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岡村隆史問題で『ワイドナショー 』松本人志の逃げ方、古市憲寿のスリカエがひどい! 岡村以上の女性蔑視姿勢を棚に上げ
10日放送『ワイドナショー』での松本人志と古市憲寿
ナインティナイン岡村隆史がラジオ番組で「コロナが明けたらかわいい人が性風俗嬢やります」などと発言した問題。すっかり“禊は済んだ”的ムードが漂っている。
5月14日深夜には、問題の発言があった『ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)は相方の矢部浩之もレギュラーに復活し『ナインティナインのオールナイトニッポン』にリニューアル。公共放送で子どもにも大人気であるため岡村の降板を求める署名運動が起きていたNHK『チコちゃんに叱られる!』も15日の放送最後に、岡村の発言について「岡村さんは、自身の発言は不適切なもので、多くの人に不快な思いをさせてしまったと深く反省しています」「私たちも皆様からの声を真摯にうけとめ、これからも心から楽しんでいただける番組をお届けしてまいります」などとテロップとナレーションで放送し、お咎めなしとした。
たしかに岡村は、4月30日深夜『オールナイトニッポン』で生謝罪したのをはじめ、翌週5月8日の放送でも引き続き謝罪。14日放送の『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ)でも謝罪の言葉を述べるなど、この間、繰り返し謝罪の言葉を口にしてきた。
とはいえ、発言直後に本サイトでも指摘したように、今回の岡村の女性蔑視発言の背景には、岡村自身が根本に持っているミソジニー思想やお笑いの世界に根強い男尊女卑体質がある。回数はともかく岡村自身も吉本をはじめとするお笑い界も、問題の根本に十分向き合っているとは言えず、これで終わりにしていい話ではない。結局、この性搾取を当然視する差別は「テレビでは言っちゃいけないこと」になるだけで、そのまま温存されてしまうだろう。
実際、そのことをあらためて証明したのが、発言から2週間以上経った5月10日放送の『ワイドナショー 』(フジテレビ)と松本人志の姿勢だ。
『ワイドナショー』はコロナの影響でしばらく収録を休止しており、この日は数週間ぶりの放送だったため、岡村発言を番組で扱うのはこの日が初めてとなった。
放送終盤近くに「芸能人が気になったニュース」というコーナーのなかでのこと。ゲストコメンテーターの古市憲寿が「まあ、気になったけど、あんま取り上げたくないのは岡村さんのニュースですよね。岡村さんの発言、批判するの、すごい簡単じゃないですか。でも一方で、すごい批判もされていて。法律を犯したわけでもないし、具体的な被害者もいない発言を、過剰にみんなが叩くのもどうかなあと思っていて。難しいニュースだと思うんですけど」と切り出したのだ。
岡村のことは一切批判せずに、批判するほうがおかしいという言い草。しかも、「具体的な被害者がいない」って、古市は個人名を出さなければ「差別」というものが成立しないとでも思っているのか。
まあ、古市の問題は後で語るとして、唖然としたのはそのあとの松本人志の逃げっぷりだった。
レギュラーMCの東野幸治が「松本さんも昔、ラジオ、深夜ラジオやってましたけれども、テレビでの発言とか、ラジオだからの発言とか、いろいろ使い分けていらっしゃいました。どうですか?」と思いっきり話を矮小化して、松本に話を振る。すると、松本は以下のように語ったのだ。
「ただやっぱりね、こう、いまの時代に2時間を、岡村の場合は1人で2時間でしょ? 2時間のラジオ生放送っていうのは、まあリスキーだね、うん。目の前にいるディレクターたちが笑ってたら、やっぱ調子乗っちゃう部分はあると思うね。俺はまあ、そう、やっぱり、イエローカード以上レッドカード未満くらいかなーとは思うんですけど」
