大塚家具よりエグい? 「パナソニック」創業者の娘婿をめぐるドロドロ人事抗争の歴史

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 東芝が提唱していたDVD規格に乗り換えた森下。最終的には2つの規格の折衷案が採用されるのだが、もし松下、ソニー、フィリップスの3社で規格をつくっていたのなら、「松下電器だけでも、ディスクの規格料(特許料)が年額50億円転がり込む計算だった」(同書より)という。

 いうなれば、会社が損をすることになるというのに、わざわざDVDの規格を乗り換えた森下。その裏には正治の長男である松下正幸を社長に就任させるという大きな目的があったと言われている。

「当時を知る者の言葉を借りれば、『正治会長が望んでやまなかったとはいえ、正幸君を社長にするには、誰もが文句を言えない雰囲気をつくる必要があった。だから森下は、やたらと人事権を振り回し、間違った経営判断と気づいても、途中で修正することなく強引に推し進めた。いわば“絶対君主”ぶりを演出することで、存在感を示そうとしたのです』」(同書より)

 しかし、正幸の社長就任は元社長の山下からの批判などもあり実現することなかった。2000年、森下が社長を辞任し会長に就任するタイミングで、正幸は副会長という役職に就任している。

 創業者と娘婿の争い、権力闘争の背景にした不祥事、人事遂行を目的とした誤った経営判断……そんなパナソニックの人事抗争史を見ていると、大企業にとっては利益を追求することよりも、個人の権力を保持することこそが大きな目的になっているのではないかとさえ思えてくる。

 これがドラマや映画だったら、スリリングで楽しめるのかもしれないが、実在している大企業で日常的に繰り広げられていると考えるとなんとも恐ろしい。どうやら大塚家具のお家騒動など、だいぶ可愛いらしいものだったのかもしれない。
(田中ヒロナ)

最終更新:2017.12.23 07:16

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