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安倍前首相が学術会議任命拒否した宇野教授の父は成蹊大の恩師!「本当の保守じゃない」「もっと勉強を」と批判された逆恨みか
『安倍三代』(青木理著)で恩師が涙ながらに安倍首相批判を
菅義偉首相の説明がないまま既成事実化されようとしている日本学術会議の任命拒否問題。しかし、その一方で新たな事実がつぎつぎと明らかになっている。
そのひとつが、今回、任命拒否された6人のうちのひとり、東京大の宇野重規教授が安倍政権時代の2018年にも、官邸側に任命を拒否されていたという問題だろう。
これは、東京新聞が複数の学術会議関係者を取材し報じたもの。証言によると、2018年10月、同会議の政治学委員会が定年を迎える河田潤一・大阪大名誉教授の後任として宇野教授を推薦。ところが、これに対し、杉田和博官房副長官ら官邸側は候補者を複数示し、順位を付けるよう要望してきた。会議側は1位を宇野氏にして複数候補者を提示したが、すると、官邸側は1位の宇野教授以外の人選を要求してきたのだという。
菅首相が始めたかに見えた日本学術会議への人事介入だが、実際は安倍政権時代、宇野教授の任命拒否から始まっていたというわけだ。
「安倍政権下でやったこの宇野教授の任命拒否が通用し、しかも秘密裏におこなうことができたため、引き継いだ菅首相が意を強くし、さらに任命拒否を6人まで広げていったということだろう」(全国紙政治部デスク)
それにしても、安倍政権はなぜ宇野教授だけを任命拒否したのか。周知のように、宇野教授は「特定秘密保護法案に反対する学者の会」(当時)に参加、2013年に廃案を求める声明を出しているし、2015年発足の「安全保障関連法に反対する学者の会」では呼び掛け人になるなど、安倍政権の政策に批判の声をあげていた。
しかし、同様に安保法制批判や特定秘密保護法に反対の動きをしていた学者は他にも多数いたはずだ。にもかかわらず、2018年の時点で、安倍政権は宇野教授ひとりだけを標的にして、前例を破って任命拒否に踏み切った。
実はこの背景には、宇野教授の父親をめぐる安倍首相の私怨、意趣返しがあったのではないかといわれている。
宇野教授の父親・重昭氏が青木理に涙ながらに語った安倍首相批判
宇野教授の父親である宇野重昭氏は、2017年に亡くなっているが、元外交官で、北東アジアや中国政治史を専門とする国際政治学者。そして、安倍前首相の母校である成蹊大学で学長まで務めた人物だ。しかも、学生時代は直接、安倍首相を教えており、安倍首相が政界入りしてからも付き合いがあったという。
まさに安倍首相にとって“成蹊大時代の恩師”だったわけだが、その重昭氏は亡くなる前年、ジャーナリスト・青木理氏の取材に応じ、安倍氏を「安倍くんは間違っている」「もっと勉強してもらいたい」「もっとまともな保守に」と厳しく批判していた。
重昭氏が安倍批判をしたのは、青木氏が2015年から2016年にかけて「AERA」(朝日新聞出版)に連載していたルポ「安倍家三代 世襲の果てに」の最終回。この連載は、その後『安倍三代』として書籍化され、現在は文庫(朝日文庫)になっているが、記事のなかで重昭氏はまず、教え子である安倍首相との関係についてこう語っていた。
「彼(晋三)が入学した当時、私は国際政治学とアジア研究を担当していました。たくさんの学生の一人として彼を見て、成績をつけたのは覚えています。政界入り後も食事をしたり、ゆっくり話をしたこともあるので、ある程度の人柄も知っているつもりです」
「私はどちらかというとリベラリストですが、決して右でも左でもない。中国の要人や知識人に会うと、彼(晋三)をすごく批判し、極右だと言わんばかりだから、『そんなことはありません』とも言ってきたんです」
しかし、一方で、安倍首相が安保法制を強行成立させたことについて、重昭氏はこう厳しく批判していた。
「(安保法制は)間違っている、と思います。正直いいますと、忠告したい気持ちもあった。よっぽど、手紙を書こうかと思ったんです」
「彼は首相として、ここ2、3年に大変なことをしてしまったと思います。平和国家としての日本のありようを変え、危険な道に引っ張り込んでしまった」
そして、最後は涙を浮かべながら、安倍首相にこんなメッセージを投げかけていた。
「現行憲法は国際社会でも最も優れた思想を先取りした面もある。彼はそうしたことが分かっていない。もっと勉強してもらいたいと思います」
「彼の保守主義は、本当の保守主義ではない(略)彼らの保守は『なんとなく保守』で、ナショナリズムばかりを押し出します(略)私は彼を……安倍さんを、100%否定する立場ではありません。数%の可能性を、いまも信じています。自己を見つめ直し、反省してほしい。もっとまともな保守、健全な意味での保守になってほしい。心からそう願っています」
「コロナなのに学術会議をやっている場合じゃない」というすり替えに騙されるな
この『安倍三代』にはほかにも、ジョン・ロックの研究などで知られる加藤節名誉教授など安倍首相の成蹊大学時代の教師が複数登場し、安倍首相を批判している。だが、そのなかでも重昭氏の言葉はとりわけ真に迫っており、かつての師として自分の教え子が日本を危機に陥れようとしていうることに黙っていられないという切実な思いがひしひしと伝わってくるものだった。
しかし、安倍首相には、重昭氏の真摯な思いは全く届かなかったようだ。2016年、「AERA」に重昭氏の批判が掲載された直後には官邸周辺から「安倍首相が宇野氏に赤っ恥をかかされて激怒している」「宇野だけは許さない、と周りに漏らしていた」との情報も流れていた。
そして、その翌々年、その宇野重昭氏の実子である宇野重規氏が日本学術会議に推薦されると、安倍首相は前例をくつがえして任命を拒否したのである。オトモダチばかりを引き立て、少しでも自分への批判を口にしたものは「裏切り者」として排除してきた安倍首相の性格を考えると、きっかけは父親から批判を受けたことへの意趣返しという意味合いがあった可能性は十分考えられる。
これまでなんども指摘してきたように、政権を批判したことを理由に政府の学術機関の任命を拒否するというのは、憲法で保障された「学問の自由」を侵害するありえない行為だ。加えて、安倍首相が私怨で任命拒否したとすれば、そのやり口は独裁政権そのものというしかない。
しかも、安倍首相の宇野教授に対する任命拒否が問題なのは、その前例を破った憲法違反が政権内で既成事実となり、菅政権に引き継がれて、さらに規模が拡大されてしまったことだ。
このまま任命拒否問題を許してしまったら、それこそ日本は民主主義国家ではなくなってしまうだろう。
政権応援団や御用メディアはコロナの感染再拡大でこれ幸いとばかりに「メディアも野党も日本学術会議問題を追及している場合じゃない」などと言い出しているが、そんなすり替えに騙されてはならない。
(編集部)
最終更新:2020.11.24 11:06
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