THE MANZAIウーマン村本が凄かったのはタブーの政治ネタだけじゃない、漫才全体で「平等とは何か」を訴え!

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ウーマンラッシュアワーが出演した12月9日放送『THE MANZAI2018』(フジテレビ)

 ウーマンラッシュアワーの村本大輔が、またやってくれた。昨晩放送された『THE MANZAI』(フジテレビ)のことだ。

 村本の話題については本サイトでも何度も取り上げてきたが、自身のTwitterをはじめ、『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日)『AbemaPrime』(AbemaTV)などで政権への批判をおこなってはネトウヨや右派論客から一斉攻撃を受け、しかし、それでも屈することなく発言しつづけている芸人だ。

 そして、昨年の『THE MANZAI』では、原発や沖縄米軍基地問題など怒涛の政治批判を自らの高速マシンガントークに乗せて繰り出し、見事に漫才に昇華してみせて大きな話題となった(詳しくは過去記事参照→「ウーマンラッシュアワーが『THE MANZAI』で怒涛の政治批判連発! 原発、沖縄基地問題、コメンテーター芸人への皮肉も」)。

 しかし、今年は昨年のネタよりも一段ハイレベルなものへと進化させており、ただ一言、すごかった。

すでにさまざまなメディアで話題となっているが、あらためて、ウーマンラッシュアワーの漫才を紹介しよう。

村本はまずいきなり、「最近ねえ、芸人がですねえ、けっこう政治とか、社会問題とかね、けっこう発言する芸人が多い」「たいして勉強もしない芸人がね、社会問題とか政治について語るやんか」と日頃自らに向けられる批判を自虐のように切り出し、「社会問題とか政治について語る芸人のこと、どう思う?」と相方の中川パラダイスに問いかける。

中川「いや、そうなんですよ。芸人は社会問題なんて、一切触れなくていいんですよ! ほっといたらいいんですよ!」

 すると、村本は「でも僕はね、社会で起きてる問題を無視したくはないなって思うんですよ」「今世界中ではいろんな問題があって、たくさんの人たちが涙を流しています。僕はお笑い芸人という立場で、誰も邪魔できない漫才で、そういう問題に触れていけたらなって、僕は思うんです」と宣言。「社会問題なんてほっとけばいいと言いました。関係ないと言いました。真っ先に、目先の笑い、目先の好感度、目先の金のためならば、平気で立場の弱い人たちを無視できる最低な芸人」と自分への批判の反論、さらには空気ばかり読んでいる多くの芸人たちを皮肉るような切り返しをみせ、漫才の中に「社会問題」をどんどん打ち込んでいったのだ。

 とくに凄まじかったのは、ネタの終盤「生産性とは何でしょうか」と、杉田水脈衆院議員の“生産性”発言を意識した問いかけをおこなってからだ。村本は息もつかせぬ電光石火の“独演”を展開する。

「子どもをいっぱいつくることでしょうか。いっぱい働いて経済を回すことでしょうか。僕は違うと思う。お互いがお互いの居場所を生産し合う。居場所をつくることだと僕は思うんですね」

 村本は「この社会は本当に不寛容」だと言い、ここから超高速のマシンガントークがはじまる。

「たとえばLGBTの人たちが、自分たちがゲイだとかレズだとか言うときにカミングアウトという言葉を使うんですね。自分が自分だと普通のことを言うのにカミングアウトという言葉を使わせてる、この社会こそが僕は普通じゃないと思うんですね」

「たとえば、沖縄に、日本にある米軍基地の約70%以上が集約されています。そしてまた辺野古というところに新しくつくられようとしている。そして石垣島のほうにもですね、自衛隊の基地がつくられようとしている。沖縄の海って誰のもんですか? 日本のものなのか、アメリカのものなのか。僕は違うと思う。沖縄県民のものなんですよ。だからこそ、いまこそ沖縄県民の怒りの声に耳を傾けるべきだと僕は思うんですね」

「シリアのジャーナリストの安田さんという方が英雄だとか自己責任だとか言われてますけど、いまこそシリアの悲惨な状況に僕は目を傾けるべきだと僕は思うんですよ」

「BTSが、原爆のTシャツを着てて、いろいろありましたけど、被爆者の気持ちを考えろって言うんであれば、いまこそ被爆者の方々の声に耳を傾けるべきだと僕は思う」

「『日本は平和だから、そんな社会的なこと言わなくていい』って言う人がたまにいる。僕は平和じゃないと思う。平和なところしか見ない人ばっかりの話で、平和じゃないとこたくさんある。ニュースになってないだけで、被災地はまだまだ大変で、朝鮮学校の生徒さんは無償化を求めて一生懸命、寒いときにビラ配りとかやってるわけ

