柳広司、中原昌也、松尾スズキ、恩田陸、赤川次郎…高まる“オリンピック圧力”に抗い、東京五輪に異を唱える作家たち

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「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)17年12月号

 先日、東京オリンピック開催まで1000日を切り、日本各地で様々な催しが開かれた。

 しかし、ご存知の通り、東京オリンピックに向けての準備は遅々として進まず、どころか、「東京オリンピックのためなら理不尽なことも我慢しろ」とでも言いたげな言説すら跋扈しはじめている。

 その代表格が、7月24日付朝日新聞のインタビューに応じた椎名林檎のこのような発言だろう。

「正直「お招きしていいんだろうか」と言う方もいらっしゃるし、私もそう思っていました。でも五輪が来ることが決まっちゃったんだったら、もう国内で争っている場合ではありませんし、むしろ足掛かりにして行かねばもったいない。
 だから、いっそ国民全員が組織委員会。そう考えるのが、和を重んじる日本らしいし、今回はなおさら、と私は思っています。取り急ぎは、国内全メディア、全企業が、今の日本のために仲良く取り組んでくださることを切に祈っています」

 まさに戦時中の「一億層総火の玉」を彷彿とさせる言葉だ。東京五輪をめぐっては、招致裏金問題、新国立競技場見直し、招致時は7000億円だったのにいつのまにか3兆円にも膨れあがった費用……数々の問題が発覚し解決されないまま放置されている。そんなものになぜ国民全員が協力しなくてはならないのか。どう考えても納得できない言い草だが、東京オリンピックについて批判や疑問を呈すると、「決まったことにいまさらグチグチ文句を言うな」「反日」と袋叩きにあうという風潮が日増しに強くなっている。

 そんな“オリンピック圧力”が高まるなか、作家の柳広司氏が勇気ある言葉を発信していた。それは、「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)2017年12月号のインタビューでのこと。柳といえば戦前の日本陸軍諜報機関をモデルとした小説『ジョーカー・ゲーム』(KADOKAWA)シリーズが有名だが、インタビューのなかで柳は人々がしっかりとした現状認識をせぬままひとつの方向にいっせいに流されていっている状況を批判した。

「今度の東京オリンピックは復興五輪と言いながら、明らかに東北復興にマイナスが出ている。それなのにみんな歓迎ムードに流されているのが気になって。仕事柄、戦時中の資料を読むことが多いんですが、太平洋戦争開戦当時の日本人と重なって見えるんですよ」

 オリンピックの熱狂に流される様は、太平洋戦争開戦時の日本人と重なる――。椎名の「国民全員が組織委員会」発言などその最たるものだろう。

 柳が現在の日本社会の現状を太平洋戦争時の日本社会と重ね合わせて警鐘を鳴らしたのは今回が初めてではない。柳氏は朝日新聞の「声」欄に〈小説家・柳広司〉として投稿。そのなかで、治安維持法と共謀罪の類似点の多さについて触れ、歴史からの教訓を忘れてはいけないことを読者にこう促した。

〈治安維持法は、成立当初、政府も新聞各社も「この法律は一般人には適用されない」「抜くことはない伝家の宝刀」と明言していました。しかし、法律制定後の運用は事実上現場(警察)に丸投げされ、検挙率を上げるために多くの「一般人」が検挙され、取り調べの過程で殺されたり、心身に生涯癒えぬ傷を負わされたりしたことは周知の事実です。
 この結果に対して、治安維持法を推進した政治家や官僚たちが責任を取ることは、ついにありませんでした〉

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