「僕は、淳君に映る自分を殺したかった」酒鬼薔薇聖斗が手記に綴った性衝動と本当の動機

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『絶歌 神戸連続児童殺傷事件』(太田出版)

 1997年神戸で起きた連続児童殺傷事件。当時14歳だった加害男性“酒鬼薔薇聖斗”が、17年という時を経て、「元少年A」の名で出版した手記『絶歌 神戸連続児童殺傷事件』(太田出版)が大きな波紋を呼んでいる。

 発売日となった本日午後には、当時小学校6年生だった息子・淳君を殺された父親の土師守さんが、弁護士を通し「以前から彼がメディアに出すようなことはしてほしくないと伝えていましたが、私たちの思いは完全に無視されてしまいました」と、即時の出版中止と回収を求めた。

 確かに、加害者が17年も経た今になって手記を出版するということは、遺族にさらなる苦しみを与える行為かもしれない。また多くの人の目に触れ話題になることで、興味本位に騒がれる危惧もあるだろう。本書の最後には「被害者のご家族の皆様へ」として謝罪を表明もしているが、それを遺族たちが額面どおりに受け取れるはずもない。

 しかしその内容を読むと、同書はこれまでの猟奇的事件を起こした犯罪者の手記にあるようなものとは少し違う。そこに書かれているのは、自己正当化の弁明やうわべの謝罪ではなく、恐ろしいほどに自己を客観的に観察し、自分の犯罪や心理を見つめ直した犯罪分析書である。

 中でも、特筆すべきは、これまで隠していた真の犯行動機、自分の性癖にまで踏み込んで語っていることだろう。

「僕はこれから、精神鑑定でも、医療少年院で受けたカウンセリングでも、ついに誰にも打ち明けることができず、二十年以上ものあいだ心の金庫に仕舞い込んできた自らの“原罪”ともいえる体験を、あなたに語ろうと思う」

 こう前置きしたうえで、Aは自らの犯行のキーワードが“性的サディズム”にあり、それが劣等感の源泉だとして死と性について分析していく。

 最愛の祖母の死がひとつのきっかけとなり「死とは何か」という問いに取り憑かれたという当時10歳だったAは、祖母への思い出に浸るため、生前祖母が暮らした部屋に行きそこで初めての精通を経験したという。

 Aは祖母を思い愛用していた按摩器を取り出し、祖母の位牌の前に正座し、祖母を癒したであろう心地よい振動に身を任せる。そんなAが、何気なしにそれをペニスにあてた時だった。

「その時突然、身体じゅうを揺さぶっている異質の感覚を意識した。まだ包皮も剥けていないペニスが、痛みを伴いながらみるみるふくらんでくる。(略)遠のく意識のなかで、僕は必死に祖母の幻影を追いかけた。祖母の声、祖母の匂い、祖母の感触……。涙と鼻水とよだれが混じり合い、按摩器を掴む両手にポタポタと糸を引いて滴り落ちた」

 Aにとってそれはとんでもなく穢らしくなぜか激痛も伴うものだったが、途中でやめることはできず、その後も祖母の遺影に見つめられながら“冒涜の儀式”を続けたという。

「僕のなかで、“性”と“死”が“罪悪感”という接着剤でがっちりと結合した瞬間だった」

 精通を経験したAは次に猫殺しに走る。その時の感覚をAはこう記述している。

「風邪の引き始めのような、あの全身の骨を擽(くすぐ)られるような、いても立ってもいられなくなる奇妙に心地よい痺れと恍惚感……。
 間違いない。“ソレ”は性的な衝動だった」

 Aはコンクリートブロックを猫に思い切り投げつける。あがく猫はAの手を思い切り引っ掻いた。

「——バンッーー
 何かが破裂する音が聞こえた。僕の中で日に日に邪悪な膨らみを増していた真っ黒い風船が、この目の前の美しき獣のいまわの一撃によって、今まさに破裂したのだ」

 その際、なぜか逆に冷静になったAは自室からカッターを持ち出し、猫の両目を横一文字に切り、クビを締め上げ、脇腹を抉った。

「心臓が大音響でドラムを叩く。その演奏に呼応するように、“もうひとつの心臓”が首を擡(もた)げた。僕は勃起していた」

 

