安倍首相が年頭記者会見でIR汚職をスルー、米国、イランの名も口にせず、自衛隊の中東派遣強行だけは明言!

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年頭記者会見をする安倍首相(首相官邸HPより)


 政治をめぐって怒涛の幕開けとなった2020年。元旦にはIR汚職で新たに岩屋毅・前防衛相など自民党と日本維新の会の議員に中国企業から現金が渡っていたという疑惑が浮上。さらにトランプ大統領の指令で米軍がイランのソレイマニ司令官を殺害するという事実上の“宣戦布告”を実行。日本政府は中東海域への自衛隊派遣を閣議決定したばかりで、緊張と不安が高まっている。

 しかし、自民党を筆頭にした一大汚職疑惑や世界を揺るがす大事件が立てつづけに起こっているというのに、安倍首相は映画鑑賞にゴルフと正月休みを満喫。何ひとつ問題に言及せず無視してきた。

 だが、きょうはそんな態度をとることもできまい、と見られていた。というのも、本日6日、安倍首相は三重県の伊勢神宮を参拝し、その後、伊勢市内で年頭記者会見を開く予定だったからだ。さすがにきょうの会見では、「桜を見る会」問題をはじめ、自衛隊中東派遣問題に対する国民への丁寧な説明、IR汚職疑惑についての釈明などをおこなわないとおかしい。

 ところが、驚くことに安倍首相は、「桜を見る会」とIR汚職については自ら触れようともせず。アメリカのイラン攻撃をめぐっても、具体的なことや意味のある発言は一切語らないまま、自衛隊派遣を予定通りにおこなうことだけ宣言したのだ。

 その会見内容を一から振り返ってみよう。とにかく、安倍首相は、冒頭から弛緩しきっていた。

「みなさま、あけましておめでとうございます。元日の朝は広い範囲で晴れとなり、私も美しい富士山の姿を見ることができました」
「本年はいよいよ半世紀ぶりにオリンピック・パラリンピックが日本にやってきます。国民一丸となった招致活動が実を結び、7年前、その開催が決定しました。その直後、私は決戦の地・ブエノスアイレスで『みんなで力を合わせれば夢は叶う』、そう申し上げたことをいまでも覚えております。少子高齢化、激動する国際情勢。令和の時代を迎えた私たちの前には大変困難な課題が立ちはだかっています。しかし、みんなで力を合わせれば、夢は叶う。国民のみなさまとともに、真正面から立ち向かうことで必ずやこうした課題も乗り越え、新しい時代を切り拓くことができる。そう確信しています」

 世界が新たな戦争の危機に切迫した空気に包まれているというのに、元日は晴れだったとかオリンピック開催だとか、よくも呑気に話せたものだが、挙げ句、「みんなで力を合わせれば夢は叶う」って……。

 しかも、その後も安倍首相は長々と社会保障改革に話を費やし、「人生100年時代の到来は大きなチャンス」「この機に年齢にかかわりなく意欲あるみなさんは働きつづけることができる生涯現役の社会をつくり上げる」「すべての世代が安心できる社会保障制度へと改革していくことが内閣最大のチャレンジ」などと発言。つづいて唐突に“本年の干支・庚子の庚には改革の意味が込められている”などと言いはじめたかと思えば、干支の話を無理やり日米安保の話題につなげ、さらには北朝鮮の拉致問題に言及し「金正恩委員長と条件なしで直接向き合う考えです」とドヤ顔で決めたのだった。

「条件なしで向き合う」ってその話何回目か?と突っ込まざるを得ないが、問題はこのあと。安倍首相はようやくアメリカ・イラクの問題に言及したのだが、なんと「アメリカ」とも「イラク」とも名指しせず、こう言っただけだった。

「中東地域が緊迫の度を高めており、現状を深く憂慮しています。事態のさらなるエスカレーションは避けるべきであり、すべての関係者に緊張緩和のための外交努力を尽くすことを求めます」

 安倍首相はアメリカとイランの橋渡しができる世界で唯一の存在だと自称していたのではないのか。にもかかわらず、アメリカともイランとも言わずに「中東地域」と抽象化し、トランプに対して自制を呼びかけるでもなく「すべての関係者に外交努力を求める」などと他人事感丸出し。この逃げ足は一体なんなのか。

米イラン戦争危機にはまともに言及せず、自衛隊の中東派遣だけは明言した安倍

 さらに安倍首相は、先月、イランのロウハニ大統領が来日したことを挙げて「これからも日本ならではの外交を粘り強く展開します」と発言。その「日本ならではの外交」とやらの成果はまったくのゼロで、事態はより深刻化して抜き差しならないところまできているわけだが、安倍首相はそんなことはお構いなし。しかも、つづけて自衛隊派遣問題について、こう述べたのだ。

「わが国はこの地域にエネルギー資源の多くを依存しています。こうした外交努力と合わせて、情報収集体制を強化するため、この地域に自衛隊を派遣し、日本関係船舶の航行の安全を確保していきます」

