ライムスター宇多丸が戦争特集で「大本営発表は今まさに進行している問題」と、安倍政権とメディアの一体化に警鐘

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 たしかに『大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争』を読むと、2016年現在に進行形で起きていることを想起せずにはいられなくなる。

 同書は、大本営発表のようなデタラメ報道を生んだのは軍部だけの責任ではなく、彼らに唯々諾々と従ったマスメディアにも大きな要因があったとして、軍部と共犯的な関係を築いていくメディアの変化を丹念に追いかけていくのだが、その姿が、率先して安倍政権の意向を組むようになってしまった現在のメディアの状況と明らかにシンクロしているのだ。

 メディアと政治権力との共犯関係は日中戦争開始時に始まる。実はそれまで戦争に対して批判的だった当時のメディアはいざ戦争が始まると、一転してそれを肯定的に取り扱い始める。ただ、それは、国の政策に共鳴していたからではない。戦地の情報を載せれば載せるほど部数が伸びて「儲かる」からだ。

 現地で特ダネを手に入れればかなりの部数アップが期待できることから、各新聞社は戦地に多くの記者を派遣する。その規模は、朝日新聞と毎日新聞は1000名、読売新聞は500名と相当な大きさで、写真を運ぶため飛行機をチャーターしての空輸まで行っていた。

 ライバル社より早くスクープを出そうと、記者たちが軍の正式発表を待たずに速報を打つ事例が頻発したこともあって、軍部にとってこの報道過熱は必ずしも歓迎すべきものではなかったが、メディアはここで軍部に弱みを握られてしまうことになる。

〈報道合戦を勝ち抜くためには、軍部との協力が不可欠だった。軍部もまた便宜を図ることで、報道への介入の糸口を作った。記者を従軍させてやる代わりに、軍部に有利な記事を配信せよ、というわけだ。
(中略)
 こうして、大本営発表や軍部の行動を批判的に検証する、報道本来の役割は置き去りにされてしまった。なるほど、このころの新聞はまだ大本営発表の完全ないいなりではなかったかもしれない。ただ、それはジャーナリズムの使命感というよりは、単なる時局便乗ビジネスの結果だった〉(『大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争』より)

 軍部に対して批判的な姿勢をとることで、戦地に関する情報をシャットダウンされてしまうとビジネス的に大打撃を受ける。

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大本営発表 改竄・隠蔽・捏造の太平洋戦争 (幻冬舎新書)

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