「でも、なんか、もう許してやってくれへんか、っていう、あのー、そんなねー、そこまで悪い奴じゃないやん、ね、ね。あのー、悪いことを言う奴がすべてワルモンじゃないから。うん、なんか、そこは、許してやってほしいなーって俺は思いますねー、うん」
松本人志は岡村以上に女性蔑視発言常習犯!コロナ禍でも女性切り捨て
いちおう世の中の空気を読んで「イエローカード以上」とは言いつつも、「レッドカード未満」、つまり、番組を降りるほどではないということを強調。そして「もう許してやってくれへんか」「そこまで悪い奴じゃないやん」とまるで岡村に同情しかばうかのような姿勢を見せたのだ。
しかし、この日の松本が酷かったのはそのことではない。岡村の発言内容に踏み込んで自身の具体的な見解を語ることは一切せず、自分にもある「女性蔑視思想」の総括から完全に逃げてしまったことだ。
あらためて指摘しておくが、松本の女性をモノとしか見ない女性蔑視、ミソジニー体質は、岡村以上と言えるもので、これまでもさんざん女性蔑視発言を連発してきた。
たとえばこのコロナ禍をめぐっても、今回の岡村発言にも通じるような、水商売や性風俗業に従事する女性たちを切り捨てる差別発言を松本はしている。
4月5日放送の『ワイドナショー』で、コロナ対策により仕事を休まざるを得なくなった人への休業補償で、政府がその対象から「接待飲食業」や「性風俗業」の従事者らを当初排除しようとしていた問題について取り扱ったときのこと。松本は、この差別的な弱者切り捨て政策に同調し、こう吐き捨てたのだ。
「水商売のホステスさんが仕事休んだからといって、普段のホステスさんがもらっている給料を、われわれの税金で、俺はごめん、払いたくはないわ」
自分たちが過去にさんざんこういう店を利用してきたのに、危機的状況になると、途端に“汚い商売”扱いして切り捨てる──。松本のなかでは結局、ホステスや性風俗に従事しているような女性は“モノ”にすぎず、それぞれに意思や生活事情があることなんてまったく想像の外なのだ。
もうひとつ、松本の体質をよく表しているのが、セクハラ問題へのスタンスだ。『ワイドナショー』でも、セクハラ事件を扱うと必ずと言っていいほど、セクハラ加害者をかばい、被害者のほうを非難してきた。
たとえば財務省の福田淳一・前事務次官のセクハラ問題を扱った際も、あろうことか「ハニートラップ」説を唱えて、女性側に責任があるかのごとくこう語った。
「テレ朝さんは、いやいやそれは違うセクハラがすべてなんだって言うんだけど、でもそこに行かせたんだったら、これはパワハラじゃないのか、ということになってくると僕は思うんですね。でもテレ朝さんが『いやパワハラじゃない』と言うんだったら、女性は自ら前のめりにこの1年間、取材をしてきたのか。そうなったらなったで、これはハニトラじゃないのか、ってことになってくるんですよ」
「どれも全部一本じゃないと僕は思うんですよね。ですので、僕の見解としましては、セクハラ6、パワハラ3、ハニトラ1でどうですか?」(2018年4月22日放送)
こういった女性蔑視的な発想は、2018年4月15日放送の回でも見てとれた。この放送回では、元NHKの登坂淳一アナウンサーを出演させセクハラ・パワハラ問題について釈明させたのだが、松本はゲストコメンテーターとして出演していた芸人のいとうあさことこんな会話を繰り広げた。
松本「たとえば、俺がいとうあさこと飲んでてさ、急にブッチューってキスしたら、それはセクハラになる?」
いとう「超うれしい!」
松本「そう、そう、ね! でもそれがまた俺のパワハラやって言う人もいるから。それは『いとうあさこ、そう言うしかなかったよね』って」
芸能界、なかでも芸人の世界の圧倒的な上下関係を考えれば、「そう言うしかない」だろうが、こうして力関係で女の声を奪い、パワハラ、セクハラ行為を正当化し、それを笑い話にしてきたのだ。
松本人志「我々はセクハラ込みでトークするお仕事」と正当化したことも