 なんと、安倍首相は自衛隊派遣を見直すでもなく、予定通りに派遣することを明言してしまったのである。

 トランプ大統領はイランが報復に出た場合について、1979年にイランで起きた米大使館占拠事件で人質になった米国人の人数と同じ数である52カ所を標的にすると常軌を逸したことを言い出し、きょうも「イランが報復に出たら、大規模な報復をおこなう」と宣言したことが伝えられるなど、事態はさらに混迷を深めている。こんな状況下で自衛隊を派遣するというのは、イランからすれば米軍と一体化した“軍事行動”と映るのは間違いない。なのに安倍首相は、躊躇うことなく「情報収集体制の強化」などという理由で自衛隊を中東に派遣すると、じつにさらっと述べたのだ。

 戦争に巻き込まれる可能性が高まる非常事態の最中でのこの宣言は、トランプ大統領の顔色伺いのためなら自衛隊を危険に晒してもかまわないという安倍首相の非道さがあらわになったと言える。これには戦慄を覚えずにはいられないが、会見ではこのあとも“地球儀を大きく俯瞰した外交を深める”“五輪では世界中の人びとが新しい時代への夢や希望が持つことができる大会にしたい”などと平和ボケした発言を繰り返し、そのまま終了。結局、IR汚職や「桜を見る会」問題には一切、自ら言及しなかったのである。国内外でこれだけの問題が起こりながら、この態度──。こんな総理大臣で大丈夫なわけがないが、しかし、驚愕の展開はこのあとにも待っていた。

「いま訊く話か」の質問しかしない報道陣、ようやく朝日が「桜を見る会」の質問するも…

 安倍首相がひと通り発言したあと、内閣記者クラブ加盟社と地元メディアからの質疑応答がはじまったのだが、最初に指名された内閣記者会幹事社であるテレビ朝日の記者の質問は、IR汚職でも、自衛隊中東派遣問題でもなく、「総理任期が残り2年を切ったが内政面で課題は何か。また、憲法改正で年内発議はあるか」というもの。さらに2番目に指名された地元・三重の朝日新聞記者も「五輪開催外の地方の経済効果をいかに波及させたいと考えているか」と質問し、いずれも「いま訊くべき話がそれなのか?」という内容だったのだ。

 そして、3番目に指名された、やはり内閣記者会幹事社である朝日新聞の記者は、ようやく「桜を見る会」について質問。世論調査で説明不十分とする意見が7割を超えていることや、ジャパンライフ会長招待問題について「総理は個人情報を理由に山口会長を招待したかどうかをあきらかにしていないが、山口会長が招待されたことを自らあきらかにしている以上、個人情報にあたるとは言えない」と指摘し、名簿を破棄しているとしても聞き取り調査などで調べる気はあるのかと問いただした。

 だが、安倍首相は、「個人情報にはあたらない」という記者の指摘を完全に無視して、「個々の招待者については個人に関する情報であるため招待されたかどうかも含めて従来から回答を差し控えている」と拒否。「今後も丁寧に対応していく」と言って回答を終わらせてしまい、「調査する気はあるのか」という記者からの質問には何も答えなかったのだ。

 何が「丁寧に対応」だ、と言いたくなるが、4番目に指名された地元・CBCテレビの質問は「第一次産業への対応は」というもの。そして、この質問への回答が終わると、まだ手を挙げている記者もいるのに、司会者が「10分近く遅れている」「次の移動もある」などと言って強引に会見を終了させたのだ。質疑時間は、わずか約15分だった。

 つまり、かろうじて「桜を見る会」問題の質問は出たものの、IR汚職や自衛隊派遣問題についてはひとつも質問が飛ばなかったのである。

 本来なら、IR汚職や自衛隊派遣問題は記者が我先にと質問すべき重大事だ。いや、「桜を見る会」の質問に答えなかったことや手を挙げる記者がいるのに強制終了したことなどに対し、記者たちが取り囲んで抗議して当然の話だ。だが、そうした質問もなく、抗議も起こらず、唯一、会場をそそくさとあとにする安倍首相に対して女性記者がIR汚職を追及する質問を投げかけただけ。無論、安倍首相はその声も無視し、女性記者に追随する声も記者席からはあがらなかった。

 政権を揺るがすIR汚職に一言も言及しない総理に、忖度して何も訊かない記者……。きょうの質疑応答でも安倍首相は時折手元に目を落としており、あらかじめ質問が聞き取られ、回答を用意していた可能性が高いと思われる。こんな茶番に付き合うメディアや記者がいることで、国民が重大事を重大事として認識しない状態が生み出されてしまうのだ。

 トランプの宣戦布告も、国会議員に次々に波及している汚職問題も、まるでなかったことのよう。このだらしなさはもはや安倍政権の政策に賛同するか反対するか以前の話だ。こんな総理とメディアの姿勢で、ほんとうにこの国は大丈夫なのだろうか。

最終更新:2020.01.07 01:20

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