“三菱グループの天皇”が息子の三菱自動車社長擁護のため「燃費なんてコマーシャル、誰も気にしていない」と暴言!

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MITSUBISHI MOTORS JAPANオフィシャルWEBサイトトップページより


「(燃費データ改竄は)会社のためと思ったのが裏目に出たわけですよ。(略)心根は悪いわけではない」
「(カタログなどに記された公表燃費性能)あれはコマーシャルだから。効くのか効かないのか分からないけれど、多少効けばいいというような気持ちが薬屋にあるのと同じでね。自動車も“まあ(リッター)30キロくらい走れば良いんじゃなかろうか”という軽い気持ちで出したんじゃないか、と僕は想像していますけどね」

 4月下旬に発覚した三菱自動車工業の軽自動車の燃費データ改竄問題について、こんなとんでもないことを語ったのは、“三菱グループの天皇”といわれる相川賢太郎三菱重工相談役だ。

 現在88歳の相川相談役だが、三菱重工の社長を1989年から3期6年、会長を2期4年務め、在任中は徹底した合理化で“ミスターコストダウン”と称され、三菱重工の中興の祖とも言われた人物。今も三菱グループ全体に絶大な影響力を持っている。

 また、相川相談役は、不祥事の当事者である三菱自動車工業の相川哲郎社長(62)の父親でもある。

 そんな人物が「週刊新潮」(新潮社)5月5・12日ゴールデンウイーク特大号のインタビューで、燃費改竄など大した問題ではない、と開き直ったのだ。

 冒頭の「公表燃費性能はコマーシャル」発言だけではない。「買うほうもね、あんなもの(公表燃費)を頼りに買ってるんじゃないわけ。商売する人は別だけれど、自動車に乗る人はそんなにガソリンは気にしてない」「実際に(対象車種に)乗っとる人は、そんなに騒いでないと思うんだけどね」「(従業員は)罪悪感は全くなく“まあ良さげにしとけ”ということでやったに違いない」「僕が社長だったらね、“ああ、これは愛社精神の指導が間違ったんだな”と社内的には善意なんだろう、と」など、インタビューで暴言を連発している。

 しかし、このインタビューの後、当初の軽自動車4車種以外にも、1991年から25年にわたり、法令とは異なる方法で燃費データを計測していたことが発覚し、“相川天皇”の放言の「従業員の軽い気持ち」どころか「組織的な不正操作」だったことが明らかになっている。

「技術と信頼の三菱」という三菱自動車のブランドは地に墜ちるとともに、“相川天皇”のインタビューにみられる三菱のトップと社会との認識の大きなズレも明らかになった格好だ。

「“相川天皇”の息子である相川哲郎三菱自動車工業社長は『プリンス』『皇太子』と特別扱いされ、2014年6月に三菱自動車工業社長に就任した人事も“相川天皇”に配慮したものとされました。“相川天皇”としては就任してわずかの2年の『プリンス』をどうしても弁護したかったのでしょうが、この発言はいくらなんでも、社会常識がなさすぎる。ただ、マスコミとしては、あまりにヒドすぎる発言で後追い報道もはばかられたほどです」(全国紙経済部記者)

 また、この“相川天皇”の放言は、「組織の三菱」とされる三菱グループの硬直化した企業体質が現れたと見ることもできる。

「“三菱ご三家”といえば、三菱重工、三菱商事、三菱東京UFJ銀行で、1970年に三菱重工業の自動車部門が独立して生まれた三菱自動車工業は格下の扱い。毎月第二金曜昼に東京・丸の内にある三菱商事ビルの最上階で行われる三菱グループ29社による親睦会・金曜会でも三菱自動車社長が座るのは末席に近い場所です。三菱グループは政府を顧客とする三菱重工や、企業を顧客とする三菱商事の発想が中心で、消費者を相手にするビジネスは格下。消費者目線というものがまったくない」(経済誌編集者)

『国策防衛企業 三菱重工の正体』(「週刊金曜日」編/金曜日)には三菱グループがかかえる構造的な問題点が次のように指摘されている。

「顧客に配慮するという意識がきわめて薄いことがある。(略)三菱重工の問題は三菱グループ内での取引が大きな割合を占めていることだ。いわば得意先が身内、しかもグループ内の序列でいえば、重工より“下位”とされる企業ばかりであるため、顧客の信頼を得るために技術的なチェックを重ねたり、販売するためのサービスに努めるという意識に乏しくなる」

 もともと、三菱自動車はゼロ戦に代表される三菱重工の軍事技術を転用した「ジープ」を手掛け、モータリゼーションとともに自動車産業に進出。80年代の社長は、三菱重工・ゼロ戦の設計チーム員で東條英機元首相の次男・東條輝雄が務めるなど、まるで戦前の三菱重工の権威主義を残したままだった。90年代前半には、パジェロシリーズがヒット。国内市場の多目的レジャー車(RV)ブームの立役者となった当時の中村裕一社長の影響力が絶大なものとなり、この時から隠蔽体質が深刻化、今回の自動車の燃費データ改竄問題の温床となったのではないかと見るジャーナリストは多い。現に2000年代にはリコール隠し問題も起こしている。

 三菱グループのピラミッド型に固定化された職制制度の問題も『国策防衛企業 三菱重工の正体』は指摘する。

「『組織の三菱』と称されるほど、ピラミッド型に固定化された職制が、社内の意思疎通を悪くしていることがある。工業製品は、製造現場に近いほど技術的な欠陥や不祥事を見つけやすい。それが発見された場合、その情報を社内の関係部署で迅速かつ広範囲に共有し、柔軟に対応することが、技術力を高めるための基本とされる。だが、三菱重工では、職制で下位の職員は、直属の上司にしか進言が許されていない。そのため、たとえ欠陥の情報を報告しても、それを受けた上司が取りあわなければ情報の流れはそこでストップし、社内では欠陥などなかったことにされてしまう。このように硬直化した企業体質が、現場の社員や技術者に、『上にモノを言っても仕方がない』というあきらめに似た無気力をはびこらす」

 そして、幹部は自己保身のために部下にひたすら無茶な要求をつきつけ、その場しのぎのウソにウソを塗り固めていく。そういう意味では、同グループの戦前の日本軍の亡霊のような体質が、三菱自動車の不祥事を生んだと言っていいだろう。

 今回の自動車の燃費データ改竄問題では、三菱自動車が過去10年間に販売した30車種のうち、不正は27車種、200万台強に上るとみられ、さらなる販売や生産の停止に追い込まれる可能性も高く、顧客への補償やエコカー減税の返還など、対策費は数千億円規模に膨らむとされている。

 三菱グループ、三菱自動車は、いったいどうなるのか。エンジンを供給している中国メーカーに売却される可能性も取りざたされる一方で、“天皇”相川相談役はインタビューで「絶対に潰しちゃイカン」「三菱重工は三菱自動車の株を持っていますからね。株主としては支援しなきゃイカン。それは当然のことでしょう」と、息子の会社への支援を強く主張している。

 三菱グループはまさに戦前の日本軍のように真実から目をそらし、このまま泥沼に突き進んでいくのだろうか。
(小石川シンイチ)

最終更新:2016.05.05 11:04

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