 さらにブロックで原形を止めないほど猫を滅茶苦茶にしたAは不思議な充足感とともに、愛する人を奪った「死」に対する「自分の勝利」、「死を手懐ずける」ことにエクスタシーを感じたのだ。その快楽からAは次々と猫殺しを重ねていく。殺して解体することが快楽となったのだ。そして徐々に「“人間”を壊してみたい」との思いに囚われていく。

 そして97年3月16日、面識もなかった2人の少女をナイフとハンマーで襲い、うち一人が亡くなった。だがAの犯行は誰にもバレず「拍子抜け」したという。あれは夢だったのか?と自分が幽霊か透明人間にでもなったような気持ち悪さを抱き、さらに自分で自分をコントロールできないような状態になっていったという。

 それから2カ月後の5月24日、Aは淳君を殺害する。だが本書には淳君殺害に関し、猫殺しのような詳細なシーンは描かれていない。それは遺族に対する配慮なのか言葉にできないためのかわからないが、だが、それ以上に衝撃的な事実が記されている。それが淳君殺害の“動機”だ。これまでの報道などでもAが淳君を殺害したのは偶然であり、淳君への情緒的交流、憎しみも愛情も持ったことがないと一貫して否定してきた。しかしそれは違った。

「淳君が初めて家に遊びにきたのは、ちょうど祖母が亡くなった頃だった。その時から、僕は淳君の虜だった。(略)祖母の死をきちんとした形で受け止めることができず、歪んだ快楽に溺れ悲哀の仕事を放棄した穢らしい僕を、淳君はいつも笑顔で無条件に受け容れてくれた。淳君が傍らにいるだけで、僕は気持ちが和み、癒された。僕は、そんな淳君が大好きだった」

 一体これをどう読み解くべきなのか。だがAは自分が受け容れられている、淳君のキラキラ輝く瞳に自分も含まれることが耐えられなかったという。

「僕は、淳君が怖かった。淳君が美しければ美しいほど、純潔であればあるほど、それとは正反対な自分自身の醜さ汚らわしさを、合わせ鏡のように見せつけられている気がした(略)僕は、淳君に映る自分を殺したかった」

「僕と淳君との間にあったもの。それは誰にも立ち入られたくない、僕の秘密の庭園だった。何人たりとも入ってこれぬよう、僕はその庭園をバリケードで囲った。(略)淳君の愛くるしい姿を、僕は今でもありありと眼の前に再現できる」

 そしてAは淳君を殺害し、頭部を切断した。さらにAはその頭部を校門の前に置く前に、自宅風呂場に持ち込み全裸になり鍵をかけた。

「この磨硝子の向こうで、僕は殺人よりも更に悍(おぞ)ましい行為に及んだ。
 行為を終え、再び折戸が開いた時、僕は喪心の極みにあった。(略)僕はこれ以降二年余り、まったく性欲を感じず、ただの一度も勃起することがなかった」

 

 Aが淳君に抱いていた歪んだ感情。そして風呂場でどんな行為を行ったのか、それは記されていない。しかし、少なくともAが淳君に“性的”とも思える感情を持っていたことが伺えるのだ。

 このように本書ではA自身が「性障害」だと認め、その犯行と性的衝動の関係が赤裸々に描かれる。もちろんだからといってAが行った行為は許されるべきものではないし、遺族の怒りも当然だ。しかしこうした猟奇的犯罪に対し、加害者自らが分析し世に問うことは、同類の犯罪研究や抑止という意味で、有益な部分もあるのではないか。

 ただ、この本にはひとつだけ気になる大きな点がある。それは文体のことだ。逮捕、少年院での生活から現在に至までの生活は、淡々と描かれているのに、犯行に至るまでの描写は、文学的ともいえるような過剰な表現を使って、まさに狂気のリアリティを感じさせる迫力のある筆致で描いているのだ。

 これはようするに、Aが犯行について回想するとき、性的サディズムの興奮から逃れられず、それが言葉となって漏れだしてきているのではないか、という気がするのだ。

 犯罪学の専門家の間では、性犯罪者の矯正は困難だという見方もある。しかしもしそうならば、Aにとって今回の手記のようにその思いを文章に吐き出すことは必要な作業なのかもしれない。言葉というかたちで狂気を発露させることがAの再犯を防ぐひとつの方法になれば……。この手記を読みながら、そう考えざるを得なかった。
(田部祥太)

最終更新:2015.06.12 02:11

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