【2020年読まれた記事】安倍政権がコロナ対応よりも言論弾圧に必死!『モーニングショー』や岡田晴恵教授を標的、デマと詐術を駆使して批判を封じ込め

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【2020年読まれた記事】安倍政権がコロナ対応よりも言論弾圧に必死!『モーニングショー』や岡田晴恵教授を標的、デマと詐術を駆使して批判を封じ込めの画像1
厚労省ツイートのほうが「デマ」だとあきらかにした6日放送の『モーニングショー』


 2020年も、残すところあとわずか。本サイトで今年報じた記事のなかで、反響の多かった記事をあらためてお届けしたい。
(編集部)

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【2020.03.07初出】

 新型コロナ対応の後手後手ぶりに批判が集まっている政府が、ここにきて言論弾圧に乗り出してきた。始まりは一昨日5日、厚労省の公式ツイッターが『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)の報道内容に反論、あたかも同番組がデマを報じたかのような投稿をおこなったことだ。

 ところが、「デマ」を流していたのは番組ではなく厚労省のほうだった。昨日6日放送の『モーニングショー』が真正面から検証して反論した結果、厚労省側がツイート内容を自ら「訂正」したのである。

 まずは事の経緯を整理しよう。4日放送の『モーニングショー』では医療現場でのマスク不足に言及。京都府保険医協会が会員を対象におこなった緊急アンケートでも病院の約9割がマスクが足りないという結果が出たことや、番組に連日ゲスト出演している池袋大谷クリニックの大谷義夫院長が、自身の病院でもマスク不足、とりわけ検体採取などの際に装着するN95マスクが足りなくなってきていることを紹介した上で、同じくゲスト出演していた岡田晴恵・白鴎大学教授が「まずは医療機関に配らなきゃだめです。みなさん欲しいのはごもっともなんですけども、医療を守らなくては治療ができませんから、医療機関、とくに呼吸器関係をやっている人に重点的に配っていく(ことが重要)」と提言をおこなっていた。

 だが、この放送の翌5日午前7時43分、つまり番組放送直前に、厚労省の公式ツイッターアカウントが、こんなツイートを連投したのだ。

〈3月4日午前8時からの「羽鳥慎一モーニングショー」の出演者から、「まずは医療機関に配らなければだめ。医療を守らなければ治療ができないから、医療機関、特に呼吸器関係をやっている人に重点的に配っていく 」とのコメントがありました。〉
〈厚生労働省では、感染症指定医療機関への医療用マスクの優先供給を行ったほか、都道府県の備蓄用マスクの活用や日本医師会や日本歯科医師会のルートを活用した優先配布の仕組みをお知らせしています。〉
〈最終的に全ての医療機関に十分なマスクが届くことが必要であり、引き続き、マスクの増産や全ての医療機関を対象とした優先供給を進めてまいります。〉

 厚労省が直々に、番組名を名指しした上、岡田教授の発言をわざわざ取り上げて「感染症指定医療機関への医療用マスクの優先供給を行った」「日本医師会や日本歯科医師会のルートを活用して優先配布の仕組みを知らせている」と喧伝する──。これははっきり言って、異常な情報発信であるだけでなく、その主張も言いがかりとしか呼べないシロモノだ。

 前述したように、『モーニングショー』では医療現場でマスク不足に陥っているという医療従事者の声を中心に客観的事実を伝えただけ。実際、それはデマでもなんでもなく、3日には千葉市の熊谷俊人市長が「N95マスクなど医療用マスクが特に不足している」とツイートして寄付を募っていたほどの状況なのだ。だいたい、医療現場のマスク不足問題は『モーニングショー』だけが指摘していることではなく、他のワイドショーやニュース番組でも取り上げられている。なのに、厚労省はわざわざ『モーニングショー』を名指しし、医療機関全般の話を「感染症指定医療機関」の話にすり替え、まるで同番組がデマを流しているかのような投稿をおこなったのだ。しかも番組放送直前に、である。

