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貧困バッシングの落語家・桂春蝶はネトウヨタレントとして売出し中! 韓国叩き、左翼叩きで第2のケント狙い?
桂春蝶のTwitterより
落語家の三代目桂春蝶が、2月20日、こんなツイートを放って批判が殺到している。
〈世界中が憧れるこの日本で「貧困問題」などを曰う方々は余程強欲か、世の中にウケたいだけ。〉
この国では、どうしたって生きていける。働けないなら生活保護もある。
我が貧困を政府のせいにしてる暇があるなら、どうかまともな一歩を踏み出して欲しい。この国での貧困は絶対的に「自分のせい」なのだ。〉
桂春蝶といえば、関西地方でテレビやラジオにも出演している人気落語家。そんな人物が「世界が憧れるこの日本」なる“日本スゴイ!言説”とセットで、典型的な自己責任論と貧困バッシングをがなり立てたのだから、呆れるではないか。
この落語家は日本で「子どもの貧困」が社会問題となっていることを知らないのか。厚生労働省の調査によれば、日本では実に子どもの7人に1人が「相対的貧困」の家庭で生活している。相対的貧困とは世帯一人あたりの手取り収入が中央値の50%に満たないことを指し、日本の相対的貧困率はOECD加盟国のなかで最悪レベルの水準だ。
事実、家庭の経済的理由で、子どもたちが医療機関を受診できなかったり、新しい衣類を買ってもらえないといった具体的な報告も出ている。たとえば、桂春蝶の出身地でもある大阪府が2016年に行った「子どもの生活に関する実態調査」だ。
この調査によれば、大阪府30市町村において、相対的貧困にあたる「困窮度I」の家庭は12.7%。その「困窮度I」の家庭では、具体的には「国民健康保険料の支払いが滞ったことがある」が15.4%(中央値以上の家庭と比べて25.3 倍)、「電気・ガス・水道などが止められた」が6.3%(同じく 24.2 倍)など、中央値以上の家庭との大きな格差が浮き彫りになっている。
また「新しい衣服・靴を買うのを控えた」や「趣味やレジャーの出費を減らした」は中央値以上の家庭では30%台である一方、「困窮度I」の家庭では実に70%を超えた。さらに生命に直接関わる「子どもを医療機関に受診させることができなかった」が「困窮度I」では7.7%(中央値以上の家庭では0.6%)にまでのぼっているのだ。
桂春蝶は、こうした子どもの貧困の実態を前にしても、「この国での貧困は絶対的に『自分のせい』」などと言えるというのか。
落語家の下積み時代と、国の政策による貧困の拡大を混同するトンチンカン
しかも、「貧困」は、たんにヒューマニズムの問題ではない。春蝶の大好きな「自己責任論」をふりかざして格差を助長し、貧困を放置する新自由主義政策は、景気回復やデフレ脱却を阻む最大の要因になっているのだ。
真面目に働いていても、病気でもすればあっという間に貧困に陥ってしまう、相当な貯金がなければ、老後、まともな生活ができない。日本がセーフティネットの機能しないこうした社会になってしまったことによって、国民は将来不安をおぼえ、お金を稼いでもすぐに貯金に回してしまうようになった。だから、金融緩和や公共事業をいくらやっても、消費は一向に活発にならず、そのため景気も回復しない。
経済成長に「富の再配分」が必要なことは、ノーベル賞を受賞したクルーグマンやスティグリッツといった経済学の権威も明言しているし、安倍政権ですらそれを認め、アベノミクスを軌道修正せざるをえなくなっているのだ。
にもかかわらず、いまどき貧困層を“もっと我慢しろ、政府のせいにするな、どこが貧困か!”と血祭りにあげ、説教して悦に入っているのだから、その無知無教養ぶりには呆れるしかない。