「電気を当たり前に使うけども、原発の危険性については考えず、原発の危険性について考えるけど、原発がなくなった後の地域の経済については考えない」

「水道が民営化になる。政治家は簡単に通す。でも国民はそれに対して無関心。みんな見たくないものを見たくないだけで、本当に見るべきものがたくさん僕はあると思うんですね」

LGBT差別、沖縄基地問題、朝鮮学校無償化問題までをお笑い番組で取り上げた村本

 性的マイノリティをめぐる差別、基地問題で沖縄の民意を無視する政府、安田純平氏に自己責任を叫ぶ一方で目が向けられないシリア情勢、BTSの原爆Tシャツ問題を槍玉に挙げながら被爆者を蔑ろにする政府や極右たち、朝鮮学校の授業料無償化が不当に認められない現状、水道民営化法案をゴリ押す安倍政権と無関心な国民──。時間にして約2分間、「弱者の声を聴け」という村本の叫びが炸裂したのである。

 この「ド正論」は、普段、日本の報道・情報番組が無視したり、政権からの圧力に晒されることを恐れ、追及することを放棄している問題ばかりだ。なかでも朝鮮学校無償化問題はネトウヨたちからもっとも攻撃のターゲットにされる話題。こうした問題を、ゴールデンタイムのお笑い番組で「漫才」として、村本は視聴者に剛速球で放り込んだのだ。

 この真っ向勝負に、ネット上では〈芸能人がテレビで突っ込まない日本の異常なところかなり突っ込んでてすごく感動した…圧力に負けないその根性、心からリスペクトです…〉〈しょうもないことで笑うのもいいけど、村本さんがやっている漫才は日本中の芸人集めても彼にしかできない〉などと称賛の声があがった。さらに、玉城デニー・沖縄県知事も〈磨いて、晒して、発した語力。中身も、表現も、プロの実力〉と賛辞を送った。

 実際、今回の漫才がすごかったのは、テレビが報じない・追及しない問題をネタとして取り込んだというだけではない。特筆すべきは、漫才全体が強者の権益保護と弱者排除をどんどん強めているいまの日本社会と新自由主義的価値観への批評になっており、しかも、それがお笑いとして成立していたということだ。

「平等とは何か?」と問いかけたウーマンラッシュアワーの漫才

今回のネタは冒頭から「平等とは何か?」という問いかけから始まっていた。

 上述のように村本から「世界がどうなろうとも、なんとも思わない最低の芸人」と責められた中川は「自分だって世界のことをちゃんと考えてる」と主張。ふたりはこんな問答を始める。

村本「じゃあ、お前は世界中がどうなったらいいと思う?」
中川「世界中が平和になったらええと思ってるわ」
村本「平和とはなんや?」
中川「平等や」
村本「平等かあ。じゃあウーマンラッシュアワー、平等か?」
中川「ウーマンラッシュアワーは平等や」
村本「ギャラ、平等か?」
中川「ギャラ? そら、半分半分やないか、平等やろ」
村本「じゃあ、しゃべってる割合は?」
中川「割合? いや、まあまあ、そっちのほうが多いけど」
村本 「俺のほうが多いなあ。じゃあ、わかった。ネタ作ってるのは、どっちや?」
中川「いや、そっちが作ってるよ!」
村本「ということは、この平等、この平和というのは、俺の犠牲のもとに成り立ってる平和ということやな」
中川「犠牲?」
村本「じゃあ、わかりました、みなさん、すべてが平等なんだったら、ギャラが平等だったら、幸せも半々じゃないとおかしいですね」

 そして、昨年のクリスマスを中川が妻子と幸せに過ごす一方、村本は独身で彼女もおらず深夜まで中学生とTwitterで喧嘩していたと不満をぶちまける……。一方がたくさんしゃべってネタも作っているのに、ギャラが折半。“生産性の高い”村本と“生産性の低い”中川が同じ報酬なのは、平等とは言えないのではないか。コンビの不仲や解散の原因にもありがちな“コンビ間格差あるある”ネタだ。

 ここで普通に考えられるツッコミは、「能力」や「結果」に応じた報酬を受け取るべき、というものだろう。「能力」がなく「結果」を出せない者が報酬を得るのは不当なこと、「弱者優遇」「マイノリティ特権」だと攻撃する。こうした思想は、弱肉強食体質の芸能界はもちろん、現在の日本社会である種の「正義」と受け止められている。しかし、村本の漫才はまったく違った展開をみせる。弱肉強食とは真逆の、“持ちつ持たれつ”を強調するのだ。

