年末特別企画 リテラの2015年振り返り

浅田真央からセブンイレブン、又吉も…リテラが選ぶメディアタブー大賞2015 第10位〜第6位

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左・「Number」890号(文藝春秋)/中・セブン-イレブン公式ウェブサイトより/右・『第2図書係補佐』(幻冬舎よしもと文庫)


 2015年も残すところあと少し。テレビでは中身のないから騒ぎ特番が延々流されているが、リテラは今年もこうした空気に背を向けて、恒例の「メディアタブー大賞」をお届けしよう。
 いうまでもないが、新聞やテレビ、雑誌などの大手メディアは報道することのできない多くのタブーを抱えている。しかし、今年はこれまで以上にそれが目立った年だった。多くの事実が圧力でつぶされ、いくつもの意見が自主規制で封じられながら、あたかもそんな事態がなかったかのようにごまかされてきた。
 だとしたら、今年ほど、この企画が必要な年はないだろう。2015年、メディアが隠蔽し、凍りついた10のタブーを選び、もっともタブー度の強かったものに大賞を授与するこの企画。まずは、前編、10〜6位からいってみよう。

★10位 父親逮捕もメディアは沈黙、演技批判も自粛…浅田真央タブーはどこからくるのか

 引退説が囁かれたなかで現役復帰を表明したばかりのフィギュアスケート・浅田真央選手に今夏、降りかかったのが、「週刊新潮」(新潮社)が記事にした実父の交際女性に対するDVの末の傷害罪逮捕報道だ。国民的人気のアスリートの実父によるショッキングな逮捕劇──だが、テレビはこれを完全に黙殺、新聞も一部が小さなベタ記事で扱うだけにとどまった。
 しかも浅田選手の場合、この一件以前から、ネガティブな情報や浅田選手にとって気に入らない報道をしたメディアが激しい抗議にさらされ、すぐに謝罪・撤回するという状況がつづいていた。たとえば2008年、『とくダネ!』(フジテレビ)で「実力はキム・ヨナが上」と思わせるような発言が飛び出すと、ファンや視聴者が猛抗議。謝罪と訂正を行っただけでなく、浅田選手に厳しい評価をしたコメンテーターはその後しばらく番組に出演できない状況が起きたともいわれる。さらに評伝やエッセイ集の出版計画も、浅田選手サイドが取材方法や告知ポスターのコピーに不快感を示したことで2冊ともお蔵入り。国民的アイドルである浅田選手にメディアは気を使い、逆鱗にふれることを恐れてきた。
 こうした“真央ちゃんタブー”が生まれたのは、一説には逝去した母・匡子さんが娘をスキャンダルから守るために、気に入らない報道や記事に強固にクレームをつけてきたことが原因ともいわれている。が、母が亡くなったいまでも浅田選手のネガティブな情報をメディアがタブー扱いしているのは、浅田選手のマネジメント会社からの圧力だけでなく、熱心なファンからの抗議を恐れているからだという。
 もちろん父親の逮捕と浅田選手はまったく関係がなく、彼女に責任がないことは当然の話だ。しかし昨年、タレントのローラの父親が国際手配の末に逮捕された際、芸能メディアや週刊誌がこぞってこの事件を取り上げ、あたかもローラにも責任があるかのように報道したことと比較すると、メディアの反応は雲泥の差。
 父親の事件はともかく、冷静にアスリートとしての浅田選手を検証することさえ困難なこの状態は、本人にとってもよいとはいえない状況なのではないだろうか。

★9位 自殺者も続出! 「ブラック企業大賞2015」に選ばれたセブン-イレブンを放置するメディアの罪

 今年の栄えある「ブラック企業大賞2015」を受賞した、コンビニ最大手・セブン-イレブン(以下、セブン)。本サイトでは以前よりセブンのブラック体質を追及してきたが、この大賞受賞を報じたのは一部のネットメディアのみ。新聞・テレビ、週刊誌は完全に無視を決め込んだ(唯一、スポーツ報知が報じたものの、なぜか30分もしないうちに削除された)。居酒屋チェーンのワタミや、すき家のゼンショーHDのブラック問題についてメディアがこぞって報じていたのに比べると歴然の差。まさに“セブイ-レブンタブー”と呼べるだろう。

 しかも、セブンのブラック体質はほかのブラック企業と比較しても闇が深い。奴隷契約のような本部有利のフランチャイズ契約、それに追いつめられて続出した加盟店オーナーの自殺、契約のしわ寄せによるアルバイト酷使と低待遇……。フランチャイズシステムそのものに搾取の構造が組み込まれており、個別の案件だけでなく、本来ならセブンイレブンの企業体質そのものが問われてしかるべき問題なのだ。

