マーティン・ファクラー特別寄稿

元NYタイムズ東京支局長が警鐘! 新型コロナのフェイクニュースから身を守る方法 「インフォデミック」というもう一つの“感染症”

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

「新しさ」や「感情」が拡散する

 世界的危機においてフェイクニュースが拡散するもう一つの理由は、悪い情報ほどソーシャルメディア上において急速に広がるということだ。不安をあおるショッキングなニュースは大きな注目を集め、読者にクリックやシェアを促す。

 実際、ウソのニュースのほうが正確な事実の報道より素早く拡散することを、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは明らかにしている。「サイエンス」誌に発表した2018年の調査では、2006年から2017までにTwitter上で広がった12万6000個の噂やニュース項目を分析した。結果、「フェイクニュースのほうが事実より多くの人々に届く」ことを突き止めたのだ。平均すると、フェイクニュースは1000~100000人に行き渡るのに対し、正確な事実のニュースが届くのは1000人にも満たない。

「情報の新奇性や、受け手の感情的反応の程度が、拡散する範囲の違いにつながっている」(https://science.sciencemag.org/content/359/6380/1146)

 さらに悲劇的で腹立たしいことに、誤った情報というのは、しばしば政治的意図に基づき、人間によって広められるのだ。悪意のある政治関係者が、政府やNGOやニュースメディアの信用を傷つけるために偽情報を流すのだ。

 アメリカでは、海外の組織に大きな注目が集まっている。米国議会の報告によると、ロシアやイラン、その他の国々の関係者が操る「トロール(ネット荒らし)」や「ボット(自動発言システム)」が、ソーシャルメディアで怒りの感情や混乱を拡散している。彼らは、先進国の民主的政府を破壊し、アメリカをはじめとする敵国を弱体化させる目的でこうした工作を行っているのだ。

 民主的国家の内部にも危険因子は存在する。強硬で極端な政治的主張を掲げる人々がその中心だ。日本では、「ネット右翼」と呼ばれる層が典型例だろう。

 アメリカの場合、一国の大統領であるトランプがここに含まれる。彼は当初、コロナ禍について、彼を政治的に貶めることを目的としたリベラル派やメディアによるフェイクニュースだとして存在を否定した。後に健康の危機が生じている事実を認めたが、漂白剤を飲めばウイルスに勝てるなどと発言した。また、「医学史上、最大の“ゲームチェンジャー”の一つ」と喧伝して、抗生物質アジスロマイシンと抗マラリア薬クロロキンの併用をアメリカ国民に指示した。ところが実際は、これらの薬物は心拍数の異常を引き起こす可能性があり、死に至ったケースも報告されている。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

元NYタイムズ東京支局長が警鐘! 新型コロナのフェイクニュースから身を守る方法 「インフォデミック」というもう一つの“感染症”のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。NYタイムズインフォデミックフェイク・ニュース時代を生き抜く データ・リテラシーマーティン・ファクラーの記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