下町ボブスレー問題でジャマイカバッシング! 背景に右派メディアと安倍応援団の「日本スゴイ」の虚妄

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

安倍首相が「ものづくり日本」の象徴に担ぎ出した下町ボブスレー

 ようするに、今回の問題は下町ボブスレーのソリがラトビア製より劣っていたうえ、リスクがあったため、やむをえず選択した結果だったのだ。

 それを「契約」をふりかざし、途上国として支援が必要な場合もあるジャマイカのような国に「損害賠償」を請求するなんていうのは、先進国の姿勢とは思えないし、オリンピックの精神からしてもありえない。

 メディアやネットは「下町の町工場の人たちの義理人情をジャマイカは踏みにじった」などと騒いでいるが、訴訟をちらつかせるいまの態度は「義理人情」などではなく、むしろ最初から「宣伝とマーケティング」目当てだったことを証明したようなものではないか。

 いや、実際、そうなのである。この下町ボブスレーのプロジェクトは、公益財団法人の大田区産業振興協会が主導して立ち上げたもの。「下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会」の公式サイトに〈大田区や日本の技術がPRできるのではという想いからボブスレーに挑戦しました〉とあるように、最初から宣伝のために企画し、技術力を世界にアピールできるのと同時に、すぐに食い込みやすそうなスポーツとして、マイナーなボブスレーに照準をあわせたにすぎない。

 また、下町ボブスレーは大田区の町工場で一から十まで手づくりしているような物語が喧伝されているが、肝心の部分は、大田区の町工場の技術ではない。    

 公式サイトにもあるように、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製のボディ製作は、レーシングカー開発やCFRP部品製造で有名な滋賀県の東レ・カーボンマジック(前・童夢カーボンマジック)、空力解析は株式会社ソフトウエアクレイドル、ランナーと呼ばれるボブスレーの刃の部分の設計に関しては東京大学大学院・工学系研究科の加藤孝久教授が担当しており、下町とはなんら関わりのない、大きい規模の企業や組織も複数参画しているのだ。

 しかも、この下町ボブスレーは安倍政権も全面的にバックアップしてきた。  

 その歴史はソチオリンピックのときまで遡る。13年2月の衆議院本会議における施政方針演説で安倍首相は「小さな町工場からフェラーリやBMWに果敢に挑戦している皆さんがいます。自動車ではありません。東京都大田区の中小企業を経営する細貝さんは仲間とともにボブスレー競技用ソリの国産化プロジェクトを立ち上げました。世界最速のマシンをつくりたい。30社を超える町工場がこれまで培ってきたものづくりの力を結集して、来年のソチ五輪を目指し、世界に挑んでいます。高い技術と意欲をもつ中小企業、小規模事業者の挑戦を応援します」と紹介したのだ。

 こういった流れを受け、13年から15年にかけて、下町ボブスレーは経済産業省のバックアップも受けることになる。「JAPANブランド育成支援事業」に採択され、上限2000万円とされる補助金も交付されることになったのだ。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

下町ボブスレー問題でジャマイカバッシング! 背景に右派メディアと安倍応援団の「日本スゴイ」の虚妄のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。編集部の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