漫才の構造そのもので、新自由主義価値観を否定してみせたウーマン村本

 たとえば、村本はSNSで子どもたちから悪口を言われると切り出し、“子どもたちが村本の悪口を言う→それをネタにしてお金を稼ぐ→村本が納めた税金が教育費に使われる→その教育費で子どもたちが学校に行って悪口を憶えてくる→村本の悪口を言う→ネタにしてお金を稼ぐ”というループを高速で何度も繰り返し、最後に「結局すべて持ちつ持たれつ、ありがとう〜!」と叫ぶ。

 さらに、相方の中川に対しても「こいつは私がつくったネタで稼いだ金で、私よりも豪華なごはんを家族と食べ……」と文句を言いはじめ、「私が喋れば喋るほど、彼の家族がどんどん幸せになり、幸せになればなるほど家族の幸せの格差がどんどんどんどん広がり、格差がどんどんどんどん広がると俺のストレスがどんどんどんどん溜まっていき」と訴える。しかし、村本は「ストレスが溜まったらここで爆発して漫才にして、お客さんが笑って、笑いでお客さんとつながることができる」「俺に居場所をつくってくれてありがとう〜!」と叫び、中川の手を握った。

 もちろん、これはただの中川いじりではない。「能力の低い者、働きが少ない者が高い者と同等の報酬を手にすることは不平等だ」「生産性の低い者に税金を投入するのはおかしい」といった現在の日本では広く共有されている新自由主義的価値観に対して、べつの捉え方があることを提示してみせたのだ。

 しかも、村本のこの考え方は漫才の構造そのものにも反映されていた。今回のネタでは、相方の中川が口にするのは合いの手レベルで、後半の怒涛の政治批判トークにいたっては合いの手の言葉すら発せず、約2分間、ほぼ村本の独演状態だった。そのため、ネット上では、このネタに対して「これは漫才ではない」「たんに村本が言いたいことを言っているだけ」などと批判の声も起こっている。

 しかし、これは明らかに的外れな批判だ。村本にとって、今回のネタを昨年と同じように、中川との掛け合いのフォーマットでつくることはけっして難しくなかったはずだ。中川もそれを演じることはできただろう。しかし、村本はあえてそうせず、批判を承知で中川に一切しゃべらせないまま、一人で政治批判トークを展開したのである。

 それはまさに、このテーマをお笑い、漫才として成立させるためだった。この漫才は、村本の独演会状態のあと、村本が「この漫才は僕ひとりでもできるということ!」と締めくくると、中川が「いや〜! ちょっと待って〜! いやいやちょっと全然うれしくないですよ、その拍手は。全然テンション上がらんわ、それ〜」とツッコむかたちで終わった。つまり、中川がほとんど何もしていなかったように見えて、最後、中川がいることで、このパフォーマンスは社会批判の独演でなく漫才、お笑いになった。この社会に「不要なもの」などいないことを村本は、漫才の構造そのものを使ってメタ的に表現してみせたのである。

政権批判を繰り返すウーマン村本を排除するメディアの弱腰

 村本は今回のネタをこのような一言で締めくくり、さらに視聴者を挑発した。

「漫才師だから、最後は笑いにしましたけど、笑ってごまかすなよ」

 たしかに、かつての村本は、一般人が芸能人を批判することを「劣等感」「妬み」と批判したり、“ゲスキャラ”として女性蔑視的な発言をすることもあった。だが、今回のネタでは、いま日本で起きている数々の問題の背後に共通してあるのが「弱者の排除」であることを喝破し、「弱者が優遇されている」という言説や、BTSのTシャツ問題のようなたんなる差別や弱者叩きを社会的正義にすり替える言説に惑わされることなく、本当に虐げられている者は誰なのかを見抜き、その声に耳を傾けろと主張した。──芸としても同じフォーマットの繰り返しでなく新しさを追求し、政治や社会問題に対する認識も深化させた。見事というほかないだろう。

 しかし、残念でならないのは、これだけ進化している村本をテレビで観る機会がほとんどなくなっていることだ。これは、彼の芸人としての面白さの問題ではなく、怯むことなく繰り出す政権批判が敬遠されていることは明らかだろう。

 だが、それでも、彼らが漫才に覚悟をもっていることはよくわかった。最近では、沖縄基地問題をめぐって百田尚樹と議論になった際、Twitterを撤退すると示唆していた村本だが、(詳しくは  「ウーマン村本にデマを指摘された百田尚樹が逆ギレして被害者面! 自分のデマごまかし名誉毀損と恫喝する卑劣」  「百田尚樹が「安倍総理が名誉毀損裁判で噂の真相を廃刊に追い込んだ」とデマ…ならば公開しよう、安倍vs噂真裁判の全容」の記事を参照)、その後Twitterも復活し、お笑いとしても社会問題を追求していくことを止める気はまったくないという姿勢が今回、あらためて示されたからだ。今後も本サイトは村本のこうした世間を掻き乱す、闘う「漫才」を応援していきたい。

最終更新:2018.12.10 10:10

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