近代文学はダメ男だらけ! ここ100年でもっともトホホな男は誰だ?

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『まるでダメ男じゃん! 「トホホ男子」で読む、百年ちょっとの名作23選』(筑摩書房)

 男性の皆様には悲しいお知らせだが、女子会の9割はダメ男のネタや笑い話で構成されている。一人の女子が彼氏のダメエピソードを披露すると、「うわ、そいつ最悪」「ないわ~」「そんなダメ男とは別れなよ!」と次々と飛び交う毒矢の嵐。同情や憐憫のトーンはしっかり滲ませつつも、そんなときの女子って表情がすごくイキイキしてたりする。

『まるでダメ男じゃん!』(豊崎由美/筑摩書房)は、おカタい文学作品をそういうガールズトーク的視点で楽しもうと言う一冊だ。“「トホホ男子」で読む、百年ちょっとの名作23選”というサブタイトルが表しているように、本書は古今東西の傑作小説から、ありとあらゆる種類のダメ男を引っ張り出した、いわばダメ男の見本図鑑。そのなかから独断と偏見でよりすぐったダメ男ベスト5(ワースト?)をここで発表しよう。「いるいるこんな男!」と思わず膝を打ちたくなる彼らのダメっぷり、とくとご覧あれ。


★第5位 ケツの青い甘ったれババコン 『坊っちゃん』夏目漱石

 主人公は愛媛・松山に数学教師として赴任した23歳の江戸っ子青年。無鉄砲で直情型な彼が、同僚の気取ったインテリやその腰巾着たちに反旗を翻すというお話だが、この彼がまあ自己チューなお子ちゃまでひどい。使用人の老婆・清(きよ)にどっぷり依存したマザコンならぬババコン男で、清に借りた金は返さないのに、清からの頼みは無視、そのわりに面白くないことが起きるたび「こんなとき清がいれば」とぼやく始末。生徒のイタズラ、同僚の言動、下宿の造りにまで、とにかく世間にいつもブーブー文句を言っている甘ったれたガキだ。


★第4位 凡庸ゆえに愛されなかった寝取られ男 『ボヴァリー夫人』フローベール

 恋愛中毒な人妻が不倫に溺れた挙句、多額の借金を抱えて自殺するロマンス小説『ボヴァリー夫人』。フランス文学史に残るこの名作、軽薄に浮気しまくるボヴァリー夫人も大概イタい女だが、本書で“ダメ男”ぶりにスポットが当てられるのは夫のシャルルだ。凡庸、愚鈍、無趣味。女心に疎く、妻と浮気相手を接近させるきっかけを作る、要するにバカがつくほどのお人好し男。いつの時代もどんな国でも、「いい人なんだけど、一緒にいても退屈なんだよね~」と女たちが口を揃えて見限ってしまうタイプの地味系ダメ男。

★第3位 コンプレックスをこじらせた中二病男 『トニオ・クレーゲル』トーマス・マン

「感受性の強い自意識過剰な青年が、あーでもないこーでもないと、ぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅ、いつまでも思い悩む小説」(本書より)。ドイツ人商人の父と南国生まれのイタリア人母との間に生まれたトニオくんが、金髪碧眼のゲルマン民族=マジョリティへのコンプレックスをネチネチネチネチ発酵させていく姿は、まさに中二病炸裂。三十路過ぎても自分の悩みだけで頭がいっぱいなこじらせ系ダメ男トニオ、わりあい美形なだけに惜しい!


★第2位 キモメンからサイコまでダメ男見本市 『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー

 好色でデブでキモメンの父親、金と女にだらしない長男、頭でっかちでプライドが高い次男、純真バカで乙女な三男。さらにはこの三兄弟と異母兄弟疑惑がある陰湿なサイコ男。世界文学の巨人ドストエフスキーが残した大長編は、実はバラエティ豊かなダメ男の見本市。どこまで読み進めても誰とも付き合いたくないのがすごい。ここに登場するダメ男たちに比べたら、あなたの周囲のダメ男たちなんて可愛いもんかも?


★第1位 野心と卑屈と妄執が同居する最強ドリーマー男 『グレート・ギャツビー』フィッツジェラルド

 レオナルド・ディカプリオ主演でド派手に映画化された記憶も新しい『グレート・ギャツビー』は、言ってしまえばダメ男の野望一代記。貧しい出自から成り上がり、かつて愛した女性デイジーを取り戻すため、ダーティーな商売に手を染めて大金持ちになったギャツビー。それもこれも「愛のため」と言えば聞こえはいいが、実際のところギャツビーが執着したのは生身のデイジーではなく、自分が憧れ続けた世界の象徴としてのデイジーだ。信じたいことだけを信じ、見たいようにしか世界を見ない。一歩間違えばストーカーになってもおかしくない粘着質なドリーマー男。行動力があるだけにこういう男が一番厄介だ。

 本書では他にも多種多様なダメっぷりが炸裂。男を見る目が確実に鍛えられるので、現在進行形でダメ男に悩まされている女子はぜひ読むべし。すっぱり斬り捨てるガッツがもらえるかも?
(阿部花恵)

最終更新:2014.09.16 07:58

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