善的な互助会なのだ〉と言い、〈私はそれに媚びて甘い汁を吸う女なんかじゃない。正当に評価されたいのだ〉と、男性社会のなかでうまく立ち回る女子アナたちを腐すが、そのあと小島は〈自分がそうやって無意識に男に権威づけをしていることに望美は気付いていない〉と書く。そう、小器用で物わかりのいいふりをして男に取り入る女を女は嫌うが、それ自体が〈理想化した男への信仰〉であり、女の〈女嫌いの源〉になっているのだ、と。

 そう考えると、なぜ田中みな実が世の女たちから嫌われ、水卜麻美が気に入られるのかがわかるような気がしてくる。ぶりっこという古典的な技法を駆使する田中が嫌われる理由はいわずもがなだが、水卜の人気は、大口で肉にかぶりついたり、女子アナの標準からは少し過体重に見える(もちろん、あくまで女子アナの標準でしかない)点など、“男ウケを捨てている”ところにあるのだろう。でも、それだっていままでの“女子アナ基準”が厳しすぎただけで、男たちにとっては別段、ミトちゃんが女を捨てているようには見えないはずだ。そして、水卜は別に女子アナの枠を逸脱してはいない。あくまで謙虚だし、食レポ以外はじつに女子アナらしい振る舞いを心がけている。

 逆にいえば、小島ほど女子アナという枠を逸脱した女はいなかった。今年2月、「週刊朝日」(朝日新聞出版)で林真理子と対談した際に小島は、

「アイドル女子アナとか、お嫁さんにしたい人気女子アナとかにすごく憧れてたんですけど、そういう路線で需要がなかったので、敗北感にまみれていたんです」

 と語っている。アイドルアナになれなかった敗北感……それが今回の小説を彼女に書かせたのかもしれないが、女子アナ時代の彼女は敗北感というよりやさぐれ感のほうが際立っていた。たとえば、彼女がまだTBSに在籍中、深夜に『デジ@缶』という女子アナが出演するロケ番組があり、そのレギュラーを務めていたのだが、ほかの女子アナはきゃいきゃいと騒いでも小島だけはムッツリ。毎週、じつに不機嫌な様子で、青木裕子や出水麻衣がそれらしく食レポをして「おいしーい!」と言っても、小島だけは絶対に大袈裟なリアクションをとらなかった。いまにして思えば小島はそれほどに、小説にも描いた“女子アナコスプレ”に嫌気がさしていたのだろう。

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