しかも、春蝶はTwitterでこの発言を批判されても撤回することなく、同じ日に〈分かりにくい内容だった〉と言い訳。いま現在貧困に苦しんでいる人々を尻目に、〈言いたかったのは、人は生まれながらに苦悩を抱えていて、だからこそ生きられるこの世界は奇跡の連続で、感謝して歩むべきだという福音だった〉などという意味不明なポエムでごまかそうとしている。
いやはや、何が「福音」なのかまったく理解できないが、春蝶は翌21日にもこうツイートして批判をかわそうとした。
〈僕は20歳から10年間、家賃2万円台のアパートで住んだ。それでも金がなくて、家賃を滞納したりした。当時は仕事が本当になかったから。
ほとんど毎日がチキンラーメンかコーンフレークやった。
それでも生きれた。
芸人風情でも何とかやっていける日本は素晴らしい。
これ以上この国に何を望みますか?〉
いったいこの男は何を言っているのだろう。そもそも春蝶は「芸人風情でも何とかやっていける日本は素晴らしい」などと言っているが、それは国の制度じゃなくて、お前が落語家をやっていて師匠や先輩やタニマチに小遣いをもらえたからだろう。そして、芸人として売れることを目指していたから「10年間、家賃2万円台のアパート、毎日がチキンラーメンかコーンフレーク」の生活に耐えられただけじゃないか。
いま問題なのは、普通に真面目に働いている人が、売れない落語家に近いような生活をせざるをえなくなっている、病気や高齢になればそれ以下の生活になってしまっていることなのだ。「これ以上この国に何を望みますか」って、普通に暮らしている人が「売れない、仕事のない若手落語家」以上の生活保障を求めるのは当たり前じゃないか。
ネトウヨ化で再ブレイクしたケント・ギルバートの“2匹目のどじょう”狙い?
いずれにせよ、この落語家の貧困バッシングは、その後の言い逃れも含め、なんの根拠もないただの感情論でしかない。というか、実は貧困問題なんてなんの関心もなく勉強もしていないのに、リベラル派を叩くために、適当なことを言い放っただけなのだろう。
そう思ったのは、春蝶が問題のツイートの前日にもこんな投稿をしていたからだ。
〈松本人志さんや、番組・ワイドナショーを叩いてる方々のツイート見たら、結局単なる「反安倍」の人たちなんですよね。これ何の発展性もないなあ。
全く思想的でない人たちが批判してたら価値があるんだろうけど。
戦後形成された左翼思想って、いつになったら潰えるんだろうか?
もううんざりですわ。〉
反安倍=左翼思想(笑)。まるでネトウヨ並みの短絡、陰謀論思考ではないか。
しかし、こうした言説も当然と言えるかもしれない。実はこの春蝶、どうも最近“右派御用達の落語家”として売り出し中らしいのだ。
すでに昨年の段階で、右派タレントの登竜門とも言える夕刊フジ(zakzak)で連載をスタートさせ、今年に入ると「正論」3月号(産経新聞社)で極右論壇にデビュー。さらに、2016年にはあの日本会議大阪支部で講演会を行っていたこともわかった。
しかも、問題はその内容だ。春蝶が右派メディアどんなことを言っているかというと、たとえば夕刊フジでの連載「蝶々発止。」では、朝日新聞など政権の問題点を追及するマスコミや民進党、社民党批判を展開。さらにネトウヨ御用達の『そこまで言って委員会NP』(読売テレビ)を〈「保守の王道」をいく番組〉と絶賛し、〈あの番組が東京で放送されるようになれば、日本人の思考に変化が芽生え、もう少し意味のある議論が、この国に根付くと思っているのですが〉などとクラクラするようなことまで書いている(「zakzak」2017年12月8日配信)。