 しかも、こうしたセブンのブラック体質が一向に改善されないのには、メディアの問題と無関係ではない。

 本サイトでも繰り返し指摘したが、ひとつはセブンの巨大広告費の存在が大きい。たとえば2014年2月期には524億円もの広告費が投入されるなど、マスコミとってセブンは貴重な大スポンサーだ。また、週刊誌や新聞にとってもコンビニはいまや書店に代わって最有力の販売チャンネルであり、なかでも最大手のセブンに置いてもらえるかどうかは死活問題。さらにセブンの鈴木敏文会長は、雑誌や書籍の流通の生命線である取次大手「トーハン」の取締役も務めている。実際、鈴木会長の独裁体制による社内の閉塞状況をあばいた『セブン-イレブンの正体』(古川琢也、金曜日取材班/金曜日)が取次より配本拒否にあうという“圧力”事件も起こっている。

 数々の自殺者まで出ているにもかかわらず、その問題を報じることができない新聞やテレビ、週刊誌……。異常な搾取構造を自社の利益のために放置するメディアの罪は重い。

★8位 又吉直樹・芥川賞受賞&『火花』絶賛の嵐で出版界に誕生した“又吉タブー”とは

 今年出版界で最大の話題となったのは、なんといってもピース・又吉直樹の芥川賞受賞と『火花』(文藝春秋)230万部のヒットだろう。今年の書籍と雑誌の販売額は、前年より5%減の1兆5200億円程度で、1兆6000億を下回るのは32年ぶり。落ち込み幅も統計開始の昭和25年以来、最大となった。そんななかで唯一、明るい話題となったのが又吉センセイの活躍だった。しかし、これによって新たな“作家タブー”が誕生したのだ。
 現在も又吉には、小説・エッセイの執筆、いやせめてインタビューだけでも載せたいと編集者たちが列をなしている状態。そうなると、週刊誌はスキャンダルどころかちょっとした悪口も書くことはできない。実際、芸能人のスキャンダル記事が毎号のように賑わう週刊誌だが、又吉の芥川賞受賞以降、彼の美談しか掲載されていないのだ。
 また、こうした作家タブーという構造的な問題とは別に、又吉本人だけではなく、作品に対しても“悪く言ってはいけない”という空気が流れている。
 というのも、又吉自身の本が売れるのはもちろん、読書家の又吉はほかの小説作品もテレビや雑誌などで積極的に推薦、出版界にとってはスポークスマンの役割も進んではたしてくれる、非常にありがたい存在となっている。たとえば、芥川賞ノミネート直前に出演した『アメトーーク!』(テレビ朝日)で又吉は、中村文則の『教団X』(集英社)を紹介。ライト層にはハードルの高い純文学にもかかわらず、『教団X』はバカ売れした。
 このように、又吉の出版界に対する影響力は絶大であり、それゆえ又吉作品を批判できない空気がつくり上げられてしまったのだ。それは出版界だけの話ではなく、読者側も同様だ。現に『報道ステーション』で古舘伊知郎が「芥川賞と本屋大賞の区分けがだんだんなくなってきた気がするんですけどね」「僕なんかの年代は『あれ?』っていう感じもちょっとするんですけどね」と雑感を述べただけで、たちまちネットは炎上した。
 しかし、純文学の批評では、多少の批判が出るのはいたってふつうのこと。芥川賞の受賞作に対して「話題狙いじゃないのか」「あの作品のほうが出来は上」などと賛否が語られるのは定番であり、文学観はそれぞれだから賛否あって当然。だが、又吉の『火花』についてはそれすらないのだ。
 もちろん、本人が意図してバッシングを封じ、作品批評をタブー化しているわけではない。しかしあまりにも出版界の“神様、仏様、又吉様”頼みは目に余る……というわけで6位という高順位に。来年は出版界も、又吉ひとりにすべてを負わせるような事態にならなければいいのだが。

★7位 原発タブー、完全復活! 原発再稼働で広告バラマキ&芸能人・文化人の囲い込みの悪夢が再び!

