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『グッディ!』木村太郎の「パナマ文書」企業擁護がヒドい!「名前の出た会社は真っ正直」「タックスヘイブンないと年金払えない」
フジテレビ公式サイト「コンパス」ページより
詳細が記されたデータベースが公開され、マスコミも大きく取り上げざるをえなくなった「パナマ文書」。タックスヘイブンを利用した租税回避行為を行っている疑惑が持ち上がっている有名日本企業の代表らは、みな異口同音に「租税回避はしていない」「違法だとは認識していない」などと、言い逃れをしている。
加えて、「普通に個人として無駄な税金納めないのって普通じゃね?」とツイートしたホリエモンこと堀江貴文氏をはじめ、ネットでも、富裕層や会社経営者と思しき人々が“タックスヘイブンの何が悪い!”と大合唱。そんななかで、テレビでもトンデモない“珍解説”が飛び出した。
「今朝からこのニュース見てて、みんな間違ってんの」
そう吐き捨てたのは、昨日5月10日放送の『直撃LIVE グッディ!』(フジテレビ)に出演した、ジャーナリストの木村太郎氏。元NHK記者で近年はご意見番的ポジションで活躍する木村氏だが、ゲスト解説者として登場したこの日の『グッディ!』では、パナマ文書報道について、ドヤ顔でこんな持論を展開し始めたのだ。
「最初になんでこの情報が盗まれたのか、これ相当な犯罪ですよね。僕はこれ犯罪だと思う。どうしてかっていうと、これ(タックスヘイブンの利用)自身は違法行為じゃないから」
「ここ(パナマ文書)に名前があったからって違法行為でもなんでもない」
のっけから“タックスヘイブンは合法”“文書を流出させたやつが犯罪者”と、あまりにも大企業・富裕層擁護の立場を鮮明にする木村氏。いや、アイスランドではパナマ文書が理由で首相が辞任しているんですけど……と、ツッコミたくなるが、まだまだこれは序の口だ。タックスヘイブンについて、長々とこんな珍妙な説明を始めたのだ。
「タックスヘイブンってのは、節税組織でも脱税組織でもないの。これは、単に名前の分からない会社を税金を払わなくてつくることができる、それだけのことなの。そこに日本から金を送るでしょ、当然、そうすると日本の税務当局っていうのはね全部把握できるんだからいま」
「だから会社はね、申告して送ってるんですよ。そうすると会社の財務諸表に残んの。必ず、年度末に税務署から『あれどうなりましたか?』って聞かれるわけ。パナマ経由でアメリカに投資して儲かりました、するとアメリカで税金かかりました、それで比べて日本の税金が多かったら、その差額を日本で払わされる。あの、ちゃんと、タックスヘイブン制度っていうのは日本の税制にはあって、脱税することは絶対にできない」
要約すると木村氏は、タックスヘイブンに日本から金を送っても日本の税務当局はすべて把握できるから、会社は税務署に申告せざるをえず、脱税は不可能、と言っているわけだ。
って、おーい。木村氏は、アメリカや欧州各国がずっとタックスヘイブンに情報を公開しろと迫ってきたことを知らないのか? それが拒まれ続けた結果、投資元の匿名性が温存されてきたことは言うまでもない。これを「名前のわからない会社を税金を払わずにつくれる。それだけ」って、どれだけいま世界で問題視されていることを棚上げしたいのか。
たしかに、日本にも、いちおうはタックスヘイブン対策税制というのは昔からあるが、子会社の海外取り引きを把握できるだけで、適用除外会社やファンド(投資事業組合)にしてしまえば、この制度では、捕捉できない。
また、失笑してしまうのは、タックスヘイブンへの資金移動が必ず財務諸表に記載されるなどと断言していること。大嘘もいいとこだ。
実際、マネーロンダリングや粉飾決算、あるいは資金洗浄が目的で、子会社や孫会社、関連会社をいくつも間に挟み、最終的にタックスヘイブンのペーパーカンパニーに投資するケースはいくらでもある(というか、これが一番問題視されている)。そもそも、タックスヘイブンで税金逃れが不可能ならば、なぜ、数多の企業がわざわざ匿名のダミー会社をつくってオフショア取引をしているのか。いくら素人でも、ちょっと考えれば、わかりそうなものだろう。
しかし、木村氏はこんなトンデモ解説を続ける。
「タックスヘイブンがいきなり節税制度や脱税制度だっていうのは間違いだし、こういうところに名前が出てきた会社っていうのは、本当は真っ正直にやってる会社。これがないと、日本の経済活動、金融活動っていうのはメチャクチャになってしまう」
パナマ文書に出てくる会社を「真っ正直」と言い出したところで、さすがにスタジオは「?」という空気が支配し、キャスターの安藤優子氏らも「節税する手段をもたない私たちにしてみれば…」「そのぶんたとえば従業員の給料をあげるとか」「こっちは消費税10%になるのかならないかと気にしているのに」「年金が…」などと口々に反論を試みた。ところが、興奮した木村氏はそれをピシャリと遮り、こんなことを語り始めたのだ。
「これは節税にもなってない。要するにこのシステムを使って、日本のものすごい金融が動いてるわけ。その結果が、たとえば生命保険になっていたり、年金にもなっていたりするわけ。何兆円って金が動いてる、投資しないと、日本に置いておいたって一銭にもならない。だから、その過程のなかで使われている仕組みなわけです。だから、これを否定しちゃうと成り立たなくなってしまう」
タックスヘイブンのおかげで、生命保険や年金が払えるって、このヒトはいったい何を言ってるんだろう。タックスヘイブンはほとんどが隠し資産になるんだから、年金にも生命保険にもなるわけがない。木村氏は、普通の(タックスヘイブンではない)海外ヘッジファンドへの投資と完全に話をすりかえているのだ。
ここまで無茶苦茶を言うのって、木村氏はタックスヘイブンの意味を知らないのか、あるいは、自分の近い会社か人間がタックスヘイブンを使っていて、どうしても擁護したいか、どっちかだろう。
『グッディ!』は、こんなデタラメを誰もさえぎらず、社会の公器たる電波を使ってそのまま垂れ流したのだ。こんなことが許されていいのか。というか、こんな人物を解説者に呼んで、この番組は大丈夫なのか。
それにしても、パナマ文書報道を匿名にすると宣言した読売新聞にしても、木村氏にしても、普段は「国家、国益のことをもっと考えるべき」などとご高説を垂れている方々だ。にもかかわらず、日本国内で納めるべき税金を逃れ、国家の富を流出させているタックスヘイブンの利用を、どうしてここまで全面擁護できるのだろう。
いや、読売や木村太郎にかぎらず、今回のパナマ文書報道で「合法だ」「何が悪い」と開き直り発言をしている連中を見ていると、ホリエモンのような新自由主義者に加え、「国家」や「国の誇り」を強調する保守主義者や右派がやたら目につく。
ようするに、連中は国民の安全や健康でなく、富裕層の利益を守るために、「国家」だの「国益」だのと言っていただけなのだ。
パナマ文書の問題は、連中の言う「国家」の正体、そして本物の「反日」が誰なのかを浮き彫りにしてくれたと言えるだろう。
(宮島みつや)
最終更新:2016.05.11 07:06
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