オピニオンに関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
マーティン・ファクラー特別寄稿
元NYタイムズ東京支局長が警鐘! 新型コロナのフェイクニュースから身を守る方法 「インフォデミック」というもう一つの“感染症”
yahooや巨大SNSの陥穽、エコーチェンバーの危険
③ 「出所」に注意せよ
ヤフーのようなポータルサイトでは、あらゆる記事が混ぜこぜになっている。そうすると、全てが同列のように扱われている印象になり、人々はその記事がどこから来たものなのかに目を向けなくなる。これこそが誤りなのだ。
単刀直入に言って、記事がどこから来て、誰が書いたものかということこそ全てだ。普段から好きな小説家の作品を買っているように、あなたが信頼するメディアと著者の記事を選ぶべきだ。
ニュースは商品ではない。「質」が重要だ。よく吟味して信頼できる場所から入手すべきだ。ベストな方法は、本物であることを確かめた上で、信頼するメディアのウェブサイトやアプリ、刊行物から直接ニュースを得ることだ。YahooやFacebookやGoogleなどを読み漁るだけではいけない。賢く、判断力のあるニュースの受け手になろう。
④ 「エコー・チェンバー」
私たち人間が陥りがちな大きな落とし穴の一つに、「確証バイアス」がある。これは、私たちが本来持っている信念を確認、強化するように情報を探し、解釈し、好み、そして思い出す傾向のことだ。
この傾向は、ソーシャルメディア上で高まる。人は、その有効性に関係なく、自らの政治的意見を支持する情報に対してますます偏っていく。私たちの多くは、同じ意見を共有するFacebookやTwitterのユーザーを探してしまう。自分が正しいことを確かめたいのだ。
これこそ、アメリカで「エコー・チェンバー」と呼ばれる現象の源だ。私たちは、自分の意見や信念がそのまま跳ね返って聞こえてくるような、ソーシャルメディアの環境を作り上げてしまう。「同じ考えの者同士のエコー・チェンバーの中で情報を得ながら、陰謀論と戦わなければならないことが大きな課題だ」と、先述のネイチャー誌の記事は主張する。
「新型コロナウイルスの偽情報についての大きな課題は、それがどれだけ政治化されたものであるかということだ。人々は、自らの政治的意見と一致する情報である場合、それが間違っていたりデマであったりしても正しく判断できなくなってしまう、ということが明らかになった」
⑤ 巨大ソーシャルメディアを信じるな
現代のフェイクニュースの横行に関して、TwitterやFacebookやLINEなどの巨大ソーシャルにも責任がある。ソーシャルメディア会社は責任を回避したいがゆえに対処が遅くなりがちで、結果的に誤報を広げる手段にされてしまう。彼らは表現の自由を喧伝するが、真の目的は商業的利益だ。それらのサービスはあくまで、人々のクリックと迅速な拡散による利益を稼ぐために設計されている。
TwitterやFacebookは、「当局の情報」がトップに来るような仕組みに変えていると主張する。ユーザーが信頼できる情報を見つけやすくするため、Twitterは#coronavirusを使った検索を促進し、日本をはじめとする国々で当局の医療情報を優先していると述べている。
日本では、Facebookは誤報と有害なコンテンツを制限するために厚生労働省と協力し、また人々を当局の情報源にアクセスさせるためにWHOとも連携を図っていると発表している。Facebookは現在、ウイルスへの誤った対処法や治療を妨げる陰謀論など、基準に満たないコンテンツを削除している。
(マーティン・ファクラー)
マーティン・ファクラー(Martin Fackler)
元ニューヨークタイムズ東京支局長
アメリカ合衆国ジョージア州出身。ダートマス大学卒業後の1991年、東京大学大学院に留学。帰国後、イリノイ大学、カリフォルニア大学バークレー校で修士号取得。96年よりブルームバーグ東京支局を経て、AP通信社ニューヨーク本社、東京支局、北京支局、上海支局で記者として活躍。2003年よりウォール・ストリート・ジャーナル東京支局特派員。2005年よりニューヨーク・タイムズ東京支局記者となり、2009~2015年に支局長を務める。現在はフリージャーナリストとして日本を拠点に活動。著書に『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』(双葉新書)、『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』(双葉社)、『米国人ジャーナリストだから見抜けた日本の国難』(SB新書)など。
『フェイク・ニュース時代を生き抜く データ・リテラシー』(光文社新書)を4月に出版。
ツイッター:@martfack
ホームページ:https://martinfackler.com
『フェイク・ニュース時代を生き抜く データ・リテラシー』(光文社新書)
SNSで誰もが発信し、本物そっくりのディープ・フェイクや扇動があふれ、人々が情報のタコツボに陥っているいま、事実を見極める力と、「ファクトチェッカー」「ゲートキーパー」を担うジャーナリストが不可欠だ。元ニューヨーク・タイムズ東京支局長が、誰もがすぐできる情報収集を手ほどき。また、経営危機からV字回復を遂げた同社にメディア再興のヒントを探る。カギは、デジタル転換とスマホに合わせたニュース発信。そして、日本の新聞は権力の広告塔をやめて調査報道に注力し、紙信仰を捨てよ!と提言する。
最終更新:2020.05.10 02:39
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