 だが、名指しされた『モーニングショー』は黙っていなかった。翌6日放送の番組内で、この厚労省のツイートを紹介した上で、番組がおこなった感染症指定医療機関への取材結果を報告。たとえば、北海道のある指定医療機関では「おととい1万枚納入された。1日3000枚使うので十分ではないがありがたい」と述べる一方で、神奈川県のある指定医療機関は「国からマスクは届いていない」と回答、東海地方のある指定医療機関も「今のところ優先されている感じはしない。今後支給するという通知もない」と回答を寄せたのだ。

 厚労省はツイートで〈感染症指定医療機関への医療用マスクの優先供給を行った〉と断言したが、実際には医療用マスクが届いていない、通知もない指定医療機関があったのである。

 そして、『モーニングショー』は5日夜、厚労省担当者に対し、こうした感染症指定医療機関への取材結果をもとに取材。すると、厚労省担当者はこう述べたというのだ。

「『マスクの優先供給を行った』については言いすぎた表現。『行っている』『開始した』が正しい」

 さらに、〈都道府県の備蓄用マスクの活用や日本医師会や日本歯科医師会のルートを活用した優先配布の仕組みをお知らせしています〉とツイートしたことについても、厚労省担当者は「訂正したい。そんなことは国会でも言っていない」と述べたという。

 ようするに、厚労省は番組名を名指しして「デマ」よばわりしたが、実際は「デマ」を流していたのは自分たちだったことを、認めたのだ。

首相官邸も『モーニングショー』の正当な安倍首相批判をインチキな論理で封じ込め

 厚労省が流した情報が「デマ」であることを取材によってあきらかにし、直接厚労省に突きつけた『モーニングショー』には拍手を送りたいが、今回の厚労省のツイートは重大な問題だ。というのも、新型コロナにかんしては、厚労省や首相官邸が発信する情報は一次情報として扱われ、信頼のある情報だという前提があるからだ。にもかかわらず、その厚労省の公式ツイッターアカウントが「デマ潰し」を装って、特定番組を名指しして逆にデマを流した。これにより『モーニングショー』への信頼は大きく失墜させられたことは間違いない。

 玉川徹氏は番組内で「僕の疑問なのは、なぜうちの番組の名前を名指しで、この時期にこのツイッターを出したかなんですよ」と指摘していたが、じつは『モーニングショー』を名指しして報道内容にいちゃもんをつけたのは厚労省だけではない。6日午前1時35分にも、内閣官房国際感染症対策調整室の公式ツイッターアカウントが、こんな投稿をおこなっている。

〈3月5日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で、「総理が法律改正にこだわる理由は、『後手後手』批判を払しょくするため総理主導で進んでいるとアピールしたい」というコメントが紹介されています。〉
〈法律改正をする理由はそうではありません。あらゆる事態に備えて打てる手は全て打つという考えで法律改正をしようとしています。〉
〈現行の新型インフルエンザ等対策特別措置法では未知のウイルスしか対象としておらず、新型コロナウイルスはウイルスとしては未知のものではないので、今のままでは対象とならないからです。〉

「特措法では未知のウイルスしか対象としていない」などと主張しているが、特措法にはそんなことは一言も書いてない。一方、感染症法では、新感染症は〈既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもの〉とある。普通に考えれば新型コロナもこれにあたると解釈できるし、特措法が適用できるはずなのだ。

 これは何も本サイトだけが主張しているような話ではない。実際、政府の新型コロナ専門家会議のメンバーで特措法の立法にも専門家会議議長として携わった岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は、5日の参院予算委員会で“新型コロナは特措法に適用可能”だと認識を示している。つまり、安倍首相がなぜかそれを否定しつづけているだけなのだ。

 本サイトでも指摘してきたが、安倍政権はこれまで集団的自衛権容認、黒川弘務検事長の定年延長への国家公務員法適用など、さんざん法解釈を捻じ曲げてきたというのに、今回だけ厳密さを求めているのはあまりに不自然だ。そして、本サイトの取材でも「安倍首相はとにかく自分の手ではじめて緊急事態宣言を出して、決断力をアピールしたいと考えている」という情報を得ている。つまり、『モーニングショー』の「後手後手批判払拭のため総理主導をアピールしたい」という見方は実際に出ているものなのだ。

