清原逮捕で注目の長渕剛が芥川賞作家・柳美里と「原発」批判対談! 被災地に身を置いた二人の怒りの声を聞け

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 まず長渕は、震災によってこれまで信じてきた価値観がまるっきり転倒してしまったと語る。

「僕は1956年生まれなんですけど、特に震災を機に、自分が何も知らなかったと打ちのめされた」
「戦後復興の過程で僕らを洗脳していた教育は「強い者になりなさい」「人を蹴落としてでも勝ち上がりなさい」「お金を持たなくてはいけない」というものでした。それがあの震災でストンとやられた。教育や価値観というものが根底から断ち切られてしまった。今でも実は迷っています。その恐怖がここにあるんです。だから僕は恐怖を表現に変えなくてはいけない」

 柳美里も長渕と同じく、震災を機にこれまで自分たちがもっていた価値観に疑問を抱くようになる。そのきっかけは、南相馬の人々との触れ合いであった。

「敗戦から高度成長期にかけて、大多数の幸せと豊かさを追い求めた結果、経済至上主義に陥り、真っ当に働き、慎ましく生きていた人たちの暮らしを壊し汚してしまった──、それが原発事故です。南相馬には、儲けを二の次にして、真っ当な仕事をしている人が多い。そして、その仕事や暮らしに誇りを持っているんです」

 我々は経済的な豊かさと引き換えに福島の人々に犠牲を強い、果てには、取り返しのつかない事故を起こしてしまった。そして、そんな犠牲を強いられたのは「人間」だけではない。長渕は前述の「カモメ」を生むきっかけともなった、浪江町の牛たちとのエピソードを振り返る。

「あそこに行った時が本当にひどかった。雪が降っていた。無音で、時が一瞬止まって、心臓が止まるかと思った。静寂の中にこそ真実の音がある、僕はそう感じる。静音になった瞬間、次に聞こえてくるものが、真実の音。野良牛が駆けてくる音、息の音がする。目と目で対峙すると、もう5〜6秒見ていたかと思うと、野良牛が踵を返してバタバタバタッと逃げていく。そうすると子牛が後をついていく。その姿を見ただけでも恐怖が先にたった。涙が出るという代物ではなかった。さらに奥に行くと、役場のおじさんがいて「見ていくか」と言う。「何ですか」と訊くと、「墓場だよ、墓場。牛の墓場だよ。今日もこれで殺してっから」と言う。(中略)「見せてください」殺された野良牛たちがあっち向いたりこっち向いたり。縦7メートル横15メートルの墓穴に幾重にも重なっている。薬殺された牛、白骨化したり腐敗した牛が断末魔の叫びを上げている。それはインドで見た名もない死人とは違う。死をまっとうした生き物の姿ではない。僕は震えた」

 柳美里もまた、長渕と同じように動物たちについて語る。

「今年の10月1日に福島第一原発の構内に視察に行ったんですが、汚染水タンクの上にカラスがたくさん止まっていました。カラスは自分たちが被爆していることを知らずに、あそこで餌を取り、水を飲み、巣を作り、子育てをしているんです」

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