アイマス、ガルパン、血界戦線…相次ぐアニメのスケジュール破綻はアニメ業界崩壊の前触れか?それとも…

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TVアニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ」オフィシャルサイトより


 TVアニメ『アイドルマスターシンデレラガールズ』(TOKYO MXほか)の放送スケジュールがひどいことになっていると一部で話題だ。このアニメは全部で25話の予定だったが、23話と24話の間に特別番組が放送され、さらに24話と25話の間にも特別番組が放送された。つまり25話は2週遅れの放送となってしまったのだ。実は、アニメのこうした特別番組や総集編は制作スケジュールが間に合わなかった場合に放送されるものだ。

 そもそも『アイドルマスターシンデレラガールズ』は「分割2クール」というスケジュール形態を取っていた。「分割2クール」というのは、前半1クール放送した後インターバル期間を置いて後半1クールを放送するというもので、制作スケジュールに余裕を持たせることができるため、『革命機ヴァルヴレイヴ』など様々なアニメで採用されている。しかし『アイマス』は、そんな余裕を持てる放送形態を取っているにもかかわらず、2クールの間に3度の特別番組を挟むと手際の悪さが際立つ。制作スケジュールが相当に遅れ崩壊状態にあることを露呈してしまったのだ。

 だがこうしたスケジュールの遅れは、『アイドルマスターシンデレラガールズ』に限ったことではない。放送開始が延期されたり、イレギュラーな特別番組を挟んだり、とスケジュールが崩壊状態のアニメが最近非常に増えている。

 TVアニメ『GOD EATER』は、7月5日に第1話を放送する予定だったが、放送が1週間延期され、代わりに特別番組の『GOD EATER EXTRA』が放送されることになった。この特別番組は1回だけではなく、1クールの放送が終了するまでに合計4回行われた。結局、全13話予定の内、9話しか間に合っていないというのはなかなかの異常事態だ。

 『血界戦線』の方は逆に最終話の制作が間に合わなかったケースだ。最終話直前に総集編を放送し、ペースに余裕をもたせたにも関わらず制作が間に合わず放送が未定となった。TVアニメの尺に収まりきらず46分にもなった最終回は本来の予定より3カ月遅れて各局で放送されることになった。

 制作が間に合わず放送スケジュールを変更するケースは今までにもなかったわけではない。制作が間に合わなかったため、第11話と第12話が放送されるまで3カ月もの間が空いたTVアニメ『ガールズ&パンツァー』などがある。

 地上波ドラマなどではあまり考えられない状況だが、なぜこんな事態が起きているのか。昔に比べアニメ全体のクオリティは格段に上がる一方で、制作が追いつかなくなっているのだ。とくに大きな予算と人員が注ぎ込まれているビッグタイトルでの制作スケジュールの破綻が目につくようになっている。

 逆に現代では少なくなったがスケジュールと予算不足でクオリティを保てず“作画崩壊”という現象を起こすケースもある。制作現場は、作品のクオリティをとるか、予定通りのスケジュールをとるか、という状況に追い込まれているのである。アニメの制作現場の過酷な労働環境はよく指摘されることだが、これらの現象は単に制作進行の問題ではなく、アニメ業界が崩壊する前触れなのかもしれない。

 実はアニメ業界では以前にもバブル崩壊ともいえる事態が起きたことがある。今までで一番アニメの制作本数が多かった2006年を境にバブルが弾けるようにしてアニメ業界のシュリンクがはじまったのだが、2010年を底にして再び制作本数が増えてくるようになってきた。一般社団法人日本動画協会が発行する『アニメ産業レポート2014』によれば、2006年のTVアニメ制作本数は279本、そして2013年のTVアニメ制作本数は271本。制作本数はいま再びピークに近づいており、アニメ制作側のキャパシティを再び超える日も近いのかもしれない。

 もうひとつ気になるのは、制作本数が増えているにも関わらず、2008年からビデオグラムの出荷高がほぼ横ばい状態になっている点だ。CDなどが世界的にパッケージシュリンクを起こしている中、アニメは横ばい状態を保っているだけでも凄いことだ。しかし、この間に一度アニメの制作本数が減り、再び持ち直したにも関わらず売上が変わっていないというのは奇妙な現象である。もしも、アニメのソフトを買う母数が一定のまま増えていないのならば、制作本数が増えれば増えるほど共通のパイを食い争って共倒れするということになりかねない。

『サムライチャンプルー』や『GANGSTA』などで知られるアニメ制作会社マングローブが倒産したのはその先触れなのかもしれない。倒産理由も制作費が負担になり資金繰りが限界になったというものであり、何か大きな失敗があったわけでもなく不祥事が起きたわけでもないのが象徴的だ。

 このアニメ会社は11月3日に公開予定だった劇場アニメ『虐殺器官』を制作中だったが、どこかの制作会社がこの映画を引き継ぐことになるのだろうか。引き継いだ先でも虐殺の文法が発動されないと良いのだが……。

 しかし2006年よりは希望的な面もある。ひとつはCATVやネット放送などの新しいインフラができてきていることだ。海外ではオンデマンド配信が主流になっており、日本でも動画配信サービスは急速に普及してきている。深夜アニメなどはDVDを売るためのアニメ作りをしているが、動画配信サービスで売るためにアニメを作るようになれば、形式や物語もまた新鮮なものが生まれてくるのではないだろうか。

 もうひとつは5分アニメや15分アニメなど幅広い作品の形態ができてきたことだ。こうしたショートアニメは30分クオリティの高いアニメーションを作るより少ない人数、少ない予算で作ることができる。

 短いからといって30分アニメより劣っているわけではない。テンポよく笑わせることやコンテンツの宣伝などをする上ではむしろ長いアニメを作って息切れするより短い時間に内容を詰め込んだほうが印象に残ることはあるだろう。

 また、意図的に紙芝居のような表現を取った『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』のようなアニメも現れている。

 それこそ制作現場が破綻しているだけなのではないかと思ってしまうかもしれないが、この手法は制作会社トリガーの前作『インフェルノコップ』でも用いられており、「世の中のアニメのクオリティが上がっているがそれは本当に必要なのか?」という確固たる意図のもと取られているようだ。

 この実験的手法は「一見異様だが原作の雰囲気を再現している」「ただのクソアニメ」などと賛否両論だ。しかし、アニメの売上の上限が決まっており、アニメーションのクオリティが売上に必ずしも結びつかないとするならば、どこかで制作の手間を落とすというのは確かに重要なのかもしれない。あえて音質を落とすというのは音楽の手法にもある。使い方次第で定着する可能性はあるのではないか。

 他にも、DVDやBDなどのソフトだけではなく、アニソンやミュージカルなどのライブイベントは近年生まれた新しい市場であり、これからも成長することが期待される。『機動戦士ガンダムUC』は劇場でのBD販売を実施したが、これも劇場でのアニメ鑑賞というイベントを売っていると言えるのではないだろうか。このイベント性、お祭り性によって売上を確保する手法は音楽業界でも行われており、時代の流れということができるだろう。

 日本のアニメ業界はいつか破綻すると言われ続けて何十年の業界である。つい最近も庵野秀明監督が日本のアニメは斜陽に向かっていると語ったばかりだ。だがこのままではやっていけないと何度も言われ続けながらも、メガヒット作品が出たり新しいビジネスモデルが生まれたりして生き残ってきたのが日本のアニメでもある。近年の相次ぐスケジュール破綻も業界全体が潰れるのではなく、また新しい形態に生まれ変わる前兆だと信じたいところだ。
(東池誠之)

最終更新:2018.10.18 04:23

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