 政府の専門家会議メンバーさえも否定しているのに、内閣官房は「新型コロナは特措法の対象にならない」と主張し、特措法を適用しようとしない安倍首相の不可解な姿勢の背景という当然の論評に対し、厚労省と同じように『モーニングショー』をわざわざ名指ししてあげつらう……。これはあきらかに、『モーニングショー』を狙い撃ちにした言論弾圧にほかならない。

 しかも、厚労省と内閣官房が偶然、同じようなタイミングで『モーニングショー』を槍玉にあげたとは考えにくく、安倍官邸が関係省庁に投稿の指示を出している可能性が高い。現に、厚労省は『モーニングショー』の取材に「訂正したい」と述べた際、「そんなことは国会でも言っていない」と説明している。とかく国会答弁との整合性を気にする官僚が、わざわざ「デマ」の投稿をするとは思えず、答弁との整合性など気にしないもっと上の判断で、指示に沿って投稿したとしか思えないのだ。

自民党広報はTBS『Nスタ』を名指ししてデマ扱い! 標的は岡田晴恵教授

 実際、『モーニングショー』への攻撃が安倍官邸の仕業であることを伺わせる事実は、まだある。じつは厚労省が『モーニングショー』にデマ攻撃を仕掛けたのと同じ5日の午後18時2分、自民党広報もこんな投稿をおこなっているのである。

〈3/4のTBS「Nスタ」で女性出演者が「新型のコロナであるため感染が新しいウイルスであり、私たちには基礎的な免疫がなく普通のインフルエンザよりも罹りやすい」と発言しましたが、厚生労働省は「季節性インフルエンザと比べて感染力は高くない」との世界保健機関(WHO)の見解を紹介しています〉
〈真偽不明の様々な情報が飛び交い、多くの皆さんが不安や疑問を感じておられるかと思います。
首相官邸や厚生労働省には #新型コロナウイルス に関する情報サイトが開設され、随時更新されています。ぜひご活用ください。〉

 免疫や抗体の観点から「普通のインフルエンザよりも罹りやすい」と指摘しているだけなのに、自民党広報は「感染力」の話にすり替えて、「真偽不明の様々な情報」などとデマ扱いする……。やり口は厚労省や内閣官房とそっくりなのだ。

 しかも、ここで自民党広報が取り上げた「女性出演者」というのは、岡田晴恵教授のこと。岡田教授はこの間、『モーニングショー』をはじめとする番組に出演しては安倍政権の対応が遅れに遅れていることを専門家の立場から指摘しつづけてきた人物であり、安倍官邸が疎ましく思っていることは想像に難くない。

 さらに自民党広報のアカウントは、6日12時半に『モーニングショー』を名指しし、上述した内閣官房のいちゃもんツイートとほぼ同内容のツイートも投稿している。

『モーニングショー』では玉川氏や岡田教授らが安倍首相の後手後手対応を厳しく批判し、大谷医師が医療現場の混乱を生々しく伝えてきた番組だ。そうした安倍首相の対応批判の急先鋒である番組や人物を名指しし、フェイクニュース扱いする。これは安倍官邸が、安倍首相の新型コロナ対応批判を封じ込めるために、一気にマスコミ圧力をかける動きに出たということだろう。

 事実、露骨なことに、国会でもそうした動きが見て取れた。というのも、5日の参院予算委員会で質疑に立った自民党の小野田紀美参院議員は、トイレットペーパー不足や日本国内感染者の数にクルーズ船感染者数を含めて1000人超えとNHKを筆頭にマスコミが報じていることを「事実と違う報道だ」と憤った挙げ句、総務省に対して「(マスコミを)指導しろ」「デマを流した人に罰則を」などと言い出したのである。

 ようするに、『モーニングショー』や『Nスタ』、NHKが名指しされたのは見せしめで、「しっかり監視しているからな」「罰則もくわえるぞ」などと恫喝し、すべてのテレビ局・番組を萎縮させようとしているのだ。

