『教団X』で話題の芥川賞作家・中村文則の安倍政権批判、改憲阻止の決意に震えた! この危機感を共有せよ!

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〈正社員が「特権階級」のようになっていたため、面接官達に横柄な人達が多かったと何度も聞いた。面接の段階で人格までも否定され、精神を病んだ友人もいた。
「なぜ資格もないの? この時代に?」。そう言われても、社会の大変化の渦中にあった僕達の世代は、その準備を前もってやるのは困難だった。「ならその面接官達に『あなた達はどうだったの? たまたま好景気の時に就職できただけだろ?』と告げてやれ」。そんなことを友人達に言っていた僕は、まだ社会を知らなかった〉

 この大学時代に、中村は〈奇妙な傾向を感じた「一言」があった〉と振り返る。それは、中村の友人が〈第二次大戦の日本を美化する発言〉をし、中村が反駁、軍と財閥の癒着などについて語ると、その友人は一言、「お前は人権の臭いがする」と言った。

〈「人権の臭いがする」。言葉として奇妙だが、それより、人権が大事なのは当然と思っていた僕は驚くことになる。問うと彼は「俺は国がやることに反対したりしない。だから国が俺を守るのはわかるけど、国がやることに反対している奴らの人権をなぜ国が守らなければならない?」と言ったのだ〉

 これはまるで自民党の憲法改正草案の本音のような一言だ。実際、自民党が発行している草案のQ&Aでは〈天賦人権説に基づく規定振りを全面的に見直しました〉と書かれているが、安倍首相が改憲の第一歩として捉えている緊急事態条項も、この草案では武力攻撃などが起こった際には人権が制限されることが明記されている。そしてもっとも恐ろしいのは、こうした安倍首相が目論む改憲の中身と一致するかのように、「国がやることに反対している奴らの人権をなぜ国が守らなければならない?」という安倍シンパの声が、いま、ふつうの顔をしてまかり通っていることだ。

 もっとも、基本的人権を破壊しようとするこの流れについて、中村も最初から危機感を抱いていたわけではなかった。

〈当時の僕は、こんな人もいるのだな、と思った程度だった。その言葉の恐ろしさをはっきり自覚したのはもっと後のことになる〉

 中村はその後、東京でフリーターや派遣労働者として生活を送る。「勝ち組」「負け組」に色分けされ、格差はより明確になっていく。そんなとき、バイト仲間からまたしても戦時中の日本を美化する本を手渡された。当然、中村は黙っていなかったが、すると今度は「お前在日?」と言われた。

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