「僕は、淳君に映る自分を殺したかった」酒鬼薔薇聖斗が手記に綴った性衝動と本当の動機

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 さらにブロックで原形を止めないほど猫を滅茶苦茶にしたAは不思議な充足感とともに、愛する人を奪った「死」に対する「自分の勝利」、「死を手懐ずける」ことにエクスタシーを感じたのだ。その快楽からAは次々と猫殺しを重ねていく。殺して解体することが快楽となったのだ。そして徐々に「“人間”を壊してみたい」との思いに囚われていく。

 そして97年3月16日、面識もなかった2人の少女をナイフとハンマーで襲い、うち一人が亡くなった。だがAの犯行は誰にもバレず「拍子抜け」したという。あれは夢だったのか?と自分が幽霊か透明人間にでもなったような気持ち悪さを抱き、さらに自分で自分をコントロールできないような状態になっていったという。

 それから2カ月後の5月24日、Aは淳君を殺害する。だが本書には淳君殺害に関し、猫殺しのような詳細なシーンは描かれていない。それは遺族に対する配慮なのか言葉にできないためのかわからないが、だが、それ以上に衝撃的な事実が記されている。それが淳君殺害の“動機”だ。これまでの報道などでもAが淳君を殺害したのは偶然であり、淳君への情緒的交流、憎しみも愛情も持ったことがないと一貫して否定してきた。しかしそれは違った。

「淳君が初めて家に遊びにきたのは、ちょうど祖母が亡くなった頃だった。その時から、僕は淳君の虜だった。(略)祖母の死をきちんとした形で受け止めることができず、歪んだ快楽に溺れ悲哀の仕事を放棄した穢らしい僕を、淳君はいつも笑顔で無条件に受け容れてくれた。淳君が傍らにいるだけで、僕は気持ちが和み、癒された。僕は、そんな淳君が大好きだった」

 一体これをどう読み解くべきなのか。だがAは自分が受け容れられている、淳君のキラキラ輝く瞳に自分も含まれることが耐えられなかったという。

「僕は、淳君が怖かった。淳君が美しければ美しいほど、純潔であればあるほど、それとは正反対な自分自身の醜さ汚らわしさを、合わせ鏡のように見せつけられている気がした(略)僕は、淳君に映る自分を殺したかった」

「僕と淳君との間にあったもの。それは誰にも立ち入られたくない、僕の秘密の庭園だった。何人たりとも入ってこれぬよう、僕はその庭園をバリケードで囲った。(略)淳君の愛くるしい姿を、僕は今でもありありと眼の前に再現できる」

 そしてAは淳君を殺害し、頭部を切断した。さらにAはその頭部を校門の前に置く前に、自宅風呂場に持ち込み全裸になり鍵をかけた。

「この磨硝子の向こうで、僕は殺人よりも更に悍(おぞ)ましい行為に及んだ。
 行為を終え、再び折戸が開いた時、僕は喪心の極みにあった。(略)僕はこれ以降二年余り、まったく性欲を感じず、ただの一度も勃起することがなかった」

 

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