「令和」は安倍首相の元号私物化の結果だ! 皇室の伝統をひっくり返しフェイク的“国書由来”の元号を強行

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元号を発表する菅官房長官(首相官邸HPより)


 5月1日に施行される新元号が「令和」に決定した。朝からヘリまで飛ばして特番を組んでいるテレビでは不自然なほど絶賛ばかりだが、菅義偉官房長官による発表直後、Twitterなどネット上には少なからぬ“違和感”の声があがっていた。

 まあ、それも当然だ。元号に使われるのは初めてだという「令」という字は、辞書を引けば「命じること」「いいつけ」「おきて」という意味がまず並ぶし、「和」にしても「昭和」で使われたばかり。ネット上では「命令、使令、令状の令か?」とか、昭和のアジア・太平洋戦争を意識して「暗黒時代に戻るように感じる」というような感想も見られる。もちろん、行政を私物化し、戦前復古的なイデオロギーを振りまいている安倍政治を鑑みれば、「上からの命令で、みんな無理やり仲良くさせられる(押し黙らせる)」という受け止められ方をされても仕方がないだろう。

 しかし、それよりも驚かされたのは、安倍首相が得意顔で説明した「令和」の典拠のほうだ。「平成」の公表の際には当時の小渕恵三官房長官が読み上げただけだった首相談話を、安倍首相はわざわざお昼どきに会見を開き、直接語ったわけだが、そこで「令和」は日本の『万葉集』からとったと自信満々でアピールしたのである。

「新しい元号は『令和』であります。これは、万葉集にある『初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす』との文言から引用したものであります。そして、この『令和』には、人々が美しく心を寄せ合うなかで、文化が生まれ育つ、という意味が込められております。万葉集は、1200年あまり前に編纂された日本最古の歌集であるとともに、天皇や皇族、貴族だけでなく、防人や農民まで、幅広い階層の人々が詠んだ歌が収められ、わが国の豊かな国民文化と長い伝統を象徴する国書であります」

 これまでの「大化」から「平成」の247元号は、典拠がわかっているものはすべて『五経』や『史記』など中国の古書(漢書)からとられてきたとされる。安倍首相はその皇室の“伝統”をひっくり返してしまったのだ。歴史のなかにきちんと実在する女性天皇を「皇室の伝統に反する」などと言って猛反対していた人物が、これまでただの一度の例がない「国書由来の元号」を強行したのである。

 この背景にあるのは、明らかに安倍首相の「元号」政治利用と私物化だ。本サイトは、以前から「安倍は国書由来の元号をつけた初の首相という称号を得ようとしているのではないか」「学校教育から漢文を廃止しろ、と叫んだ百田尚樹と同レベルのヘイトまがいの浅薄な動機で、漢書由来の元号という慣習を覆すつもりではないのか」という見方をしてきたが、まさにそれが的中してしまったということだろう。

 実際、AP通信は「中国に対してタカ派だった安倍政権が、伝統を変えて日本の文献から引用するという憶測も出ていた」という記事を配信した。

 さらにもうひとつ大きく影響しているのが、安倍首相を支持する極右勢力の意向だ。「新元号は国書を典拠に」というのは安倍首相の肝いりで、事前に「元号の出典は日本で書かれた書物がいい」と周辺へ話していたとの報道も複数なされていたが、その背景には、極右勢力の一部が平成の代替わりの際に、「国書からとるべき」という主張を展開していたことがあった。

国書由来の元号制定の背後に安倍首相と極右勢力の結託

 しかも、安倍首相は元号の国書由来を、元号の事前公表とバーターしたのではないかという見方もある。「代替わりと同時の元号発表」という慣例にこだわる日本会議などの右派勢力は、事前公表に猛反対し、機関誌「日本の息吹」2019年2月号でも、4月1日の公表に対して「遺憾の意を表明せざるを得ない」などと真っ向批判の見解を掲載していた。

 行政のシステム改修の問題から、この要求をのめなかった安倍首相はそのかわりに、右派の一部が以前から主張してきた「国書由来の元号」を採用したのではないか、というのだ。

 日本会議は本日、「新元号の公表にあたって」と題する声明をホームページで公表。〈元号はわが国において、古来より、その時代に対する理想や願いがこめられてきた歴史があると考えます〉との書き出しで、〈我が国における元号の歴史の重みと意義について改めて留意し、新元号が国民生活に定着するよう、一層の啓発に努力〉などを政府に求めたが、その文面からは、新天皇即位前の公表に対する強い反発は忽然と消えていた。