セクハラを正当化する発言はまだある。テレビ局関係者との酒席で女性アナウンサーに対しアンダーヘアの色をからかうような発言をしたとして問題となった日本陸上競技連盟の瀬古利彦氏によるセクハラを取り上げた2018年8月12日放送回の『ワイドナショー』で、松本はこんな発言をしている。
「難しいところでね。素人がこういうセクハラを操っちゃダメなんですよ。我々はセクハラ込みでトークするお仕事なので、それこそ『ダウンタウンなう』(フジテレビ)なんてさ、お酒飲みながら女性ゲストと喋るのに、下ねた一切禁止なんて成立しないんでね」
女性と下ねたなしの会話が成立しないと考えていること自体、典型的なセクハラ親父だが、実際、松本は自ら「素人以下」の下劣なセクハラ親父ぶりを丸出しにしたこともある。それが、指原莉乃への発言だ。
2019年1月13日放送の『ワイドナショー』でNGT48山口真帆への暴行事件について、コメンテーターとして出演していた指原が運営の問題点などを真面目に語っていたにもかかわらず、コメンテーターの古市憲寿が「指原さんも引退するんだし、NGTのトップになったらいいじゃないですか」などと茶化した。
指原は、それを否定しながら「ただ、トップに立つのは現状、おじさんたちっていうか……偉い人が仕切っても何もできない状況じゃないですか。私が立っても何もできないと思うんです。人数が少ない運営なので」と真剣に語ったのだが、しかし松本は、指原について「そういう(メンバーと運営の間に立てる)立場やわ」としながら、こんなことを言い出したのだ。
「まあ、でもそれやったら、お得意のなんかカラダを使ってなんかするとかさ、そういうやり方……」
指原は「何、何言ってるんですか! ヤバッ」と反論したが、古市も「指原さんがトップって説得力あるんじゃないですか。だって、だって、こんな感じでトップに行けたわけですよ、AKBでは」と揶揄し、松本を諌めることなく同調したのだ。
東野幸治からツッコミが入り、松本はようやくまずいと思ったのか、「違うよ。指原への期待がこれだけ大きいってこと」などとごまかしていたが、「お得意のなんかカラダを使ってなんかする」というのは、けっして見過ごせるような発言ではない。
しかし、これだけ数々のセクハラ発言、女性蔑視発言を繰り返しているにもかかわらず、松本は一切反省することも謝罪することもしていない。
指原への発言に関しては、めずらしく大きな批判が集まったが、このときも松本は「無口なコメンテーターという新たなジャンルを切り開きたい」「堅苦しく話さなあかん世の中になってきたんかな」などと言い募り、まともに謝罪・反省することはなかった。被害者である指原にツイッターで助け舟を出してもらい、三浦瑠麗や高須クリニックの高須克弥院長といった面々にもツイッターで擁護してもらっていたが、翌週の『ワイドナショー』では三浦が「お灸をすえに来た」などと言いながら、「松本と指原の関係性を考えれば悪意はなかった」「(同席していた)古市、乙武、だらしなくないか」などと矛先を変えたり矮小化。松本本人も「(発言が炎上し)大火事になったときに大切なものが見えてくる」「(炎上したときに)消火器を持って駆けつけてくれる人が誰かもわかる」などと、まるで自分が不当なバッシングの被害者であるかのようにまとめてしまった。
そういう意味では、今回も同様なのだ。岡村の発言は完全に自分自身の偏見や過去のセクハラ発言に通じるものなのに、まるで他人事にして、「イエローカード以上、レッドカード未満」「もう許してやってくれへんか」「そこまで悪い奴じゃないやん」などと上から目線で語っただけ。発言の具体的な問題点、水商売や性風俗嬢をモノ扱いし、性的搾取を正当化したことの差別性については一切触れなかった。
それは、本当は岡村の発言はおかしくないと思っているが、それを口にしたら批判されるのをわかっているからだ。だから、ラジオの特性や、批判の厳しさという問題に話をすり替えてしまったのである。
古市憲寿とウエンツの“岡村批判”批判と話のすり替え
