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太宰治が川端康成に殺害予告!? 芥川賞の黒歴史がスゴイ件
『直筆で読む「人間失格」』(集英社)
明日、第151回芥川龍之介賞と直木三十五賞が発表される。直木賞は中堅作家の大衆文学作品に与えられるが、一方の芥川賞は純文学の新人作家に与えられる“登竜門”的な位置づけ。セールス面ではどんなに本屋大賞が大きな影響力を持とうとも、社会的影響力という意味ではやはり芥川賞の存在感はいまだ大きい。純文学を志す作家にとって芥川賞は“なんとしても獲っておきたい賞”であることに違いはない。
だが、過去の受賞者を見ていると、いまでは名実ともに評価が高い作家が意外と芥川賞を獲っていないことも。その最たる例が“ノーベル文学賞”候補にもあがる世界的作家・村上春樹。デビュー作「風の歌を聴け」で第81回、続く「1973年のピンボール」で第83回芥川賞候補となっているが、いずれも落選している(ちなみに第81回の受賞者は重兼芳子と青野聰、第83回は受賞作なし)。また、春樹同様に海外評価が高いよしもとばななも「うたかた」(第99回)、「サンクチュアリ」(第100回)で候補にあがるが、ともに落選(第99回受賞者は新井満、第100回は南木佳士と李良枝が受賞)。島田雅彦にいたっては、現在、芥川賞の選考委員をつとめているにもかかわらず、なんと6度も落選し続け、結局受賞していないのだ。
6度も落とされて選考委員を引き受けている島田は「お人好し」としか言いようがないが、春樹などは、昨年の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』までは、文藝春秋から長編小説を1冊も出していなかったあたり、芥川賞の勧進元に対する複雑な感情もうかがわれる。
しかし、この作家ほど芥川賞に執着した作家はいないのではないだろうか。落とされて激怒し、情けないほどの恨み節をたらたらと述べたのは、かの文豪・太宰治である。
太宰が芥川賞候補になったのは、賞が誕生した第1回(昭和10年)。作品は「逆行」だった。そもそも芥川・直木両賞は文藝春秋の社長だった作家・菊池寛が“半分は雑誌の宣伝のために”と設立したものだが、現在のように社会的ニュースとして注目を集めるようになったのは1956年に石原慎太郎が「太陽の季節」で第34回芥川賞を受賞してからのこと。「文藝春秋」07年3月号に掲載された「芥川賞10大事件の真相」によると、第1回の結果発表時は、新聞の扱いが軒並み小さいどころか、一行も書いてくれなかった新聞もある、と菊池は激怒したという。まだ海のものとも山のものともつかない賞だったのだ。
ただし、さすがはやり手の菊池寛というべきか、選考委員はまさしく豪華絢爛。谷崎潤一郎に川端康成、室生犀星、山本有三、佐藤春夫などの錚々たる作家が名を連ねている。そんななか発表された第1回受賞作は石川達三の「蒼氓」。そして、この結果に憤慨したのが当時26歳の太宰だった。
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