BuzzFeed Japan記者とTwitter Japan代表が厚労省のデマを垂れ流して批判封じに加担

 批判されるような対応しかとれていないくせに、今度はマスコミに圧力をかけて批判を封じ込めようとする──。まったく下劣としか言いようがないが、今回、『モーニングショー』が厚労省が「デマ」を流したことを暴き、厚労省も番組の取材に「訂正」を明言したというのに、いまだ反省はない。厚労省は番組終了後にこの問題にかんするツイートをおこなったが、訂正も謝罪もせず、〈3月4日午前8時からの「羽鳥慎一モーニングショー」の出演者から、「医療機関に配らなくてはだめ」とのコメントを受け、3月5日に、既に厚生労働省は医療機関に優先供給をする方針を自治体や医師会に明確にしていたので、この事実関係をお知らせしたところです〉などと投稿。この期に及んでもデマを流したことを認めていないのだ。

 いや、さらに問題なのは、メディアに携わる人間たちがこうした官製デマ・報道圧力に対し、同調していることだ。

 5日に厚労省が投稿した、あきらかに筋違いの特定メディア圧力ツイートを、BuzzFeed Japanの岩永直子記者が引用し、こんなコメントを投稿した。

〈厚生労働省が具体的な番組名を挙げて、反論するのは初めて見た。これ、今後もどんどんやった方がいいと思う。いい加減な情報を流して国民の不安を煽るメディアには正面から対抗すべきだ。〉

 繰り返すが、『モーニングショー』は現場の医療関係者の声をもとに医療現場のマスク不足を取り上げただけだ。それを岩永記者は「いい加減な情報」と、あたかも番組がデマを流したかのように印象操作。厚労省が特定メディアを狙い撃ちするという圧力をかけたというのに、あろうことか記者を名乗る人物が「今後もどんどんやった方がいいと思う」などと賛同を示すとは──。しかも、岩永記者がお墨付きを与えた厚労省のツイートこそが「デマ」だったことが判明した後には、〈厚労省新型コロナウイルス対策本部の広報班に確認しました〉として、〈職員がどのような言葉で番組に説明したかは確認していないが、訂正の必要はない〉という言い分をそのまま投稿したのである。

 BuzzFeedはデマツイートのファクトチェックを積極的におこなっているが、言いがかりでしかなかった厚労省のツイートを嬉々として拡散しただけでなく、デマが判明しても、厚労省の開き直りに同調する。官製情報に丸乗りするなど記者として信頼できるはずがない。

 だが、厚労省のデマを拡散させたメディア関係者は、岩永記者だけではない。Twitter Japan代表取締役の笹本裕氏も、厚労省のツイートを引用した上で、〈このように公開された場で正しい情報を発信して頂けると有り難いです。医療関係者からも悲痛の声がTwitter上に上がっていますから国民としてはメディアだけに頼らず理解を深められると幸いです〉と投稿をおこなったのだ。

 ネトウヨ化が著しい公益社団法人・日本青年会議所(JC)とメディア・リテラシー確立のためのパートナーシップを締結したことからもリテラシーのなさが指摘されてきたTwitter Japanだが、厚労省のツイートが言いがかりであることは明々白々だったのにそれを見抜くこともなく謝辞を述べるって……。

 しかも暗澹とさせられるのは、Twitter Japan は政権寄りと言われているが、BuzzFeedの岩永記者などは露骨な安倍政権応援団ではないということだ。ようするに「中立」「冷静」だというようなポジションをとる記者が、官製デマに乗っかり、安倍首相の新型コロナ対応への批判を封じ込める役割を果たしているのである。

 このような有様では、安倍政権に対する批判はどんどん小さくなり、正当な批判・論評さえも「メディアがヒステリックなだけ」「テレビが煽りすぎなのが問題」などと矮小化されていくのは目に見えている。いま必要なのは、官製情報を疑い、このあからさまな安倍官邸によるメディア圧力を跳ね返すことのほうだ。

最終更新:2020.12.31 11:01

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