もちろん北朝鮮・韓国バッシングも忘れない。今年2月23日の記事では、〈北朝鮮は、世界が認めるラスボス級のモンスターです。韓国も、日本には手ごわいモンスター国家といえます。国際ルールを無視し、慰安婦問題を蒸し返し続け、日本を貶めるやり方には辟易します〉〈すべては、われわれ日本人が「謝り過ぎ」なんだと思いますよ。昔は「事なかれ主義」も通用したでしょうが、世界と渡り合っていく時代には、誇りが失われていくだけです〉などと、まったく違う韓国、北朝鮮の問題をいきなり一緒くたにして「日本の誇り」をもちだすという、ネトウヨフルコースを提供していた。
しかし、この右派メディアへの登場の仕方、あまりにもスカスカな中身を見ていると、誰かを思い出さないだろうか。そう、元外国人タレントのケント・ギルバートだ。
周知のように、一時はメディアから完全に姿を消していたケント・ギルバートだったが、「夕刊フジ」でネトウヨ言説を語り始めたことをきっかけに“右派論客”として認められるようになになった。
もしかしたら、春蝶もそのパターンを狙っているんじゃないのか。落語家としてはたいして売れていないから、右派論客として自分を売り出そうという作戦。あの褒めようをみていると、『そこまで言って委員会NP』のレギュラーでも狙っているのかもしれない。
日韓合意見直しは「テロ行為」、韓国とは「準戦争状態」と韓国叩きを煽動
しかし、この春蝶が単なる「ビジネス保守」狙いだったとしても、だからといって軽視するわけにはいかない。
実際、ケント・ギルバートも最初はネトウヨ相手に細々と右派メディアで中身のない安倍政権擁護や中国、韓国批判をしていただけだったが、途中からめきめきと売れっ子になり、地上波のコメンテーターにも進出。しかも、その論調もどんどんエスカレートして、昨年には、中国、韓国人を〈「禽獣以下」の社会道徳や公共心しか持たない〉〈彼らは息をするように嘘をつきます〉〈自尊心を保つためには、平気で嘘をつくのが韓国人〉などレッテルを貼って差別を扇動する完全なヘイト本『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社)を出版した。
彼らがそうなっていく理由の一つには、右派界隈の要請があるのだろう。アッチ側の世界では、いくら差別発言をしようがマイノリティを叩こうがトンデモ歴史観を披露しようがフェイクを連発しようが、身内からはまったく批判されることがなく、また、従来のコワモテ保守オヤジ以外のカジュアルな人材が渇望されている。その意味でも、桂春蝶は“先輩”であるケント・ギルバートと同じ道を辿っていくのではないかと思えてならないのだ。
事実、その片鱗はすでに春蝶の発言にあらわれている。周知の通り、最近の右派界隈の潮流のひとつは、安倍政権をひたすらヨイショし、“韓国叩き”を扇動すること。その流れのなかで春蝶は、前述の夕刊フジでの連載だけでなく、韓国の文在寅大統領が日韓合意について「誤った問題は解決すべきだ」と話したことに関し、今年の1月11日、こんな恐ろしいツイートまで放っていた。
〈謝罪が必要なのは韓国側だ。
約束を反故し、嘘をついて我が国を貶める。これは韓国国家元首自らが下したテロ行為で、日本国民は日韓はいま「準戦争状態」と思っていいと思う。
安倍首相の平昌欠席なんて当たり前。
一回オールジャパンでええ加減にせえ!と、韓国に言おうよ!〉
日韓合意見直しという政策を「テロ行為」と位置づけ、韓国とは「準戦争状態」にあると煽りたてる……。もはや、この落語家がどんどんアッチ側へ突き進んでいくのは疑いないだろう。
そういう意味では、今回の〈世界中が憧れるこの日本で「貧困問題」などを曰う方々は余程強欲か、世の中にウケたいだけ〉〈この国での貧困は絶対的に「自分のせい」〉なる発言は、ほんの序章にすぎない。このトンデモ落語家が影響力を持つなんてことにならないようの、その言動に目を光らせておく必要がありそうだ。
(宮島みつや)
最終更新:2018.02.26 11:59
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