「月9詐欺で国民騙す」発言も…『デート』の脚本家・古沢良太はクドカンより野心家?

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フジテレビ『デート〜恋とはどんなものかしら〜』公式サイトより

 人気シリーズ『DOCTORS3』(テレビ朝日系)と、『家政婦のミタ』の遊川和彦が脚本を手がける『○○妻』(日本テレビ系)が視聴率の頂上決戦を繰り広げている、今期のテレビドラマ。だが、もっとも話題を集めているのは、杏と長谷川博己が主演の月9『デート〜恋とはどんなものかしら〜』(フジテレビ系)だろう。

『デート』は、完璧な合理主義者ですべてを数値化する理系女子の依子(杏)と、働きもせず親の脛をかじって文学&サブカル趣味を謳歌する文系ニート、自称「高等遊民」の巧(長谷川)のふたりが繰り広げるラブコメディ。初回こそ今期トップの14.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を叩きだしたが、その後は3位に転落。それでも、「恋愛なんてクソの役にも立たない」「結婚とは有益な共同生活を送るための契約」などという醒めた恋愛・結婚観に共感する視聴者が続出。ネット上での評価も高い。

 まるでこれまで月9作品が築き上げた“恋愛至上主義”的価値観を覆すかのような展開。だが、じつはこれは狙ったものではないらしい。脚本を担当し、“ポスト・クドカン”の呼び声も高い古沢良太氏は、脚本執筆の裏側をこう明かす。

「実は月9とは知らず、2話分書いた後に知らされたという……だから今回の目標は、月9詐欺で全国民を騙すことです(笑)」(「エンタミクス」3月号/KADOKAWA)

 第2話といえば、ネット上も大いに沸いたプロポーズシーンが登場した回だ。母親の病気によって今後の生活に不安を抱いたニートの巧が新たな寄生先として国家公務員の依子に結婚を申し込むため、広末涼子の「大スキ!」に合わせて派手にフラッシュモブを決めるのだが、逆に依子からは働く意義について説教を喰らう結果に。だが、キレた巧は大演説をぶち、「善とは、家畜の群れのような人間と去就を同じうする道にすぎない! By 森・鴎・外!」と自己正当化をこころみる。……デートスポットである横浜のロマンティックな夜景をバックにしながら、恋愛の甘やかさなど皆無。全力で過去の月9的恋愛観を否定しにかかったようなシーンだったが、古沢氏が「月9とは知らなかった」からこそ生まれた名シーンだったのかもしれない。

 古沢氏といえば、一躍その名を世に知らしめたのが『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)での脚本だ。堺雅人が拝金主義の悪徳弁護士・古美門研介を演じ、社会通念上の正義をかき乱す新しいアンチヒーローをつくりあげたが、その圧倒的な台詞量とテンポのよさも話題になった。そういう意味でも『デート』は『リーガル・ハイ』の恋愛互換ドラマといえそうだ。

 また、古沢氏の代表作といえるのは、『ゴンゾウ 伝説の刑事』(テレビ朝日系)。脚本参加していた『相棒』チームから「新しいことをやろう」と打診を受けて始まった作品だが、第27回向田邦子賞を受賞するなど高い評価を獲得。その魅力のひとつにスピード感が挙げられるが、ここにも古沢氏独特の脚本術がある。それは、「退屈なシーン」を飛ばしていくという手法だ。

「僕がつまんないと思うシーンは、飛躍がないシーンです。前のシーンと次のシーンで、話があまり進んでなかったり、進んでいてもその一歩が小さかったりすると、つまんないなと思う。階段で言うと、2段飛ばしや3段飛ばしくらいで進んでいきたいんですよ。飛ばし過ぎて、前のシーンで言ったことと逆のことを次のシーンで言ってるくらいのほうが面白いと思う」(『ゼロからの脚本術』古沢氏インタビューより/誠文堂新光社)

『デート』でも、主人公ふたりのデート当日から時間を遡っていく方法をとっているが、『ゴンゾウ』において時間軸を無視した構成は『LOST』や『新世紀エヴァンゲリオン』から影響を受けたという。が、そのことで「脱落した視聴者」が多かったことも事実。そのことを古沢氏は「『カタルシスがない』と本当に怒った人もいました。狙ってやったこととはいえ、わかってもらえないのはやっぱり悲しい(笑)」(前出)と振り返っている。

 さらに、古沢氏の特徴は、オリジナルシナリオのほか原作モノの脚本にも定評がある点だ。たとえば、大ヒットとなった映画『ALWAYS三丁目の夕日』や『探偵はBARにいる』『寄生獣』、原作を大胆にアレンジした『外事警察』(NHK)、ゴールデンタイムで2.16%という記録的な低視聴率を記録したもののコアなファンを生んで映画化までされた『鈴木先生』(テレビ東京系)なども古沢氏の手によるもの。いずれも原作ファンを納得させただけでなく「原作越え」と評されることも多いが、その秘訣とは一体何なのか。

 まず、脚本を書くときに古沢氏が考えるというのは、「商業的に成功するかどうか」。そこで重要になってくるのが「今」という視点と「普遍性」だという。そして、もうひとつ重要な点に、今までにない「新しさ」と「社会への影響」を挙げる。

「僕は映画でもドラマでも、『この作品で世の中が変わるかもしれない』と思いながら作ってるんです。『これで世の中変えてやる』『政治では変えられないようなことを、僕たちは変えられるんだ!』と思ってやっている。だから『この作品で、もっと社会に明るくなってほしい』というふうにも考えるんです。結果そうなることはまずありませんが、そういう気持ちから、燃えることもあります」(前出)

 なかなか気骨が感じられる力強い言葉だが、たしかに『デート』も、恋愛への関心が薄くなりつつある今という現代性を反映させながら、世間から理解されづらい主人公ふたりに、妙な共感を生み出している。これもひとつの“社会変革”なのかもしれない。

 ちなみに、長谷川博己演じる巧は、「鼻持ちならなかった学生時代の僕がいいそうなセリフ、面倒くさい感じは投影されているかも」(「エンタミクス」3月号)とのこと。現在、「高等遊民」は密かな流行語になりつつあるが、今後、古沢氏によってどんな新しい恋愛像が描き出されるのか、注目してみてほしい。
(サニーうどん)

最終更新:2017.12.13 09:28

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