 今年は原発再稼働に向けて大きな舵が切られた1年だった。8月には川内原発が再稼働、先日も福井地裁が高浜原発再稼働の差し止めを命じた仮処分決定を取り消し、同じく大飯原発の3、4号機を再稼働しないよう求めた住民の申し立てを退けたばかりだ。
 だが、本サイトも報じたように、これらの裁判の裏では裁判長の“左遷”人事が行われるなど、裁判所による露骨な“原発推進人事”があった。しかし、そうした事実をメディアはほとんどスルー。しかも、先日明らかになった川内原発再稼働の前提となっていた免震重要棟の新設計画を撤回したという重大な問題も、一部の新聞メディアを除いて、大きく取り上げられることはなかった。
 それだけではない。産経新聞や夕刊フジ、産経のウェブサイト「産経ニュース」などの産経メディアでは、「高レベル放射性廃棄物の最終処分」なるシリーズ記事を掲載。タレントの春香クリスティーン、哲学者の萱野稔人氏、社会学者の開沼博氏などのタレント、学者らが座談会やインタビューで核のごみ問題を語った。じつはこれらは記事広告であり、出稿主は原子力発電環境整備機構(NUMO)だ。しかも悪質だったのは、一見するとそれらがパブ記事広告だとは見分けがつかないようになっていたこと。ようするにNUMOはあたかもメディア独自の記事のようにプロパガンダを展開したのだ。
 こうした広告がNUMOからばらまかれたのは、産経だけではない。今年10月には読売新聞、秋田魁新報、福島民報、北日本新聞、山梨日日新聞、中国新聞、高知新聞、南日本新聞などにも15段ぶち抜きの広告が大々的に展開され、「日経ビジネス」(日経BP)などの経済誌にもパブ記事を頻繁に掲載している。
 高レベル放射性廃棄物の処分をめぐる啓蒙活動は、原発再稼働とは完全にセットの問題である(過去記事参照)。つまり福島の原発事故以前のように、メディアに広告をばらまくことで再稼働の問題検証や反対論を抑え込み、さらにはメディアや芸能人、文化人の“原子力ムラ”という利権共同体への取り込もうと本格的に動き出したのだ。
 現に、日経広告研究所が毎年発行している『有力企業の広告宣伝費』の13年度版と14年度版を見比べると、東京電力の宣伝広告費は16億9800万円から30億1000万円へと倍増。東北電力も36億7800万から40億5100万円と増加している。これは11年度以降初めての傾向だ。そして、業界団体である電事連や、本稿で取り上げているNUMOなど、関連団体の広告予算は公表されていないが、かなりの水準で上昇していると言われている。
 また、昨年には、博報堂とアサツーディ・ケイという大手広告代理店が日本原子力産業協会に加盟し、以前から加盟していた電通をふくめて、国内トップ3が原子力ムラのスクラムにがっちりと組み込まれる体制となった。
 そして、原発事故後、大きな批判を受けた“カネの力によって黙らされるマスコミ”という構図は、確実に復活しつつある。たとえば9月に公開された、原発へのテロを題材にした東野圭吾原作の映画『天空の蜂』も、人気監督の堤幸彦がメガホンを取り、江口洋介や本木雅弘、綾野剛、向井理、仲間由紀恵などという豪華キャストだったにもかかわらず、マスコミによる試写会や舞台挨拶の模様の扱いはきわめて小さかったのは象徴的だった。
 この調子だと、原発タブーは来年も、さらに強固になっていくのは必至だろう。

★6位 新聞もテレビも「増税賛成」! 官邸と財務省に支配された消費税議論

 来年4月に10%に引き上げられる消費税の増税問題。テレビや新聞は食料品をめぐる軽減税率の話題を大きく取り上げたものの、景気が頭打ち状態のなかで増税を行うことの是非を問うことは一切なかった。
 それは、財務省の幹部が以前から「ご説明」と称して、テレビ、新聞各社の報道幹部のもとを訪れ、籠絡していたからだ。実際、2014年の増税の際にも、すべての新聞、テレビが全面賛成。反対を主張する社はひとつもなかった。
 今回の軽減税率の対象品目拡大についても、参院選の人気取り政策にすぎず、実際は富裕層ほど負担が少ない逆進性をカバーすることができないのは、明らかだったが、しかし、新聞もテレビもその点に一切触れず、「何が対象品目になるか」という話題で国民の目を反らし続けた。
 安保法制でさえ反対の姿勢を打ち出す新聞があったことを考えると、この問題のタブー性がいかに強固であるかがよくわかるだろう。
 実はこの背景には、新聞の国民に対する裏切り行為があった。新聞各紙は一方で増税に賛成しながら、自分たちの商品である新聞を軽減税率の対象にするよう政府、自民党に働きかけ、交渉の末、それを勝ち取っていたのである。しかも、この新聞への軽減税率適用はかなり前からほぼ決まっていたが、正式発表されるまでテレビ、新聞ともほとんど報じなかったのだ。
 これは、何も、新聞が自分たちだけ利益誘導したというだけの話ではない。マスメディアの使命は“権力の監視”であるにもかかわらず、政治権力に頭を下げて、こんな借りをつくってしまったら、今後、新聞が政権批判や政策批判ができなくなるのは目に見えているではないか。テレビ局が放送法で完全に政権に首根っこを押さえつけられている中、新聞までが軽減税率で政権にさからえなくなったら、もはやこの国に政権批判ができてかつ一定の影響力を持った報道機関はなくなってしまうということである。
 オーバーではなく、この軽減税率問題が日本の「報道の自由」崩壊のダメ押しになるかもしれない。

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 まずは10位〜6位をざっと紹介したが、いかがだっただろうか。言論状況の閉塞、メディアの体たらくにはつくづく閉口してしまうが、つづけて発表する5〜1位は、もっと暗澹とするようなタブーが続々ランクインしている。しかし、どうか後編も記事に目を通し、2015年の最後の日、この国のメディアの現実に向き合っていただきたい。
(編集部)

最終更新:2016.01.01 07:35

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