官能小説は時代とともに変化する! 女流作家の台頭、おっぱい派からお尻派への流れも

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 もちろん、今も官能小説には新しいトレンドが起きている。〈社会に性的な開放感が広まって、不倫のタブーも薄らぎ、SMなども変態というよりは多様化したプレーの範囲として受け入れ〉られるようになったため、官能小説の題材は〈ほとんど際限なく広がって〉いるというのだ。

 題材の職種は〈身近な人妻、美味しそうな新人OL〉は当然として、〈社会に進出する女性たちの先端的職業〉の女性まで伸びる。

 たとえば、藤隆生の『美人ゴルファー 公開調教』(マドンナメイト文庫)や『美女スイマー シンクロ調教』(同)、高輪茂の『美人弁護士 肉罠に濡れて…』(同)や、美園満の『女美術教師』(フランス書院文庫)など。

 また、神社ブームを反映してか、「巫女もの」も人気だ。『下町巫女三姉妹』都倉葉(フランス書院文庫パラダイス)、『三人の熟巫女【添い寝】』(巽飛呂彦)(フランス書院文庫)、『巫女の秘香』睦月影郎(竹書房ラブロマン文庫)、『美少女脅迫写真 鬼畜の巫女調教』柚木郁人(マドンナメイト文庫)など、多くの作品が同時期に出ている。

 作家陣にも変化の兆しがある。09年頃から女流作家が次々とデビューし始めたのだ。元バスガイドの花房観音。キャビンアテンダント出身の蒼井凛花。現役ナースの櫻乃かなこ。ミュージシャンでもあるうかみ綾乃。そしてAV界のカリスマ美熟女・川奈まり子。みな10年代にデビューし、何らかの官能小説の賞を受賞、その名を業界に轟かせるだけではなく、現在も精力的に作品を描き続けている。

 ほかにも、官能小説界全体の流れとして見られるのが、〈おしり派の優勢〉である。

 官能界にはいつでも〈お尻派とおっぱい派〉の派閥があり、〈このところおしり派が優勢で、次第に定着する傾向をたどって〉いるという。永田氏によると、〈生活に余裕がなく食べ物も充分でない時代には、おっぱいはが優勢になり、飽食の時代にはお尻派が増えるという〉説もあるらしいが、社会情勢と官能小説は切っても切れない関係と言えよう。

 また、男性優位の社会が是正されつつある反動か、昨年くらいからは、女性が強い社会へ変容している反動で、〈作品のなかだけでも男性の優位を味わおうとする欲求からか、従来のSMものに加えて、最近の社会状況や人間関係にSMを取り入れた加虐もの、あるいは過激な性技で女体を屈服させるといった作品も〉増えているらしい。

 そして〈読者の高齢化傾向〉もあり、〈中年男性が若い時代の性を蘇らせたり、失意の環境で思いがけない性運に恵まれて、女体を渉猟する〉という“回春もの”が人気になっているという。

 時代と共に幅を広げ続ける官能小説。“活字離れ”が叫ばれる時代だが、同書を読んでいると、官能小説にはまだまだ未来があるように思えてならない。
(羽屋川ふみ)

最終更新:2018.10.18 05:11

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