THE MANZAIウーマン村本が凄かったのはタブーの政治ネタだけじゃない、漫才全体で「平等とは何か」を訴え!

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漫才の構造そのもので、新自由主義価値観を否定してみせたウーマン村本

 たとえば、村本はSNSで子どもたちから悪口を言われると切り出し、“子どもたちが村本の悪口を言う→それをネタにしてお金を稼ぐ→村本が納めた税金が教育費に使われる→その教育費で子どもたちが学校に行って悪口を憶えてくる→村本の悪口を言う→ネタにしてお金を稼ぐ”というループを高速で何度も繰り返し、最後に「結局すべて持ちつ持たれつ、ありがとう〜!」と叫ぶ。

 さらに、相方の中川に対しても「こいつは私がつくったネタで稼いだ金で、私よりも豪華なごはんを家族と食べ……」と文句を言いはじめ、「私が喋れば喋るほど、彼の家族がどんどん幸せになり、幸せになればなるほど家族の幸せの格差がどんどんどんどん広がり、格差がどんどんどんどん広がると俺のストレスがどんどんどんどん溜まっていき」と訴える。しかし、村本は「ストレスが溜まったらここで爆発して漫才にして、お客さんが笑って、笑いでお客さんとつながることができる」「俺に居場所をつくってくれてありがとう〜!」と叫び、中川の手を握った。

 もちろん、これはただの中川いじりではない。「能力の低い者、働きが少ない者が高い者と同等の報酬を手にすることは不平等だ」「生産性の低い者に税金を投入するのはおかしい」といった現在の日本では広く共有されている新自由主義的価値観に対して、べつの捉え方があることを提示してみせたのだ。

 しかも、村本のこの考え方は漫才の構造そのものにも反映されていた。今回のネタでは、相方の中川が口にするのは合いの手レベルで、後半の怒涛の政治批判トークにいたっては合いの手の言葉すら発せず、約2分間、ほぼ村本の独演状態だった。そのため、ネット上では、このネタに対して「これは漫才ではない」「たんに村本が言いたいことを言っているだけ」などと批判の声も起こっている。

 しかし、これは明らかに的外れな批判だ。村本にとって、今回のネタを昨年と同じように、中川との掛け合いのフォーマットでつくることはけっして難しくなかったはずだ。中川もそれを演じることはできただろう。しかし、村本はあえてそうせず、批判を承知で中川に一切しゃべらせないまま、一人で政治批判トークを展開したのである。

 それはまさに、このテーマをお笑い、漫才として成立させるためだった。この漫才は、村本の独演会状態のあと、村本が「この漫才は僕ひとりでもできるということ!」と締めくくると、中川が「いや〜! ちょっと待って〜! いやいやちょっと全然うれしくないですよ、その拍手は。全然テンション上がらんわ、それ〜」とツッコむかたちで終わった。つまり、中川がほとんど何もしていなかったように見えて、最後、中川がいることで、このパフォーマンスは社会批判の独演でなく漫才、お笑いになった。この社会に「不要なもの」などいないことを村本は、漫才の構造そのものを使ってメタ的に表現してみせたのである。

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