「安保法制は非常に不安」発言も!『あしたのジョー』のマンガ家ちばてつやが語る壮絶な戦争体験と反戦への思い

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〈逃避行が続く中、私たち一家は中国人の徐集川さんと再会した。徐さんは父の会社の部下だった人で、父とも親しく、私たち兄弟のこともかわいがってくれていた。徐さんは見つかれば自らも危険なことを覚悟で、「ここにいたら凍え死んでしまう」と、私たち一家を、中国人街にある自宅の屋根裏にかくまってくれたのだった〉(前掲書より)

 こうして、ひとまず身の安全を確保した屋根裏生活は、冬が過ぎるまでの間数週間続く。そして、この屋根裏生活での体験が、後の漫画家・ちばてつやをつくる礎となったという。

〈その屋根裏では、寒かったですけども、母親が一生懸命本を読んでくれたり、それから、一生懸命つくり話をしたり、してくれたんですけども、尽きちゃったもんだから、私に今度絵を描いてあげなさいとか、弟たちは小さいですから、私が六歳ですから長男の。下が4歳の、2歳の、それから産まれて何ヵ月っていう。それがすぐに泣くんですよね、外へ出たがって。狭いところにいるから。そういうところで弟たちのために、まあ、昔は漫画は知らないから、ただ絵を描いているだけなんだけど、その絵の説明をすると、弟たちがもうワクワクするわけね、目を輝かして。この人はどこへ行くの、とか、この馬はどこへ行くのっていうようなことを聞くわけ。すると一生懸命考えて、そうなるんだろうってことを、ストーリーをつくっているようなものですよね、つくりながらお話して、そういうことがね、私が漫画家になるための原点、その時は気がつかなかったけど、とても大事な時間だったのかなというように思いますけども〉(前掲ラジオ番組より)

 この時の体験は、前掲の『ちばてつやが語る「ちばてつや」』でも、以下のように綴られている。

〈私がそれまでに読んだ童話や昔話を混ぜこぜにして考えただけの話なのだが、絵にして見せると弟たちがわっと喜ぶ。そのわくわくする様子を見て、子供ながらに「描いてよかった」と満足感を感じたのだ。思えば「自分が作った絵と話で人を喜ばせることができる」と読者を意識したのは、この時が最初だったように思う〉

 前述した通り、徐さんの力添えもあり、その後、ちば一家は誰ひとり欠けることなく、無事に日本に帰ってこられた。しかし、それはもう「死」と隣り合わせの、ギリギリの状態だったようだ。

〈引揚船に乗ったからといって、安心はできなかった。相変わらず乏しい食糧事情の中、私の弟たちはあばら骨が浮いてお腹が異常に膨らんでいるような栄養状態だった。遊び仲間の子はそこで力尽きて亡くなり、出航したその船から水葬に付された。昨日まで一緒に船の中を遊び回っていたのに、今日はもういない。「どうしていないの?」と母に尋ねると、「あの子は死んだのよ。かわいそうに……」と赤い目をして涙ぐんでいた〉(前掲書より)

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ちばてつやが語る「ちばてつや」 (集英社新書)

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