生活保護カットで最低賃金が上がらなくなるのに…安倍政権に騙され弱者が弱者バッシングに走る日本社会

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自由民主党公式サイトより


 安倍首相の言う「全世代型の社会保障」とは一体なんだったのか──。8日、厚労省は生活保護費を引き下げる検討に入った。食費や光熱費といった暮らしの根幹にかかわる「生活扶助」を最大1割程度引き下げる方向で、しかも、見直しの必要があると判断した理由は“一般の低所得世帯の消費支出より支給額が多い”からなのだという。

 毎日新聞によると、〈「40代夫婦と中学生、小学生」(大都市部)の4人家族〉の場合はカット幅が最大13.7%におよぶ見込みで、〈65歳以上の夫婦の世帯も10%超のカット〉〈母子家庭に対する加算(母子加算)平均2割カットになる可能性〉と伝えている。

 こんな馬鹿な話があるだろうか。一般低所得者世帯の消費支出よりも支給額が多いというのなら、見直すべきは低所得者世帯の消費支出が低い原因のほうであり、それは最低賃金が低すぎることに起因している。そもそも、2007年の法改正よって最低賃金は生活保護基準を上回るようにしなくてはならなくなったが、生活保護基準が引き下げられれば最低賃金も引きあげる必要はなくなってしまう。景気によっては、生活保護基準にあわせて、最低賃金が引き下げられる状況すら起こりかねない。これでは一般低所得者世帯の消費支出はますます下がっていくだけだ。

 このように、生活保護基準の引き下げは生活保護受給世帯だけの問題ではない。

 まず、生活保護基準は、そのほかの制度でも目安に用いられている。たとえば、低所得世帯に対して小・中学校の学用品費や給食費、通学費、修学旅行費などの援助をおこなう就学援助や、国民健康保険の保険料・一部負担金の減免などが自治体によっては生活保護基準額に一定の係数をかけて認定基準を決定している。さらに、都道府県による高校奨学金や大学による奨学金の基準も同様だ。

 しかも、生活保護基準が下がれば住民税の非課税基準も下がり、課税対象者は増える。そうなると、非課税か否かで負担額を決めている高額療養費や介護保険の自己負担額、保育料などのさまざまな制度にも影響が出る。

 そして、安倍首相が選挙で掲げた「高等教育の無償化」も、選挙後に無償化の対象を住民税非課税世帯(年収約250万円未満)で検討中だ。それでなくても無償化の対象が狭すぎると批判があがっているのに、生活保護基準の引き下げによってさらに対象者が少なくなる可能性があるのだ。

 このように弱者をターゲットにする一方、安倍首相は「革新的な技術により生産性向上に挑戦する企業」に対する法人税を20%まで引き下げる方針を打ち出した。企業への優遇措置によって税収はさらに落ち込むが、その分、貧困層に大打撃を与える消費税を増税し、社会保障費も削ろうというのである。

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