日本アカデミー賞受賞!『永遠の0』は平和ボケの戦争賛美ファンタジーにすぎない

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 戦時中、多くの文学者が転向するなか数少ない反戦を貫いた詩人・秋山清が発表した、「送行」という詩を読んでもらいたい。

 安田末吉は三十五才。/株屋の店員から/徴用工―応召。/この飛躍は/米軍マーシャルに迫る/緊迫と軌を同じうする。/ゆく者は生還を期すにあらず。/しかも送行の三十里の車中は/なごやかな談笑にすぎた。/暮れなずむ印旛沼は/しろく冬ぞらをうつし/兵舎町の駅のホームに立って/君は手をあげた/君をおいてわれわれは走り去った。/松山や/麦畑や/なだらかな丘の勾配や/雑木林や/冬枯れ乾いた風景を送って/電車は灯のない東京の街にかえった。/家のなかはひっそりとした団欒であった。/母と妻と七才の娘と/明日からこのさびしさに親しむだろう

 現代の読者には、これのどこが反戦なの?とピンと来ないかもしれない。でも、これが精一杯の抵抗とされていたのが、当時の空気なのだ。

 そんな中で、軍人が「生きて帰りたい」と公言して、「海軍一の臆病者だなあ、お前は」的な笑い話ですませられるわけがないだろう。

 そんなところから、最初に『永遠の0』を読んだときは、もしかして、これ、タイムスリップ小説なんじゃないか、と思ったほどだ。実は、宮部は平成の世界からタイムスリップしてきた未来人で、「死にたくない」っていうのは、現代人の感覚で軍の空気読まずに言っちゃってる的なことなのか、と。それくらい、宮部のメンタリティが現代人そのままなのだ。

 宮部が真珠湾、ミッドウェー、ラバウル、特攻と派手めな有名どころの戦場にばかり都合良く顔を出しているのも、坂井三郎、西澤廣義といったスター・パイロットと絡むのも、歴史ダイジェスト的なタイムスリップものと思えば、納得できる。

 しかし、当たり前だが、最後まで読んでも「宮部は未来人だった」というオチは出てこなかったし『永遠の0』はタイムスリップ小説ではなかった。スリップしているのは百田尚樹の頭のほうだったのである。戦後の平和ボケ的な価値観そのままで戦争を描いているだけ。しかも、本人はそのことに全く気づいていない。

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