しかし、これは松本だけの話ではない。最近の岡村発言をめぐる議論を見ていると、批判に対して「過剰」「やりすぎ」「バッシング」という意見がどんどん増えているし、岡村の『チコちゃんに叱られる!』降板を求める署名活動に対してはそれこそ下劣なバッシングすら見られる。
この日の『ワイドナショー』もそうだった。岡村発言について否定的に語ったのは「傷つく部分があった」「同調できる女性はたぶんゼロ」と話したファーストサマーウイカくらいのもので、古市やウエンツ瑛士は水商売や性風俗と貧困を取り巻く構造を改善すべきと微妙に論点をずらした。
古市「まあ、批判がすごい集まるのは、まあ、わかるって言えば、わかるなあというふうに思うんです。ただどんな発言も両面見なきゃいけないなというふうに思ってて。岡村さんの発言はひどいんだけど、ただ、その発言を聞いて、じゃあいま、ふーぞく行くのやめようと思った人も、多分いると思うんですね。結果的にそれはその、新型コロナの感染をある種、抑止したと思うし。だからあらゆる発言で、バランス見てみなきゃいけないんだけど、ちょっと過剰に批判が集まって。しかも署名運動も、岡村さんの降板という形で署名が盛り上がりましたよね? でも本当は岡村さんの降板じゃなくて、働きたくないけどふーぞくで働かざるを得なくなってしまうような、貧しい人に対する支援だとか、そっちに社会って向かってくると思うんですよ。だから果たして今回の騒動が、どれだけ社会を良くしたかなあってのは、ちょっとわからないなあって僕は思ってます」
ウエンツ「もちろん本当に、その場の空気があって、盛り上げようとした発言だとしても、もちろん配慮が足りなかった発言だと思います。そのなかで、正直、2週間前の話なわけじゃないですか。で、岡村さんも非を認めて謝罪をして、いま反省をしているという状況で、そうなったら古市さんがおっしゃったように、ここから先は、じゃあ、若年層の貧困だったりとか、そういうところに目を当てて、改善していくっていう話に終始しないと、なかなか、岡村さん、岡村さんでは、議論は、もう、これ以上進まないのかなって気はしてますね」
2人とも「岡村叩きより、構造がー」などと言って、物のわかった論客ぶっているが、これ、ようするに岡村批判批判でしかない。女性差別の構造がわかっていないのは、むしろ古市やウエンツのほうだろう。
古市は「岡村の発言を聞いて、いまふーぞくに行くのを止めようと思った人がいて、感染を抑止した」などと岡村発言を肯定的評価までしておきながら、「今回の騒動が、どれだけ社会を良くしたかなあ」などと岡村批判をくさす。ウエンツも「正直、2週間前の話なわけじゃないですか」といつまでも岡村批判を引っ張るなと言う。
言っておくが、岡村「チコちゃん」降板を求める運動は、岡村個人攻撃などではない。岡村がおこなったような女性蔑視発言を放置するメディアや社会に対する抗議だ(だからこそ、全番組降板でなく、NHKの子どもにも人気のある『チコちゃん』に限って降板を求めているのだろう)。岡村のような著名人が公の場で女性蔑視発言をおこなうことをメディアや芸人仲間が容認する態度こそが、女性差別を温存させてきた大きな要因のひとつだ。岡村降板を求める運動は、そうした女性差別を容認・温存する日本の差別構造を変えるためのアプローチのひとつだ。実際、まともな先進国ならこのような差別発言は一発アウトだろう。解雇になる企業や、ヘイトスピーチと同様に法律違反になる国もあるくらいだ。
しかし、日本では結局、こうした話のすり替えで政治家やお笑い芸人の女性蔑視発言は追及されることなく、温存されてしまう。その結果、メディアや日本社会で差別は少なくなるどころかどんどんタガが外れている。
あえて言う。テレビやラジオで芸人が看過しがたい女性蔑視発言をしたら、その本質をきちんと批判・検証し、徹底的に抗議の声をあげるべきなのだ。そのことが普通にならないかぎり、この国から女性蔑視がなくなる日は来ない。
(編集部)
最終更新:2020.05.17 01:19
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