 いずれにしても、今回の「国書由来の元号」は、安倍首相を筆頭とする極右勢力の浅薄なナショナリズムと排外思想の結果、と考えて間違いない。きょう、『モーニングショー』(テレビ朝日)に出演した“安倍首相の代弁者”田崎史郎氏は「最後に誘導はある」と言っていたが、国書由来の元号に誘導したのだろう(もしかしたら、候補の大半が国書由来だった可能性もある)。

 実際、安倍首相は「国書由来の元号をつけた初の首相」になったことがよほど自慢だったのか、まるで自分が「令和」という元号を決めたかのようにこう語った。

「悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然。こうした日本の国柄を、しっかりと次の時代へと引き継いでいく。厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりの日本人が、明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたい、との願いを込め『令和』に決定いたしました」

「令和」の出典は「万葉集」でも漢文調の序文、元ネタは漢書

 しかし、安倍首相と右派勢力が胸を張るこの「国書由来の元号」は、実を言うと「日本固有の薫り高き文化」とはいえない。というのも、「令和」は『万葉集』からとってきたといっても、万葉仮名である歌の部分ではなく漢文調の序文が出典なのだ。加えれば「令和」の説明中に用いられた「梅は鏡前の粉を披き」の部分の梅の木も、中国から日本列島に輸入された樹木といわれている。

 国文学が専門の山崎健司・明治大学教授も〈「令和」に使われた万葉集の第5巻の序文は中国の六朝時代の政治家で、書家として名高い王羲之の書「蘭亭序」や同時代の詩文集の「文選」を参考にしたのではないか〉(NHKニュースより)と指摘している。

 ようするに、安倍首相がナショナリスティックに自賛する「令和」という新元号は、皇室の伝統からみても、あるいは安倍首相自身の「日本の文化」という謳い文句からみても、フェイクそのものなのだ。

 もっとも、無教養な安倍首相にとってはそんなことはどうでもいいのだろう。とにかく、この元号を利用して、自分をアピールし、国民にナショナリズムを押し付けることができればなんでもいいのだ。

 実際、安倍首相の会見はまさに、元号を政治利用するためのパフォーマンスとしか思えないものだった。

 なにしろ、安倍首相は談話を読み上げた後の質疑応答の際、「平成の30年間ほど改革が叫ばれた時代はなかった。政治改革、行政改革、規制改革。まあ抵抗勢力という言葉もありました」と元号と関係のないことを話しはじめ、「ちょうど本日から働き方改革が本格的スタートします」「1億総活躍社会をつくることができれば日本の未来は明るい」などと政策を宣伝しまくっていたのだ。

無関係なSMAP「世界に一つだけの花」を強引に持ち出すあざとさ

 あげくSMAPの「世界に一つだけの花」を持ち出して、「若者たちが明日への希望とともにそれぞれの花を大きく咲かせることができる希望に満ちあふれた日本をつくり上げていきたい」などと宣った。いやいや、普通に考えて『万葉集』序文の「梅の花」のくだりと、「もともと特別なOnly one」を謳う「世界に一つだけの花」って、全然、文脈が違うだろう。いったい、どういう読解力をしているのか。というか、完全にイメージアップのためだけに言ってみたとしか思えない。

 他にも、会見のなかでニコニコ動画の記者から質問を受けた安倍首相は、「ニコニコ動画もですね、既存メディアの発想にとらわれることなく若者たちならではの柔軟さで多様な番組を生み出して、リアルタイムで個人がコメントを発信できる新しいメディアの姿をかたちつくられた」などと絶賛。安倍首相が“ネトウヨの巣窟”であるニコニコ動画が大好きなのは周知のことだが、敵視する新聞やテレビ局などのオールドメディアに対する当てこすりの意図もあったのだろう。それにしたって新元号に関する記者会見の場で、いまや“オワコン”とよばれるニコニコ動画を絶賛とは、この男がいかにエセ伝統主義者、インチキ右翼であるかがよくわかる。

 何から何まで、安倍首相の醜悪なパフォーマンスに終わった新元号公表。しかし、メディアはそのことをまったく批判しない。それどころか、各テレビ局が安倍首相を出演させ「元号パフォーマンス」に全面協力している。

 もしかしたら、日本はすでにネットで語られている「令和」のイメージどおりの国になっているのかもしれない。そう、「上からの命令で国民が押し黙らされる」国に、である。

最終更新:2019.04.02 10:36

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